条件その1、当面わたしとは無関係を演じること
条件その2、他言無用、普通通りに生活すること
条件その3、無理はしないこと
指を順番に3本立てたところで、斎藤さんはキョトンとした顔でわたしを見つめていた。
「どうしたの?」
「そ、そんなことでいいの…?」
首を傾げるわたしにふるふると震えながらこちらを仰ぎ見る彼女の眉尻が下がっていて庇護欲をそそられる。
「ちょっとだけ辛い思いさせちゃうけど、必ずなんとかしてみせるから、もう少しだけ我慢できる?」
わたしの言葉にこくりと素直にうなずく斎藤さんの頭を、つい衝動的に撫でてしまった。
そんなわたしを、斎藤さんがキョトンとして見上げてくる。んー可愛い子だなあ。
「あ、ちなみに携帯持ってる?」
大切なこと忘れてたと思い出して告げたわたしの言葉にやっぱりこくりと頷く斎藤さん。
借りてもいい?と首を傾げるわたしの手のひらに斎藤さんはなんの疑いもせず携帯を置く。この子の警戒心のなさを心配しながらそれを受け取る。わたしが下心たっぷりの男だったらどうするんだ、この子は。そんなオバサンくさい思考はとりあえず隅っこにぽいしてわたしの情報を登録する。
「これ、わたしのアドレスと電話番号だけど、偽名で入れとくから、なんかあったらすぐ連絡して。いつでも遠慮は無用だからね」
はい、と携帯を返せば、斎藤さんはそれを受け取り、静かに「…ありがとう、」と瞳を潤ませて震える声で告げてくれた。
「じゃあ戻ろっか。途中まで一緒に行く?」
「ううん、大丈夫。ひとりで行けるよ」
ありがとう、彼女はもう一度わたしにそう告げてからスカートの埃を払って立ちあがる。その横顔は泣いた面影なんてなくて、凛としていた。
(…可愛いだけじゃない、強い子なんだね)
彼女が去ったあと、ポケットに手を突っ込み携帯を取り出す。電話帳からお姉ちゃんのアドレスを引っ張り出してコールをかけた。
「あ、もしもしお姉ちゃん?今ちょっと平気?…ごめんね、ありがとう。あのさ、お姉ちゃん大学のときサークルで使ってた道具一式まだ持ってる?よければ貸して欲しいんだけど…うん、ちょっといろいろ動き出そうと思って」
さーて、物語はプロローグが終わったばかり。お姫様を救うべく、まずは最初の村で情報収集しなくちゃね。
404(RPGは結構得意なんだよね)