人気のない駐車場に車が止まって、まさくんに手を引かれて知らないマンションの一室に入る。そのままどさりとソファに押し倒され、名前の上にまさくんが覆いかぶさった。
「名前のくせに浮気たぁ、随分色気づいてんじゃねえ、かっ!?」
色っぽい笑みを浮かべて、ちゅーできちゃいそうなくらい間近に迫ったまさくんの顔。そのほっぺを腕を伸ばして両手で挟みこむ。まさくんの左目が大きく見開かれた。
「本当の本当にまさくん!?」
「Ah?」
「ニセ者じゃない?本物のまさくん?夢じゃない?名前のこと、だましてない?」
ぺたぺたとまさくんのほっぺや肩や腕を触って、これが夢じゃないことを確かめる。触ってもまさくんは消えないし、触れたところから伝わって来る温もりは正真正銘まさくんの温もりで。
「…バーカ、騙してなんかねえし、dreamでもねえよ」
ふっと優しい笑みを浮かべたまさくんが、名前のおでこちゅっとキスを落とす。そのまままさくんは髪を優しく梳いてくれる。
「お前は、変わんねえな」
身体はいやらしく育ったみてえだが。耳元で色っぽい低い声が吐息混じりに耳をくすぐる。ぞわぞわと背筋が粟立って、とん、とまさくんの胸を押し返した。
「て、ていうか!なんでここにいるの?アメリカの大学はどうしたの?やめちゃったの?」
「まあ落ち着け」
ずいずいとまさくんの胸倉をつかんで詰め寄る名前の頭を撫でながら、まさくんは微笑む。
「大丈夫だ、大学はちゃんと卒業した。留学は終わりだ」
「じゃ、じゃあ、これからはずっと一緒?もう名前のこと、置いていったりしない?」
もう、寂しい想いなんてしたくない。まさくんと離れ離れになんかなりたくない。その一心でまさくんに詰め寄る名前の頭をやさしく撫でるまさくん。
「I never leave you. 約束する」
真剣な瞳で名前を見つめ、名前の小指とまさくんの小指が絡まる。優しいまさくんの眼差しにうるうると涙腺が緩んで、目尻に溜まった涙をまさくんが口唇で吸い取った。
「I came here.名前」
優しく触れた口唇は、泣きたくなるくらい温かかった。
110601