まさくんにぎゅうってしてもらって、たくさんちゅうしてもらって、ふわふわした幸せな気持ちでいっぱいで。まさくんの腕の中でほっこりとしていたら、まさくんが名前の指を絡め取った。

「さてhoney、そろそろ白状したらどうだ?」
「え?」
「さっきの男、boy friendだったんだろ?」

にこにこと笑みを浮かべるまさくんの背後にどす黒いナニかが滲んで見える。思わずうっ…と視線を逸らしたけれど、まさくんは名前の顎を掴んで無理矢理視線を合わせてくる。

「だ、だって、まさくんが浮気するから!」
「Ah?」
「名前のこと忘れて、金髪のボンキュッボンなオネーサンと浮気するから!」

うるうるとうるむ瞳で見上げるように睨めば、まさくんはAh…と小さく声をあげてから、名前のほっぺたを優しく包んだ。

「なんか勘違いしてねえか?」
「してないもん!まさくん、お手紙も電話もくれなかったもん!!」
「悪かった、それは謝る。…だけどな、」

知らなかったんだよ。まさくんの言葉に、名前は目を丸くして気まずそうに視線を泳がせるまさくんを見つめた。

「…どーゆうこと?」
「…ずっと隣りにいて、電話番号も住所も知る必要ないくらい傍にいただろ?だから…」

ぽりぽりと首の後ろを居心地悪そうに掻くまさくん。昔から変わらない困ったときのその癖に、一気に胸があったかくなる。そっか、そうだったんだ。

「じゃあまさくんは名前を嫌いになった訳でも、浮気してた訳でもないの?」
「Of course.一刻も早く戻れるよう、死ぬ気で勉強して3年で卒業してきたんだぜ?」

名前は馬鹿だけど、まさくんが留学しに行った大学の名前は聞いたことがあった。すっっっごく頭良いことで有名で、とりあえず名前じゃ入試問題の名前欄を埋めることさえできるかわかんないような大学。そんな大学を名前のために1年も早く卒業して戻って来てくれるなんて…

「まさくん大好きっ!!」

むっぎゅうううと勢いよくまさくんの首に腕を回して抱きつけば、まさくんは名前の背中に手を回してしっかりと抱き締め返してくれる。

「・・・で、お前の浮気はどういうことだ?」
「ち、違うのッ!!」

まさくんの指が名前の髪を優しく梳く。少しだけかすれたまさくんの声が耳元で響いた途端、がばりと身を起こした。

「さっきのはなんていうか出来心で!今までああやって告白されてもずっとずっとお断りしてきたし、さっきの男の子の告白おっけーしたのは、その、まさくんが浮気してるって勘違いしてたからで、でもオッケーしたのまさくんがくる1分くらい前だったし、だから名前の心も体もずっとまさくんのものだし、だからなんていうか…!」

あわあわと頭の中に浮かんできた言い訳がそのまま口からあふれ出す。違うの違うの、こんなこと言いたかったわけじゃなくて、名前がずっとずっと伝えたかったのは、

「!」

まさくんの服の襟ぐりを掴んで、ぐいっと顔を近づける。きつく目を瞑ってまさくんの口唇に自分の口唇を押し付けた。まさくんの体が一瞬だけぴくりと跳ねたけど、気にせずに触れるだけのキスをする。名前にとってはすっごく長く感じられたけど、きっとまさくんにとってはほんの一瞬だったんだろう。ゆっくりと体を起こせば、少しだけ驚いた顔をしたまさくんと目が合う。

「昔から今まで、…ううん生まれたときからずっとずっと、名前のぜんぶはまさくんのものです」

襟ぐりを掴んだまま、まさくんの瞳を覗き込んでそう告げれば、まさくんは名前の腰に腕を回してもう一度キスをしてきた。

「I love you…名前」
「ん…」

触れ合う口唇から漏れる吐息すらも重ね合わせて、離れていた3年の月日を埋めるみたいに、何度も何度もお互いの熱を交わし合った。



110618