クジラのような大きな船の空気が柔らかくなった。
理由は、よくわからない。



宴に参加したからだろうか。
それとももっと別な理由なのかはわからないが、とにかく数日前までの孤独感が嘘のように周りには沢山の家族がいる。



「なぁ、名前もそう思うだろ!?」


夕食を食べていると目の前に座っていた6番隊のクルーに話を振られて、驚きのあまりスプーンを落とした。
名前の近くにマルコやイゾウ以外が座ることだけでも珍しいのに、まさか話を振られるとは思ってなかった。



「なにやってんだよ、取って食いはしねぇんだからいつもみたいなふてぶてしい態度でいろよ!」


からん、と落ちてしまったスプーンを6番隊のクルーが拾って適当に払ってほらよ、と名前のトレーに戻す。



「そ、そんなふてぶてしくないっ‥し‥」



話を振ってくれて嬉しいと思う反面、なんて返したらいいのかわからなくて可愛くない返事ばかりが口から飛び出す。
もちろん名前だって可愛くないことぐらい百も承知だが、防衛本能と言うかなんと言うか。逃げ道を作っておかないとまた独りになった時にやるせない。



「あっそ!じゃあもう話し掛けてやんねぇからな」


ため息混じりで肩を竦めたクルーの言葉が胸に突き刺さるような痛みを感じた。



「別に‥話し掛けてくれなんて言ってない!!」



素直になれない自分が悪いのに、気がついたら声を荒げていてびっくりしたように目の前のクルーが口をぽかんと開けていた。
しまった、と後悔はするが吐き出した言葉を回収するわけには行かずに目を伏せる。



「ぷ‥はははっ!エース隊長か言ってた通りだな!!」



呆れたようなため息とか、罵声とか嫌味が返ってくると思ってたのに帰ってきたのは笑い声で。



「あんま苛めんじゃねぇよ、名前は意地っ張りなんだから拗ねたら手に負えねぇぞ」


「いやだって今の顔見た?自分で言ってしゅんってしてたんだけど!」



楽しそうに笑うクルーにカッと顔が赤くなるなるのを感じた。
確かにちょっと落ち込んだが、そんなに顔に出てるとは思わなかったし、まるで4番隊長を相手にしてるような気分になる。


「落ち込んでないっ!」


「はいはい、名前ちゃんは落ち込んでないもんな?」
「…‥っ!」



けらけら笑いながら名前の言葉を右から左に流すクルーに名前の口がぱくぱくと無駄に開閉する。
いつから4番隊長の悪いノリがブームになってしまったのか、異常に対応し辛い。


未だにニヤニヤ笑う6番隊のクルー頭を真上からサッチの大きな手のひらが軽く小突く。



「こらこら、あんま名前をいじるんじゃねぇよ。お兄さん怒るぞ?」



サッチが言えたような事ではないが、サッチのおかげでなんとか危機を脱出できたような気がしないでもないから、ちょっぴり心の中で感謝した。



小さな変化


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