しゃらん、しゃらん
深き獣道を往くは僧侶のそれによく似た着物を纏いしひとりの女。旅を共にするはまが玉を首に掲げた一頭の真白い狼。
額と胴の一部に赤い紋様が刻まれ、尾の先が墨を浸したように黒いその狼は、女を案内するかのように獣道を掻き分け、しなやかな体躯で先へ先へと進んでいく。
しゃらん、しゃらん


女の手の中で錫杖が揺れる度、遊環が涼しげな音を立てた。
鬱蒼と茂る木々の間に木霊するその音色は、空気を震わせ初夏の風に運ばれていく。

「…結びましょう」

網代笠を目深に被った女が、歌うように口を開いた。

「人と妖の縁を」

唐紅花の瞳が柔らかな笑みを象り、それに応えるように狼が低く唸り声をあげる。
生きとし生けるもの全てが持つ縁。
これは、自らの血の契約により人と妖との縁を結ぶ少女と、呪われた一匹の狼の物語である。




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