今日はまさくんが会社に行ってるから、まさくんの帰りをまさくんのマンションで待っています。なななんと!まさくんは今日本有数の株式会社の社長さんをしています!まさくんのお父様である輝宗さんが、さっさと老後を楽しみたいとの理由で早すぎる引退。そして息子であり、会社運営の専門学を学び尚且つ留学経験もあり英語が堪能なまさくんが会社を引き継ぐことになったそうで。大忙しのまさくんです。でも優秀な部下の人がたくさんいるらしくて、名前との時間をきちんと取り分けてくれるまさくん。「名前を構ってくれるのはすごくすごく嬉しいけれど、それよりも自分の身体を休ませなきゃ!」と言ったら、「だったら俺の仕事帰りを俺ん家で待ってればいいだろ。そしたら名前に逢えるし、体も休まる。killing two birds with one stoneってな」と提案してくれた。そんな訳でまさくんの帰りを遅めの夜ごはんを作りながら待っています。さっきメールで今会社出たって来てたから、きっともうすぐ帰って来るはず!名前はこんな見た目でもちゃんとお料理出来るんです。えっへん。まさくんに振り向いて欲しい!って必死だったの、そしたらママが男を落とすならまず胃袋から!ってお料理をたくさん教えてくれたの。だから和洋中なんでも作れるしレパートリーもそれなりにあるし、ときどき創作もしたりするの。

まさくんと再会してもうすぐ2週間!相変わらずのラブラブだし、何回か迎えに来てくれたおかげで学校中にまさくんが名前の彼氏だって浸透したしね!それにね、今つけてるエプロンもだけど、まさくんのお部屋にだんだん名前のモノが増えて行くのが嬉しいの。お皿もマグカップも、クッションも。食後のデザートも全部ふたつずつ。まさくんの青と名前のピンク。そんな些細なことって笑われるかもしれないけど、でも名前にとってはそれがすっごく嬉しいの。まさくんの生活の中に、たしかに名前がいるんだと思うと嬉しくて嬉しくて。ふへへと緩む頬で机を布巾で拭く。

そのとき部屋に鳴り響いた軽快な音。きっとまさくんだ!なんてインターフォンで確認することもなく玄関に向かいドアを押した。

「まさくん!おかえ……り…」

開けた扉の向こう、立っていたのはまさくんじゃなくて。知らない、銀髪の、まさくんとは逆の目に眼帯をして紫色のYシャツに身を包んだすっごい背の大きいひと。しかもまさくんとはまた違った強面が名前を見下ろしてるんだもん。悲鳴をあげそうになったのは言うまでも無い。

「どどどどどどちら様でしょうか…!」
「あ?アンタこそ誰だ?ここは政宗ン家だろ?」

慌ててチェーンをつけてその隙間から男のひとを見上げるようにそう問えば、眉間に皺を寄せて返されてしまう。いやあああこわいよおおお…!!ん?でも今まさくんの家って言ったよねこのひと。ってことはまさくんのお友だち!?あわわわなんてことしちゃったの名前!

「申し遅れました、わたくし名前と申します。すみません、まさく…政宗はまだ帰って来てないんです」
「名前…?お前まさかあれか、政宗の彼女の名前か!」

銀髪さんが驚いたようにわたしを指差しそう問う。ま、まさくんがお友だちに名前のことを話してくれてる…!?そう思ったらなんかもう有頂天になっちゃって。まさくんの帰りを上がって待ってたいという銀髪さんのお願いをふたつ返事で了承してしまったのでした。



110921