食堂で目だけをさ迷わせているマルコを見つけた。
多分名前を探しているんだろうと思う。


なんせイゾウとマルコは過保護だ。
二人が名前をあんな風な性格に仕上げたと言っても過言ではない。
もともと何かしら人間に対して不信感を持っていた名前を底抜けに甘やかすから、名前はマルコやイゾウを頼りきってる。



家族としてなら微笑ましいが、好意を抱いているヤツから見たらあんなに厄介な兄はいない。
勿論サッチだって敵には回したくないし、出来れば避けて通りたいがそうはさせてはくれないだろう。



「サッチ、名前知らねぇかい」


「部屋にいなかったか?」



サッチが名前の部屋から出るときは頭がパンクしたのか気を失っていた。
だからそのままにして出てきたのだが、マルコは軽く首を横に振る。



「親父が呼んでんだけどよい、何処にも見当たらねぇ」


蟲もいねぇし、と宙に視線をさ迷わせるマルコ同様にサッチもきょろきょろと辺りを見渡した。
いつもなら何匹かはサッチの近くにいるのに、今日は見当たらない。



「家出した‥とか?」


「家出?ああ‥もしかして次が冬島だからか」


「あ?どういう意味だ?」


「冬島だと名前の蟲があんまり動けねぇから先に行って衣替えみたいなことすんだよい」



マルコ曰く、冬眠してしまう蟲を離して冬島の蟲を取り込むらしい。
でもその話だと、名前の扱う蟲の半分以上は冬島では使えないらしく、妙なざわつきを感じた。



「半分以上使えないままで一人で冬島に行ったのかよ!あぶねぇだろ!」


「でもまぁ今までも毎回そうしてたし問題ねぇよい」



今までは名前のことをたいして気にかけていたわけではないから気がつかなかったが、そんな危険なことをしていたとは知らなかった。
半分以上と言うことは攻撃も防御も半減するということで、その状態で一人島に上陸するなんてとんでもない無茶だ。



「なんで止めねぇんだよ!わかってたなら最初に止めとけよ」


少なくても家族には教えて教えておくべきだと思う。
これだから過保護な兄は困る。


「サッチ、名前は非力呼ばわりされるのが一番嫌がるんだよい」


「それとこれは別だろ」


そのくらいサッチだってわかってはいる。
側に居た時間はマルコやイゾウの比には到底敵わないが、それでも名前のことはわかっているつもりだ。


それでも頭に血が上るのは、どうしても嫌な予感しかしないからで、こんなこと言ったら笑われそうだが蟲が呼んでいる気がする。



「‥なんか嫌な予感がすんだよ」


「明日には着くから心配すんなよい」



呆れたようなマルコの言葉にサッチは舌打ちだけ返した。


ざわめく


1