「さて、どうしてくれようかな」

そう嫣然に笑みを浮かべたサッチに背筋に冷たいものが走る。扉の前にサッチが立っているのだから、逃げようがないというのに、思わず逃げ場所を探してしまうくらいには嫌な予感がした。

「逃げたらお仕置き追加するからな」

脳内を見透かしたような発言に体がびくりと揺れる。体内の蟲はサッチのにおいを嗅ぎつけてか高揚しているようだが、名前の脳内は驚くほど冷え切っていた。主に恐怖で。

「じっとしてろよ」

余計なことを考えていたせいか、すぐそばまでサッチが近づいていたことに気づかなかった。びくりと大げさにはねた体を軽々と持ち上げたサッチはそのまま名前のベッドに腰を下ろす。サッチに触れたところから歓喜した蟲たちが精気を吸うのがわかる。不思議とサッチにくっついているときは蟲が精気を吸うあの独特の気持ち悪さが軽減され、むしろ体力が回復しているということに気がついたのはごく最近だ。

「4回だから、4つだな」

後ろから名前を膝に抱えたサッチがぼそりと呟く。何をされるかわからない恐怖と、サッチの顔が見えない恐怖で自然と体が硬直する。その硬直をといたのは腹をなぞった冷たい感触だ。

「ひぁ…!?」

あまりの不意のできごとに自分では考えられないくらい高い声が勝手に口から出て、羞恥に顔が真っ赤になった。というか、いつの間にかシャツのボタンがいくつか外されていて、サッチの手が生肌を這うというとんでもない事態になっていた。

「ちょっ、!サッチ隊長!?」
「はい5回目―」
「っぁ…!」

思わず腹や脇腹を這うサッチの腕をとどめるように手を添えて振り返ろうとすれば、隊長呼びを咎めるようにブラの縁の際どいところをつつつ、となぞられる。

「学習しねェな」

それともわざと?喉奥で低く笑うサッチの色をふんだんに含んだ声が耳元をかすめる。きっと耳まで真っ赤に染まっているだろうから、サッチにはいろいろバレているのだろう。いろんな意味で死ねる。
うなだれるように俯いた名前のうなじに、生温かい濡れた感触が這う。

「ひっ…!?」

さっきからまともに言葉を発せていない。それもこれも全部サッチが悪いのだが、文句をつける度胸は残念ながら名前は持ち合わせていない。非常に残念ながら。

「んー…」

うなじを、舐められたと思ったら、ぴりりとかすかな痛みが訪れた。
いくら経験の少ない名前とはいえ、最低限の知識はある。されたことがなくても、それが何であるかぐらいはさすがにわかるのだ。だから余計に混乱した。

「あと4つな」

機嫌のよさそうなサッチの声が聞こえる。


あまりの衝撃的な事態に、思考がすべての活動を放棄した。



羞恥カウント


9