の奥底から紫煙を吐き出せば、凍るほどに冷えた吐息が白く白く視界を曇らせる。重く空を覆う濃灰の雲から音もなく真白い綿雪が地上へと降り立ち、指先の体温を奪っていく。肩に積もる雪を払うのも面倒で、また煙草に口をつけた。

「まっさむねー!」

愛しい彼女が自分の名を呼ぶ声が聞こえ、人差し指と中指に挟んでいた煙草をそのまま放す。じゅわっと音を立てて赤い火種は雪の白に侵されてしまった。

「遅ぇんだよ」
「文句は片倉先生に言ってくださーい」
「Shit!」

赤いチェックのマフラーを巻いて、鼻の頭を赤くした彼女が短いスカートを翻してキめたタックルを軽々と受け止め、寒さに赤く染まる頬へと指を滑らせる。

「ひゃあっ政宗冷たいよっ!」
「うっせ、待たした罰だ」

冷えたてのひらからじんわりと伝わる温もりに思わず口角があがる。ついでに拗ねたように尖った名前の柔らかい口唇へちゅっと軽いリップ音を立ててキスを落とした。

「Mary Christmas, honey.」

寒さのせいじゃない頬の赤さをなぞりながらそう耳元で囁けば、名前は羞恥を紛らわせるようにぼふりと俺のコートに顔をうずめる。そうしてぼしょぼしょと聞こえて来た「…メリークリスマス…」という甘やかな声に、愛しさから自然と頬が緩むのがわかる。しんしんと音も無く降り積もる雪の中、ほんのりと冷たい髪から僅かに覗く真っ赤な耳に、もう一度口唇を寄せた。


大学生×高校生
101208