見慣れない制服からか、いや制服というより個性的なファッションのせいだろうな、確実に。
突き刺さる視線がうざったい。久しぶりに味わうな。この感覚。

そこまで長身ではないわたしはクラス割表の前に群がり喜びや悲しみに沸く同級生の塊に若干引いた。うーん…駄目だ駄目だ。変な先入観持たないようにしなくちゃ。でもいっこうに減らない人の群れに若干辟易としていたのだが、昴にぃがその長身と視力でもってわたしの名前を見つけてくれた。さすが昴にぃ。自慢のおにいちゃんだ。
わたしのクラスは3年H組。山吹もそれなりに大きい学校だったけど立海には適わない。さすがマンモス校。生徒数だけでも圧巻だ。

H組の教室に入って、ひとがまばらなのをいいことに適当な席に座る。窓際の前から3番目。まあ紫外線が気になる席だけど、夏休み前には席替えするだろう。できれば、空が見える席の方がいい。カバンを机にかけ、頬杖をついて空を見上げる。春特有の薄い雲がところどころに浮遊している。いい天気だ。
既にちらほらと教室に入って来た生徒から視線を感じる。んー…自己紹介とかめんどくさい。いいや。きっと先生がどうにかしてくれるだろう。
ポケットから携帯を取り出す。ぴかりんからメールが届いていた。『朝っぱらから猫が交尾してましたわ』ばっちりその写真も添付してあるあたり悪意を感じる。どうにもぴかりんは最近Sっ気が出てきた気がする。『こっちは空が綺麗だよ』と空の写真を撮って送る。そのまま携帯を閉じた。
慣れない神奈川の空気の中、小さく溜め息を吐いた。



110(漠然とした虚しさだ)



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