ブーッと短いバイブ音がメールの着信を知らせる。カーディガンのポケットから携帯を取り出せば、青いイルミネーションが新着メールだと告げている。5限の現国は今川センセーの授業。ちらりとセンセーの方を見遣れば、この間買ったとかいう幸運を呼ぶ壺の自慢話に夢中なようだ。スライド式の携帯を机の下で開けば、自動的にメールの内容が表示される。送信者は猿飛佐助だった。

≪今日、放課後空いてる?≫

簡潔な文だった。それに対する答えをぽちぽちとボタンを押して作成する。

≪一応、なにも予定はないけど≫

送信してすぐに、返事が返ってくる。お前仮にも授業中だぞ。という突っ込みは自分にも適用されてしまうので心の中にしまっておくことにする。

≪マジで!?じゃあさ、デートしない?≫
≪いいけど、なにすんの?≫
≪んー…ゲーセンとかどう?≫
≪うん、いいよ≫
≪やったね!じゃあまた放課後に。教室で待っててね≫
≪あいあい、了解した≫

最後にそう打ち返して携帯をしまう。ゲーセンとか、久しぶりだなーとか、なんとなく楽しみにしつつ指先でペン回しをして暇を持て余していれば、前の席に座った政宗がくるりとこちらを振り返った。

「Honeyが授業中に携帯イジるとは珍しいじゃねえか」
「そりゃなにもなければイジらないでしょ」
「なにかあったのか」
「いや別に、メール来ただけだし」
「Hum…誰からだ?」
「猿飛くんだけど」

そう答えれば政宗はReally! ?と目をカッと開いて驚いている。いやなに怖いんだけど。

「放課後遊ぼうって。だから今日は家来ても誰もいないからね」
「Ah…all right」

いつもなら意味不明なことをひとつやふたつ言って来そうなのに、政宗はそれだけ言うと思案顔のまま前を向いた。
なんだ今日はみんなして様子がおかしい一日なのか。
まだまだ続く今川センセーの自慢話をBGMに、もう一度くるりとシャーペンを回した。


放課後の予約確認


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