4番隊の隊長であるサッチとの初対面は、最悪だった。
所属することになった16番隊の隊長であるイゾウと居たときに、たまたま会って声を掛けられたのだが、最初からして本当に最悪だった。


「お、新しい妹ってお前?よろしくな、俺4番隊の隊長でサッチって言うの」


へらっと笑うその表情は、何となくだが懐かしくて少しだけホッとした。
その反面、懐かしいその空気に警戒した。

まるで、誰かさんを見ているようで酷く不愉快な感情が腹の奥底から押し上げてくる。


「よろしくお願いします。16番隊に所属することになりました、名前です」


八つ当たりもいいところなその感情に蓋をして、ある程度の愛想笑いで返す。
その表情がお気に召さなかったのか、サッチはほんの少しだけ眉を歪ませる。

愛想笑いを、嫌がる人はこれで三人目。
どっかの誰かさんと、イゾウと、そしてサッチ。

愛想笑いは、人生を円滑に進めるためには欠かせない物なのに、きっとこの三人はどこか似ているんだと何となく思った。


「緊張してんだな、よしよし。元々海賊じゃなかったんだろ?仕方ねぇよな」


まるで昔からの知り合いのように名前の頭を撫でるサッチに曖昧に返事をする。
心の奥底に沈んでいた何かがチリチリと痛んで、そしてまた沈んでいく。


「早速手ェ出してんじゃねェよ、孕んだらどうすんだ」


からかうように笑ったイゾウがやんわりと名前の頭に乗ったサッチの手を退けて、邪魔だと言わんばかりにシッシッとジェスチャーをする。


「なんだよ。いきなりブラコン丸出しじゃねぇか、イゾウ」

「ハッ、妹に悪い虫がつかないようにすんのは当たり前だろ?特に趣味の悪い虫はな」


払い退けられた手を揺らしながらケラケラと笑うサッチと、小馬鹿にしたように鼻で笑うイゾウに、名前はゆっくりと目を伏せた。


懐かしい、感覚だ。


「まぁそんなに緊張すんなって、敵襲とか殆どないしな?いざとなればサッチ兄さんが死んでも守ってやるから」

「……」


沸々と傷が抉られるように痛みが沸き上がってくる。


「頼もしいじゃねェか。俺のことも死ぬ気で守ってくれても構わねェんだぞ、サッチ」

「ばっか、野郎なんて守んねぇよ。自分でなんとかしろ」


サッチの言葉を嘲笑うようにイゾウが首をかしげてせがむような声を出す。
それにベッ、と舌を出したサッチに名前は顔をしかめた。
ぞわぞわと身体を這う感覚が活発になってきて、思わず隠すように身体を丸めた。


「…どうした?気分でも悪いのか?」

「なんでもない、ちょっと船酔いしたかも」


気にかけるようなイゾウに、名前は軽く手で制止を掛けて笑った。


「ならいいが、気分が悪いなら言えよ」

「わかってるよ。大丈夫」






サッチのことは、絶対に、

好きにはなれない。


はじめまして、XXX



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