「名前ちゃんはいいよね。性別が女ってだけでかすがの傍にいられるんだから」

夕焼けの燃えるような赤に包まれた教室で、猿飛佐助は虫唾が走るほど綺麗な笑みを浮かべていた。

「本当、目障り」

鞄に教科書を詰め、職員室に行ったかすがの帰りを待っていた。そしてまるで謀ったように声を掛けられた。自称かすがの幼馴染みと名乗るいつも彼女に付き纏っている男。目障りは、こちらの台詞だ。

「猿飛くんはいいよね。性別が男ってだけでかすがとの子どもができる可能性持てて」

そうにっこりと告げてやれば、猿飛は一瞬瞠目し、そして口端を大きく歪めた。

「目障りなのよ」

わたしが彼女に与えられない、結婚という選択肢、子どもを産む幸せ、全部がこの目の前のオスには与えられるという事実が。死ぬ程に。



ひざをかかえて



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110722