小説 | ナノ



その後 3




自分もリボーンも今更あとには引けないところまできている自覚はある。
したくない訳でもない。嫌だったらとっくに逃げている。
現にこうして自ら用意するぐらいには覚悟はあったつもりだった。
なのにドロリと手の平を伝うジェルの冷たさを感じて恐怖が戻ってきた。翌朝の間接が軋む音と奥を貫かれた裂傷が疼いて震える。
逃げ出したくて腰を上げると大きな手に顔を掴まれて引き下げられた。
「嫌か」
感情が見えないとよくいわれるリボーンの顔。だけど不思議と昔からオレだけは何を考えているのか知ることが出来た。憤りも苛立ちも、喜びも安堵さえ手に取るように知れたのにこの顔は初めて見る。まるでむずかる子供をあやしているような表情に、これでは前回と同じじゃないかと気が付いて睨むようにリボーンを見詰め返した。
「嫌じゃない」
首を振ってリボーンの手から顔を外すと、だから大丈夫だと手の平のそれで自分の中指を濡らして中腰の姿勢で後ろに手を伸ばした。
けれどこんな場所に自分で触れたことなんてないからどうすればいいのかも分からない。尻の間を縫って奥まったそこに指が届くと自然に動きが止まった。
ちらりと下を覗けばせっつくでもなく口元を緩めながらもそこに視線が注がれている。
恥ずかしさに逃げ出したい気持ちを抑えながら指先を押し込んでいくと、どうにか入り口を掻き分けることができた。
第一関節まで入ったところで浅く息を吐き出して少し指を止めて確かめた。ジェルのお陰か痛みはないものの強烈な違和感がある。
全然気持ちよくなどないがこれもリボーンとするためだとまた指を奥に押し込めていくと、先ほどまでオレの顔を掴んでいたリボーンの手が後ろの違和感に少し萎えたオレの起立へと伸びてきた。
「っ、あ!」
先走りの残る先から根元へとぐんっと強めに擦られて指を食んだ奥が狭まる。意識が後ろへと集中していただけに突然のことに声が漏れた。
リボーンの手の平と指とで扱きあげられていき、指も動かせずに声を震わせた。中途半端に放置されていたそこが扱かれる刺激にしずくを零して勃ちあがる。
「や、だめ…っ!はなして…って!」
くびれに爪を立てられてビクンと震えた。もう後ろを広げるどころじゃない。
緩んだ奥から指が落ちそうになったところでリボーンに手首を掴まれて自らの指を押し込められた。
「ん…ぁ!」
一気に深く貫かれ逃げ場のない衝動に身体をのけ反らせる。前と後ろをぐちゅぐちゅと掻き回され、弄られて頭を振って堪えようとしてもうまくいかない。
オレの中を抉るようにまさぐる指が激しく上下すれば、起立を擦る指も同じだけ激しさを増していく。
逃げたいなんて思うこともできない。
喘ぎを零すだけとなった唇からだらしなく零れ落ちた唾液が顎を伝って首筋へと落ちると、突然起立から手を放された。
はぐらかされて続きが欲しいオレは、縋るような視線を下に向けた。そこには悠然とオレを見詰めたままでオレの起立からしたたっていた先走りにまみれている手をリボーンは舐め取って笑っている顔がある。
舌先が透明なそれを掬い取る仕草にゾクリとした。さも上手そうに幾度も舌を這わせるリボーンのニィと笑う淫蕩な表情にまた起立からポタリとしずくが零れ落ちた。
押し込められたままの自分の指が無意識に動き出す。ネバついたジェルの音が余計に興奮を呼び起こし、気が付けば一人で奥を弄っていた。下から注がれる視線に応えるように指がそこに吸いこまれていく。
荒い息と奥を弄る音、それからそこを見詰める視線とに羞恥の壁が崩れる。
あまり太くも長くもない自分の指でイイ場所を突こうとしても届かない。それでも爪の先がそこを引っ掻くと起立から先走りが溢れ出た。
見られているだけで興奮して、恥ずかしいという気持ちが思い出せない。
もう少しでイける…というところで腕を取られて力が抜けて腹の上にしゃがみこんだ。
「なん…!」
非難がましい声をあげたオレの手を引いたリボーンは、上に跨るオレを無視したまま掴んだオレの手を自分の下肢へと導いていった。
ドクドクという脈拍まで聞こえてきそうなそれに驚いて意識がそこに向かっていく。
欲しいと思っていた先ほどよりもっと飢えていて、自分が今どんな格好をしているかなんてどうでもいい。
こちらに向かって勃ち上がっているリボーン自身を迎えようと腰を動かして後ろに沈めた。
解れた自身の窄まりをそれに押し付ける。少しずつ腰を落としていくと襞を押し退けて中に挿入すれば痛みとそれ以上の何かに喉を鳴らした。
予想以上というか予想通りに入っていかない。
焦れたオレは後ろに手を伸ばして熱い塊を自らの指で広げたそこに押し込めていくと、腰を掴まれて力まかせに起立の上に据えられた。
「ひっ!んんン…!」
跨った姿勢で中をいっぱいに満たされて我慢しきれずにわずかに白く濁った先走りが零れると、腰を掴まれて奥を掻き回される。
突き入れられる度にまるで押し出されるように起立の先から零れる体液は濃度を増して自分とリボーンのシャツを汚した。
下からの突き上げに身も世もなく悶えていれば、リボーンの起立が引き抜かれてベッドの脇に押し遣られた。
突然の行動に驚いていると、今度はオレがベッドの上に仰向けにされて足を左右に開かれたままリボーンに乗り上げられる。
「下の口がヒクついてんぞ。どうした?」
膝を掴まれていては隠すことも出来ない。だけど羞恥よりも上回る熱に腰が揺れてそれを止められなくて抵抗することも忘れ物欲しげに疼くそこを晒したままリボーンの顔を見て強請る。
「ほしい…リボーンの、ちょうだい」
いつの間にか取り払われていたオレのスラックスの張りのある布地を下にひきながら、膝を掴む手に手を伸ばすともっとだというように膝を引き上げられる。それによって腹を濡らしていた先走りと白濁で汚れたシャツが捲くりあがっり貧相な胸板まで曝け出された。
クイッと顎をしゃくるリボーンに従ってシャツを喉元まで引っ張り上げれば、赤くしこった乳首と限界近くまで膨らんでいる起立が震えていた。
掴み上げた膝の間から顔を覗かせているリボーンに目配せをしてもそれを見詰めて笑うだけで動いてはくれない。
「リボー…ンっ!」
悲鳴のようなオレの声にクツリと笑うと、わざとゆっくり顔が胸へと落ちてきた。見せ付けるように這っていく舌に痛いほど勃ち上がったそこから白いものが零れていく。
イくにイけない状態を堪えるためにシーツごとスラックスを握り締めて仰け反ると、リボーンのシャツの胸に起立が擦れて白濁が飛び散った。
「っ…あぁ…!」
ドロリとした濃い精液の匂いと、散ったしずくが肌を伝う刺激に身体が震える。
堪えきれずに吐精してしまったオレは半ば八つ当たり気味に上からオレを見下ろしているリボーンを睨みつけた。
「ど、してだよ!」
勝手にイって何をと笑われるだろうと思っていたのに、オレを見詰めるリボーンの瞳は驚くほど真剣な色をしていた。
膝を手放されて、よろけながらも起き上がると何故か憮然とした顔に遭遇する。
一人で楽しんだともいえる今までの行為を思い出して、バツの悪さに俯くとシャツの襟元を掴まれて無造作に左右に裂かれた。
バラバラ…とベッドから零れ落ちる音を聞いて、やっと自分のシャツが無残な姿となったことに気が付いた。
3ヶ月に一度は採寸して作り直されるオーダーメイドのそれを呆然と眺めて顔を上げると声が掛かる。
「…えたか」
「何?聞こえな」
「てめぇの少ない脳細胞に刻み付けたかって聞いてんだ」
「おま、ひど…い、んふっ」
上げた視線がすぐに塞がれて、普段は冷たく見える唇がオレのそれに食いついた。唇の先から端までを行き来する熱を持った唇に燻っていた焔が容易く引火する。
肩から落とされたシャツが肘下でたわみ、それに爪を立てながら口付けに応えているとリボーンの手が背後に伸びた。
掻い潜ったシャツの奥へと忍び込んだ指がジェルの残る襞を掻き分けて入り込む。
ヌプヌプと出入りを繰り返す指に重ねた舌に吸い付いて続きを促した。次第に指が増えて、その指が奥を引っ掻くけば堪え性のない奥がぎゅうと指を咥え込む。狭まった内壁に指を押し付けられて口許が緩んだ。
「ん、はぁ…あっ!」
ほどかれた口付けにも気付かずに、目の前の身体に腕を伸ばしてしがみ付く。
入れやすいようにと突き出ていた尻は吸い込まれた指に操られている。知らず動いてしまうそれを弄っていたリボーンは、しがみついていたオレの手を肩から外して身体の乗り上げてきた。
形勢が逆転したことに気付いても今更どうにもならない。
押し当てられた熱い塊が指で広げたそこにゆっくりと入り込む。
仰け反る身体を上から押さえ付けられて、満足に身動きもとれない状態での挿入がもどかしい。太い部分が入り口をこじ開けるとそのまま奥まで突き入れられた。
まるで身体は覚えているかのように打ち震えて拒む気配もない。ゆるゆると動き出した熱塊につられて揺れる腰は無意識の行動だ。
腰を掴まれて好き勝手をされているのにそれすらいい。
吐き出す息さえ挿抽に支配されてままならない。唯一自由になる足が目の前の身体に絡みつくとぐいと奥まで突き入れられた。
「ぁ…!」
2度目の吐精はあまりにあっけなくて、しかも余韻に浸る間もなく抜き差しは続いていく。
前立腺を直接擦られるよさに喘ぎ声が漏れると腹の底に届くほど深く突かれて残っていたわずかな白濁が溢れ出た。奥でビクつくそれにリボーンも果てたことが分かる。
動かすことも億劫な腕を伸ばしてリボーンの額にかかっていた髪を梳くと、繋がったままで顔が落ちてきた。
無遠慮に口腔を舐め取られながらも、どうにかついていくと舌先を軽く吸われて唇が離れてしまい未練がましくそれを眺める。すると視線の先で唇が歪んだ。
「どう思われてんのか知らねぇが、お前に執着してるんだぞ。よくも、悪くもな」
「そんなのオレもだ」
誰よりも知りたいし、誰にも知られたくないと思えれるのはリボーンだけだ。なのにリボーンはそんなオレの言葉を鼻で笑う。
「どうだかな。お前のそれがオレのこれと同じなら今頃オレは死んでるか、それともお前を殺しているかだぞ」
物騒な台詞に目を剥くと嘘だぞとニヤリと笑われた。
性質が悪いとリボーンを睨むと悪かったと言って奥を擦り始める。精液でぬめりで痛みもない上に質量を増した起立に抜き差しされることを覚えた身体がすぐに反応してしまい抵抗することも出来ない。
覚えていなかった時にはなかった身体の疼きに息があがる。
「も、ヤダって!」
逃げ出そうと肩に腕をかける上半身とは逆に、突き上げる動きに下肢はついていってしまう。気持ちよさにまた先が濡れはじめるとそれを見たリボーンがくくくっと笑いだした。
「これで忘れらんねぇだろ?」
剥き出しの胸の小さな先に指を這わせて捏ねられた。親指と人差し指で揉むように摘まれて手から力が抜け、背中が跳ねる。
「今日はトばないように加減してやるからな」
「んな…っ!?」
ギリギリで意識を保った快楽がどれほど苦痛と隣り合わせだったのかと知るのはこれからの話しだった。


  終



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