輪廻転生を信じたことはなかった。もとより我が家は仏壇はあったけど熱心に拝んでいた訳でもなく、基本宗教には無関心な現代日本に見られる一般的な家庭であったし、
こう言ってはなんだけど、転生なんて物語の中だけの空想、もしくはおとぎ話だと思っていたのだ。それがどうゆうことか、自分の身に降りかかるなんて考えてもいなかった。

「名前ちゃーん、オムツ取り替えましょうねー」
「あー、」

そう、前世でなまじ22年生きたわたしにこれは羞恥プレイ以外の何物でもない。どうして前世の記憶を持って生まれて来てしまったのだろう。困ったものだ。これが前世でもう一度再会を誓った恋人なんかがいれば大変ドラマチックな展開になるだろうが残念ながらそういった浮ついた話はない。

「なまえー、オムツかえたら、にーにとあそぼーなー!」
「ふふ、ちゃんと面倒見れる?」
「うん!だってぼく、おにいちゃんだもん!」

あらやだかわいい。わたしの2個上のおにいちゃん、昴お兄ちゃんはとても可愛らしい顔をしている。というか、父と母が既に美男美女だし、小学4年生の澪お姉ちゃんも、目の前の昴お兄ちゃんも見事に全員美形だ。これはわたしも将来期待出来そうだと今からひそかに楽しみにしてる。

ここにわたしの知ってるひとはいないし、前世のわたしを知ってるひともいない。こうなったら徹底的に一からやり直してやる。
やっぱり昔の記憶が残っていると言っても、一番強く残っているのは死ぬ直前の記憶。就活に苦労して個性がないことを指摘されてめちゃくちゃイラついていたことだった。だから転生したのだと自覚し、これから第2の人生を送ることを決意したと同時に、わたしは個性的に生きることに決めた。目指すは個性派おしゃれガール。誰にも文句は言わせない、わたしはわたしらしく個性を大切に生きるのだ。

「あ、ママ!名前わらってるよ!」
「本当ね、ふふっ…かわいい笑顔」

…すみません、これからの人生計画練ってました。


109(ポジティブに生きていこう)


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