なんてことない日々が静かに流れていく。
馬鹿をやる家族を見て笑い、それに触発されて馬鹿なことをやってみたり。
みんな一緒に怒られて、説教の後に宴なんてやって、少し前までは考えられなかったことが当たり前のように自分の時間に絡まってくる。


こんな風にしたら家族が喜ぶんじゃないかとか、こんな態度をしたら家族が嫌な思いをするんじゃないかなんて考えて行動することが凄く嬉しくて、不安が愛しくも思えてくる。

もう一つの家族が教えてくれた。


「おい名前!てめぇ昨日俺の部屋に蟲忍ばせただろ!最悪な寝起きだったんたぞ!」

「だってパズが朝早くは起きれないって言ってたから。感謝してもいいのよ?」

「てめぇ…次の島に着いたら俺は防虫剤買うからな!絶対!!」

「だいたいパズが私の蟲が可愛くないなんて言うからいけないのよ。天罰が下ったんじゃないの?」


毛嫌いしていたパズともそこそこ上手くやれるようになってきた。仲がいいわけではないが、嫌味を言われたら嫌味を返すし、悪戯だってする。
マルコやイゾウにはよく怒られるが、心配と言うよりは本当に兄から怒れている感じがして、それもまた嬉しくなる。

扱い辛い客人から本当の兄妹になれたんだと沸々と喜びが沸き上がってくるのだ。



「なぁに喧嘩してんだよ。愛情深いお兄さんからの拳骨が欲しいのか?ん?」


愛情不足か?と拳を握り締めて笑うサッチが背後に現れて、同時に姿勢を正す。


「喧嘩なんかしてないよ。ね、ねぇ?パズ」

「ああ、そうだよな!俺たち仲良しだもんな?名前」



背後にある拳の気配にひきつった笑みを浮かべて、お互いに顔を見合わせてから肩を組む。
お互い微妙に触れていないのが味噌だ。



「はいはい。仲がいいのは結構だけど、俺は結構嫉妬深いからお触りは禁止な」


呆れたように二人の腕を掴んだサッチはゆっくりと組まれていた腕をほどいて、二人の頭をポンポンと撫でた。
別に付き合っているわけではないが、相変わらずサッチは大っぴらだ。

告白もされてないし、それを受け入れた訳でもないが、家族の中ではそれが定着しつつある。


「愛情深いお兄さんは、妹の微妙な気持ちにはお気づきにならないんですね」

「あれ?なんで敬語?」

「なんでもありませんよ」


言って欲しい言葉があるなんて。これ以上は贅沢なのかもしれない。

沢山の愛情を知ってしまって、最近自分はわがままになった気がする。

そうマルコに告げたら、お前は海賊に向いてるよい、と笑いながら言われた。


夢にまでみた日常


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