「こじゅさーん!」

外の冷気から逃れるようにコートの襟を立て、自宅のドアを開ければ勢いよく飛び出してきたのは制服に身を包んだままの愛しい恋人。

「おっかえりめりくりー!」
「おう、ただいま」

腰に抱きつく名前の頭を撫で、後ろ手にドアの鍵を掛ける。ごろごろと喉を鳴らす勢いで甘えて来る彼女に愛しさからくる苦笑をこぼし、もう一度くしゃりと髪を撫でてから、靴を脱いだ。

「成績はどうだった」
「う゛…き、聞かないで頂きたい…」
「馬鹿。聞くに決まってんだろうが」

3年の一番大事な時期だってのに。手洗いうがいを済ませリビングへと足を運べば、口唇を尖らせしぶしぶと鞄から薄い成績表を取り出す#name2 #。どれ、とそれを受け取りソファへとどかりと腰を下ろせば、名前は俺のすぐ傍の床に座り、こちらを拗ねたような瞳で見上げて来る。

「…意外とまともじゃねえか」
「意外って失礼な!わたしイイ子だもんっ」
「はいはい」

受け取ったそれはざっと見た限り俺が咎めるべきところはない。まあ出席日数が微妙に少ないのは大目に見てやるか。

「お前は相変わらず体育と英語が苦手だな」
「う、うるさいっ」

他の教科よりも一段階評価が低い科目を指差してからかうように告げてやれば、名前は尖らせた口唇をそのままに拗ねたようにそっぽを向いちまうから、「ま、よく頑張ったな」と言って小さな頭をわしゃわしゃと撫でまわす。そうすれば今度はじわじわと赤くなっていく耳の先を指先でちょいちょいと弄ってやる。

「ひゃあっ」

随分と可愛い嬌声をあげて肩をびくつかせる名前をたまらず抱きあげ、ソファの上、己の下に抱き込む。

「こっこじゅさん!?」

真っ赤な顔のまま大きな目を見開いて体を強張らせる名前の足の間に己の足を割り入れ、背広のポケットから出しておいた"それ"を片手に、柔らかな名前の口唇に噛みついた。

「んん…っ!」

開いた口唇の隙間から舌を滑らせ、驚き縮こまる舌を絡め、舐め取る。ときどき甘く歯を立て柔らかく吸い上げれば、すぐに名前の鼻から甘い嬌声がもれ、ぎゅうっと閉じられた目尻からは生理的な涙が滲む。深いキスを繰り返しながら無防備な左手をとり、目的の"それ"を着けてからちゅっと音を立てて口唇を離した。

「ん…こじゅ、さ……」

とろんとした瞳で俺を見上げるその潤んだ雫を己の口唇で吸い取り、そのまま左手に着いた"それ"にも口唇を落とす。

「こ、じゅさ……これ…」

潤んだ瞳を大きく見開き、紅潮した頬を隠しもせずに自分の左手の薬指についた"それ"を信じられないといった様子で凝視する名前。

「卒業したら、俺んとこ来い」

ちゅっともう一度名前の左手薬指で光るシンプルなシルバーリングに口付けてそう桃色の耳元で囁けば、名前は感極まったように涙やら鼻水やらで顔をぐしゃぐしゃにしながら、「こじゅさぁああああん」と俺の首に抱きついて来る。ひっくひっくとしゃくりをあげる腕の中の愛しい温もりを抱き締めつつ、ふたりきりの聖夜の静けさに耳を傾けた。


社会人×高校生
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