「Honeyは球技大会どうすんだ?」
「んー…応援で」
「今年もかよ」

LHRにて来週行われる球技大会の種目分けが行われた。各科総合優勝4チームが最後ガチンコで試合をし、学園総合優勝を決める。総合優勝クラスには豪華賞品が用意されてて、たしか去年は工業科機械科2年A組が優勝してたけど、クラス単位で海外に旅行に行ったらしい。織田校長どんだけ太っ腹なの。

「政宗は今年もソフト?」
「Of course!今年こそ優勝してやるぜ」
「意気込むのもいいけどお願いだからバッド6本持ったまま話し掛けないでね」
「Why!?」
「恥ずかしいから」

基本的に工業科の女子は球技大会や体育祭は応援という名の見学に徹することが多い。極稀に男子に混じって果敢にも競技に参加する女の子もいるけれど、そこは圧倒的に女子の数が少ない工業科。各科全部通してなんとか1チームつくるよりは、各々好きなように球技大会眺めてればいいんじゃない?というのが全体的な意見だ。もちろんわたしもその意見に大賛成。スポーツは嫌いじゃないけど、競い合うのは好きじゃない。だから球技大会は眺めてるのが一番。
そういえばかすがは今年もソフトに出るのかなあ。あとで聞いておこうと心に決めていたらポケットの中の携帯がぶるぶると震えた。机の影で携帯をスライドさせてメールを開く。佐助からだった。

≪球技大会何にした?≫

可愛らしいデコメの?マークつきのメール。時々佐助はわたしより女の子らしいことがある。

≪応援だよ。佐助くんは?≫

ちょっとだけ気を遣ってわたしも?マークをデコメにしてみた。文面がカラフルとか久しぶりすぎる。

≪俺様はバスケだよ(^O^)/≫

そういえば佐助くんは部活でバスケやってるんだから球技大会だってバスケで当然か。少し考えればわかることだったなあ。反省反省。

≪そうなんだ、応援行くね≫
≪マジで!?うは、嬉しい。俺様頑張る!≫

嬉しいの後ろに3つ並んだ可愛らしいハートマークに思わず笑みが浮かぶ。なにこれ喜び過ぎ。

≪うん、頑張って^^≫

そう送って携帯を閉じる。ふうと顔をあげれば政宗が頬杖を突いてにやにやとうざったい笑みを浮かべていた。

「猿からか?」
「そうだけど」
「おーおーお熱いこって。やんなっちまうねえ、まったく」
「…政宗、アウト。1週間苗字さん宅立ち入り禁止令発動しまーす」

なんだかわかんないけどとてもイラッときたので罰を下させていただきます。のぉおおおおやらソーリー!と何やらとても必死な感じの叫び声が聞こえて来ますが、完全無視してイヤホンを耳に突っ込んで机に突っ伏す。
ふと、机の中で携帯が震えた。取り出せば新着メール一件の文字。

≪ありがとー≫

可愛らしい投げキッスのデコメに、くすりと笑みがこぼれた。


きみにハートマーク


∴110510