にぃにが習い事を始めた。
近くの古武術道場に通い始めたのだ。前世では習い事なんて書道くらいしかやっていなかったわたしは自分の体を使って己を高めるその習い事に非常に興味を持った。
しかも空手や柔道じゃなくて古武術。なんて個性的なんだろう!
女の子が危ないんじゃないかと渋るパパを説得して、今はにーにと一緒の道場に通っている。

「…名前ちゃん」
「あ、若だー。こんにちわん」

そしてこの道場に通い始めて新しく友達ができた。若っていって、ひとつ年下の小柄な男の子。この道場の子なんだって。若は無口だし無表情だけど、実はとてもさびしがり屋さんだ。わたしがにぃにやにぃにのお友達と一緒にいるといつの間にか後ろにいて、くいっとわたしの道着を引っ張る。かわいい。わたしにも5歳になる弟がいるけれど、若も本当の弟みたい。若はわたしの道着の裾を掴んだままもじもじとしている。

「どうかしたの?おトイレ行きたい?」

わたしの問いかけにふるふると首を横に振る若。どうかしたのかなーと気分は若のママである。精神年齢的には既に三十路。若の本当のママでもおかしくない。我ながら異端な存在だよなーなんて思いに耽っていたら、もう一度若がわたしの道着の裾を引っ張った。

「…おけーこ終わったら、いっしょ遊び行こ?」

普段は小さいながら下剋上…と呟いている若だけど、このかわいらしいお誘いに大人なわたしは萌え萌えズッキュン。だけどこれでも子ども歴8年目。若に負けないくらいのとびっきりの笑みを浮かべて「うん!」と頷いた。


1013(かわいいお友だちができて嬉しいです)


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