もう本当に心配したんですからねっ!!と、鶴ちゃんに昨日のことを怒られて、謝りながら事情を説明したら、鶴ちゃんのぷりぷりと膨らんでいたほっぺはみるみるうちに紅潮して、いつの間にかいつも通りの恋バナとなってしまった。さっくんも交えきゃっきゃっと質問攻めにあっていたら、ポケットの中の携帯がぶるぶると震えだした。朝から誰だろうと取り出してみれば、液晶画面に映るのは着信 まさくんの文字。ふたりにごめんね!と謝って朝のHR前で賑わう廊下に出て携帯を耳に当てる。

「も、もしもしまさくん?」
『Good morning honey、もう学校か?』
「うん、ちょうど着いたとこ」
『そうか』

まさくんの低い声。電話越しに聞くとなんだかいつもよりもっと低く聞こえて、どきんどきんと胸が高鳴る。

「まさくん、どうかしたの?」
『いや、名前の声が聞きたくなっただけだ』
「なっ…!」

あ、朝からそんなこと言われたら、どうしようもない。思わずかっと赤くなった頬を隠すように口元を手で覆う。そしたらまさくんの、『…でも失敗したな』って呟きが聞こえてきて、思わずえ…?と眉根が寄る。

『声聞いたら、余計に逢いたくなっちまった』

耳元で響く、甘くて低い声に、さっきの比じゃないくらいぼっと頬に熱がこもった。金魚みたいに口をぱくぱくさせる名前の耳に届く、まさくんのくつくつと喉を低く鳴らす笑い声。

「も、もう!まさくん!」
『Sorry,sorry』

未だにおかしそうに喉を震わせるまさくんを、ちょっと怒った風に呼べば、まさくんは余計に低く笑う。…まさくんは意地悪だ。

『でも朝からhoneyの声が聞けてよかったぜ』

学校、頑張れよ。最後にちゅっというリップ音を立てて通話が切れる。どうしてまさくんはこんなに名前を嬉しくさせることができるんだろうと真っ赤になった両頬をおさえた。教室に戻って、鶴ちゃんとさっくん、そこにけーくんも加わった3人に質問攻めにされたのはまた別のおはなし。


100910