やっと家族と打ち明けたと思ったら、今度はそのきっかけをくれたサッチとギクシャクしてしまった。
否、正確にはギクシャクしているのは名前だけでサッチはいつも通り。

変わったのは一瞬だけで、勘違いだったんじゃないかと思うぐらい次の瞬間には普通に戻っていた。



なにか地雷でも踏んでしまったのかと色々考えたけれど、考えても考えても考えは纏まることはなく、さらさらと水のように溶けて身体の奥深くに溜まっていくばかり。


この気持ちを誰かに打ち明けたくて、少しだけでも話を聞いて欲しくてマルコとイゾウの姿ばかり探してしまう。
甘えられるのは、と言うか本音を話せるのはあの二人ぐらいしかいなくて。他の家族とも仲良くはなったけれどやっぱりあの二人には敵わない。


特別欲しい言葉をくれるわけでもないし、優しく慰めてくれるわけでもないけれど、兄を彷彿させるような二人には本音で喋れる。



「マ‥」


「名前!こんなとこに居たのかよ!今日こそは一緒に飯食うぞ!」



一番隊のクルーに囲まれていたマルコを見つけて声を掛けようとした瞬間、今度はエースに捕まった。



「え、エース!ちょっと待ってよ私マルコに話が‥」


「大切な話かよ?」


「…大切って言うか‥ちょっと聞いて欲しい話があって」



不満そうに眉を歪めたエースにちらりとマルコの方を見ると、仕事の話をしているらしく少し険しい表情を浮かべていた。
また後にしようかとエースに向き直ると、エースが物凄い顔をしていて気まずくなる。



「エース?」


「俺には話せねぇってことかよ」


「あ、いや‥そう言うんじゃなくて」



何て言えばいいのか、エースにこんな話をするのは気が引けてしまう。
それこそ自意識過剰だと思われてもおかしくない話だ。

みるみるうちに不機嫌そうな顔になっていくエースに的確な言葉が見付からずにしどろもどろに口を動かす。



「話聞くぐらいなら俺も出来る!来いよ!話聞いてやるから!」



何に対抗心を燃やしているのか知らないが、名前の手を力強く引っ張ったエースはいきなり走り出して、足が縺れないようについていくのに精一杯だった。
エースの手首に填められた海楼石の手枷が走る度に音を鳴らす。



「座れ!」


「あのね、エース‥違うよ」


「座れ!俺が名前の話を聞いてやるから!」



憤ったように自らのベッドを指差して命令口調で名前を見るエースに、ため息が無意識に漏れた。
エースにこんなこと話したって馬鹿にされるだけなのに。


でも真剣な表情で名前を見てくるエースにまさか話したくないなんて言える筈もなく、ちょこんとエースのベッドに腰を下ろす。その隣にエースがどかっと腰を落として、重みで名前の身体が軽く浮いた。



「話せる範囲でいいから俺にも話せよ」


ぎゅっと強めに握られた手が熱くて、痛いぐらいエースの優しさが胸の奥に刺さった。



プリーズ、テルミー


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