「私のバカバカバカ!!」


甲板の隅で踞った名前は今にも自己嫌悪で居なくなってしまいたくなるぐらいのショックを受けていた。


サッチが寝たら抜け出そうと思っていたのに事もあろうかサッチと一緒に爆睡してしまった。
しかもかなりいい目覚めだったのが癪でしかない。



「あーっ!!」


マルコとイゾウが起こしに来てくれなかったらいつまで寝ていたかもわからないし、寝起きにどんな顔をしてサッチの顔を見たらいいかわからないかった。
マルコ達には今日から足を向けて寝ないようにしなくては。



「おー‥名前、こんなとこでなにしてんだ?」



自己嫌悪で人が落ち込んでいるのに相変わらず暢気な声を出すサッチが恨めしくて仕方がない。
もっと瀕死になるぐらい痛め付けられればよかったのに。



「おーい?聞いてる?具合悪ィの?大丈夫?」


聞こえているけどわざと顔をあげないと言うのに、それに気がついていないのか。それともわざとなのかはよくわからないが、顔を上げないとずっと付きまといそうだ。



「なんですか‥サッチ隊長」



渋々サッチの顔を見上げると、サッチは持っていたホットミルクを名前に差し出した。
ぐいぐいと押し付けるようにカップを差し出してくるものだから仕方なくそれを受け取る。
猫舌な名前に合わせてあるのか、手のひらに感じるカップの温もりは心地いい。



「悪かったな、抱き枕代わりにして」


「本当です。迷惑極まりなかったです」


ずずっとホットミルクを啜ると、サッチが隣に勝手に座った。
名前は隣に座ったサッチから距離を取るように少しだけずれて、両手で持ったカップを眺める。
サッチが少し笑った気がするが、そこはもう気にしない。



「それとさー‥」


「まだなにかあるんですか?」


「生肌に触ってごめんな」


「な…っ!」



持っていたカップが甲板に転がって、中身が無惨に吐き出された。
ゴロゴロと転がっていくカップを目で追うことなくサッチの方を睨み付ける。サッチは腰を触っていたであろう左手をにぎにぎしていて顔がひきつった。


「お前、すげぇ肌気持ちいいのな」


へらっと悪気なく笑うサッチにカッと顔が赤くなるのがわかって、出てこない言葉に口をぱくぱくと動かす。
色々と言い返したいのに、心臓がバクバクと煩くて、口を動かす度に顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。



「名前、顔真っ赤」


「う、煩い!です!今度触ったらもう一緒に寝ませんからね!!」


「あ、また寝てくれんの?ラッキー」


へらへらと笑うサッチにハッとして唇を噛み締めたが、もう自分でもなにを言ったらいいのかわからなくて、頭の中がぐるぐる混乱する。



「わ‥、あっ、サッチ隊長なんて知らないです!」


自己嫌悪はまだまだ止まらない。




ネガティブ・エンドレス・リピート


1