目を開けて、一番い感じた違和感。
からだが、ひどく軽かった。

「政宗様、」

ふと枕元に視線を向ければ、優しげな笑みを浮かべた世話係が涙ぐんでいた。

「よくぞ御戻りになられた」
「…こじゅう、ろ」

ひどく安堵したその表情に、自分が置かれていた状況をつと思いだした。
患った不治の病。爛れた右顔面。母の金切り声。歪む口端。醜い己の顔。
なんとなしにもう随分と長いこと巻かれていた布の上から右目に触れる。
温かくも冷たくもない。
もうこの下には目の玉はないのだ。

小十郎に右の目玉を斬り落とされたあと、己は生死の境を彷徨っていた。というのは、後から聞かされた。
それよりも自分は、小十郎の隣に腰を据える人間が気にかかった。

「だれ、だ。お前」

掠れた声で、威嚇するように片目で睨む。女は大仰に、これはこれは失礼いたした、と頭を下げる。
鈴のような声だった。

「縁屋を生業としております、名は名前と申しまする」

そうして頭を上げた女の瞳は、透き通るような黒紫色だった。



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