いつもいつも自分でもビックリするくらいドジを踏んでしまう。どんなに前の日に忘れ物をしないように準備しても毎日何かしら忘れてしまうし、どんなに気をつけて何回確認しても入力ミスしちゃうし、どんなに足元に気をつけていても3日に1回は転んでしまうし、もうわたしは何をしても失敗しないことなんてあり得ないんだと思う。学生時代からそうなのに、今働いている大企業に就職できたのも、きっと何かの間違いなんだ。就職して2年とちょっと、未だに失敗ばかりでもう仕事辞めた方がいんじゃないかって1日に3回は思うけど、同じ部署の仲間がすごくよくしてくれるし、直属の上司だって毎回呆れながらもフォローしてくれる。それになにより本当にいつもわたしを支えてくれる好きなひとが傍にいてくれるから、片想いでもこれからも傍にいたいって思っちゃう現金なわたしなのです。

「…また、かよい」
「申し訳、ありません…」

マルコ部長の溜め息にびくりと肩が跳ねる。これ以上がっかりさせたくないのに、なんでわたしはいつも失敗ばかりしちゃうんだろう。泣きたくなんてないのに、じわじわと目頭が熱くなる。泣いちゃ、ダメ。泣いたらわたしが被害者になって、マルコ部長を加害者にしちゃう。これはわたしが悪いんだから、わたしが涙を見せていい理由なんてひとつもない。グッと拳に力を入れ、眉間にも皺が出来るくらい力をこめる。そうすればもう一度マルコ部長の溜め息が聞こえて来て、今度こそ顔を上げられなくなる。

「…もういいよい、あとは俺がやっとくから、悪いがお前はコピー室に資料取りに行ってくれよい」
「はい、申し訳ありませんでした」
「もう謝罪は聞いたよい。わかったら資料を頼むよい」
「はい、行って参ります」

もう一度深くマルコ部長に頭を下げてコピー室に向かう。優しい部長。いつもわたしが部長の前で涙を流さないためにさりげなく時間をくれる。本当に優しい部長の手を毎回煩わせてしまう自分に、情けなさでまた涙が滲む。はあ、とひとつ溜め息を吐いて、ポケットから取り出したハンカチを目尻にそっと当てる。メイクが崩れないように少しだけ涙を流して、後は家に持ち帰るんだ。今は仕事中。泣いてる暇なんてない。もう一度強くハンカチを押し当て鼻をズズッとすすった。

「お、もう泣き止んでる」
「サッチ、」

音もなくコピー室に入って来たサッチは同僚で、いつもダメダメなわたしをフォローしてくれる優しいひと。

「もういいのか?」
「うん、大丈夫。今度こそは失敗しないように頑張る!」
「そうか、頑張るのはいいけど気合い入れすぎて転けんなよ」
「う…気をつけマス」

よしよし、そう言って優しくわたしの頭をぽんぽんするサッチは、わたしの同僚で、先輩で、好きなひとでもある。いつもいつも、失敗が絶えないわたしをすぐ傍でフォローしてくれて、時に励まし、時に叱咤し、時に慰め、優しく優しくわたしを支えてくれるひと。周囲からは名前の保護者なんて不名誉な呼ばれ方してるのに、それすらも気にせずにわたしの世話を続けてくれる、本当に優しくて出来たひとだ。

「もう行けるか?」
「ん、大丈夫。いつもごめんね?サッチ、」
「ばか。謝んなっていつも言ってるだろ?俺的には名前にかわいー笑顔でありがとうって言われた方が何倍も嬉しいんだけど?」
「もう!またそうやってからかう…!」

サッチの軽口に自然と赤くなった顔を隠すようにそっぽを向けば、低く咽を震わせる音が耳を擽って、それからくしゃくしゃと髪の毛を軽く混ぜられる。

「戻るか」
「、うん」

優しい優しいサッチ。何かあるたびにこうして様子を見に来てくれて、何を言うでもなく傍にいてそっと背中を押してくれるわたしのだいすきなひと。
願わくば、これからもあなたの傍にいたい。

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