俺の中にある空洞に人差し指と中指を突っ込んでみる。眼帯をずらしてもただの穴となったそこに、光を感じるための目玉はない。あとどれだけの夜を明かせば、この胸の痛みは癒えるのだろうか。そんな無意味なことを考えるほどに、自分は弱っているらしい。

「政宗さま、布団にお戻り下さいまし」

音も無く襖を開けた名前が呆れたように溜息を吐く。名前、名を呼べば女は手にした桶を畳へ置いて俺の前に膝を突く。

「風邪を、侮ってはなりませぬ」
「名前」
「小十郎さまもご心配なさっております」
「名前」

ぎゅうぎゅうと、女の腰に腕を回しきつくきつく抱き締める。未来の、しかも異界から来たというこの女は、俺の知らない世界を知っている。この世界で助けを差し伸べた俺の元以外に、帰る場所がある。

「名前」
「政宗さま、お戯れもいい加減に…」
「I love you、名前」


そう耳元で囁いて名前の柔らかな身体を畳へと押し倒す。助けるフリで己の下に縛り付けて、突き放すフリをして抱き寄せる。例えば俺に異界を超えて誰かを殺める力があったとして。名前を知る全ての奴等を殺めてしまえば、帰る場所を失くした名前は、俺の元に帰って来てくれるのだろうか。ふくよかな口唇に噛み付きながら、着物の袷に手を差し込む。名前の甘く官能的な嬌声が耳元で弾けた。



夢のはなし

いっそ孕ませてしまおうか


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