「いやー、それにしてもアイツの彼女がこんな可愛い嬢ちゃんとはなあ」

まさくんのお部屋のソファに慣れた感じで腰を下ろす銀髪さんのためにコーヒーを淹れる。驚いたように名前を見つめる銀髪さんにちょっと照れつつ、そんなことないですと返す。

「高校の頃から話は聞いてたが、まさかここまでとはな」
「まさく…政宗とは高校のときからのお付き合いなんですか?」
「ハハッ、いつもの呼び方でいいぜ」

ついいつも通りにまさくんと呼びかけちゃう名前に銀髪さんは白い歯を見せて笑う。ついでに口調もいつも通りでいいと告げられ、ちょっと恥ずかしかった。そんなに似合ってなかったかな…?

「政宗とは高校のときに知り合ってな、お互い…まあなんつーか、アニキ肌ってやつでよ。馬も合ってよくツルんでたんだよ」
「まさくん…たしかに筆頭って呼ばれてた…」
「だろ?ちなみに俺はアニキって呼ばれててよ、まあ俺ぁそんなんでもなかったんだが、政宗はあのルックスだろ?そりゃあ女どもがきゃあきゃあ騒いでたわけだ」

お盆にコーヒーの入ったカップと砂糖とミルクを乗せて、銀髪さんの前まで運ぶ。懐かしそうにどこか遠くを見つめながら語る銀髪さん。最後の方の言葉にはまあ納得というか嫉妬というか。でもこればっかりはしょうがないんだもんね…。

「まあそんな暗い顔しないで聴けって」

そんなに名前は顔に出してたのかな。銀髪さんに苦笑しながら頭を撫でられてしまった。でもなんていうか、男性特有の下心みたいなのは全然感じられなくて、ああ本当このひとはアニキ肌なんだと感じた。

「隙あらば女が群がって来るってのに、アイツ全然女どもの相手しねえんだよ。で、いつだったかなんで相手しねえのか聞いたんだよ。そしたらアイツ、『俺には可愛いfianceがいるんでな』って言いやがってよぉ」

銀髪さんの言葉にぼっと顔が熱くなる。そ、そんな話聞いたことない!ま、まさくんはずっとずっとあの約束覚えててくれたんだ…。なんだか口元どころか涙腺まで緩んで来ちゃった。

「とまあ、そんな話を聞かされて俺が会わせろつっても『断る』、じゃあ写メ見せろっつっても『嫌だね』つって一切教えてくんなかったんだよ」

銀髪さんの口から語られる言葉はまるで作り話みたいに名前の頬を赤くさせるけど、でもこれ本当の話なんだもんね…わあああ今すぐまさくんに会いたいよう!

「まあこんだけ可愛かったら見せたくねえわな。ハハッ」

そう言ってまたわしゃわしゃと名前の頭を掻き混ぜる銀髪さん。まさくんとは違うおっきな手が髪の毛を混ぜる感覚がとても気持ち良くて思わず目を閉じる。その時がちゃりと音を立てて玄関のドアが開いた。…と思ったらものすごいスピードでまさくんが走って来る音が聞こえて、リビングの扉がばたーんと開く。飛び込んできたまさくんはものすごく焦ったような怖いような表情を浮かべていました。


110924
没ネタ:「とまあ、そんな話を聞かされて俺が会わせろつっても『だが断る』、じゃあ写メ見せろっつっても『m9(^Д^)』つって一切教えてくんなかったんだよ」