リボツナ4 | ナノ



7.




親子遠足の定番といえばやはり動物園または水族館だろう。
綱吉の通う小学校も例に漏れず、並森動物園で一日を過ごすのだそうだ。

何故そんなことが分かるのかって?それは以前、先輩が綱吉との遊びに夢中になっていた時に綱吉の母親である奈々さんから綱吉の年間行事表をコピーして貰ったからだ。

その後、1ヵ月の予定表が手に入るたびに奈々さんから手渡されるそれを大事にファイルしてあったりする。

先輩の奇行に振り回されているオレを哀れに思ってというより、綱吉の相手をしているオレのことを嬉しく思ってくれているらしい。

スカルくんはツッ君の2番目のお兄ちゃんねなんて言われて激しく動揺した時に思いを馳せていると、バスが並森動物園前というアナウンスをはじめた。

慌てて降車ボタンを押すとゆるやかなラインを描いてバスがゆっくり停留所に停まった。
降車はオレともう一組の親子のみ。

さてと今日の予定表のコピーに視線を落としていると、並森小学校2年一同というバスが丁度目の前を通り過ぎていった。

思わず綱吉を探す自分に苦笑いを浮かべながら、それでも気持ち悪くなっていたり先輩にしつこくされてやしないかとキョロキョロしていると、停車したバスから元気のいい児童とその親が駆け降りてきた。

一番最初のバスからは綱吉の姿も先輩も見えず、ならば次のバスかと眺めていると、ほどなくお母さん方に囲まれた先輩と綱吉が現れた。

「あ、スカルさん!」

すぐに気付いた綱吉がこちらに駆け寄ろうとすると、先輩がすかさず綱吉を抱え込んだ。
そんな先輩と綱吉のやり取りでオレという存在に気付いたお母さん方は何故かキャアキャアしはじめる。

しかもオレと先輩を交互に見詰めながらのそれに訝しんでいると、先輩の手から逃れてきた綱吉がドンと力いっぱいしがみ付いてきた。

「こんにちは、スカルさん!リボーンお兄ちゃんが心配でついてきたの?」

「ああ、そうだけど…」

確かにその通りなのだが、何故か違うことを聞かれてるような気がして先輩の顔を眺めていると、苦虫を噛み潰したような顔でこちらに近付いてきた先輩が嫌々オレに声を掛けてきた。

「悪ぃがオレの好みはツナだ。ツナは男の子だがオレにとって特別なんだぞ。悪いことは言わねぇから諦めてくれ。」

「って、何のことですか?!!」

変な言い掛かりをつけられて、何が何やらわからないながらもここは否定しておかないとと強く言い切ると、先輩の後ろから頬を染めたお母さん方がキャピキャピしながらとんでもないことを訊ねてきた。

「綱吉くんのお兄ちゃんの恋人なの?!ねぇ、BL?BLなのかしら!!」

「きゃあ!素敵ね!どっちもかっこいい系なのが惜しいけど、どっちも綺麗だからいけるわね!」

「ちょ、まっ…何の話なんだ!!」

知らない単語が出てきたが、どうやらよくない方向に誤解されていることだけは分かった。
先輩に助けを求めようとしても、心底げんなりした様子で視線すら合わせない。

いや、元々顔も合わせたくない程度の仲といえばそんなものなので不都合はないが、それでもこれにどう対応すれば正しいのかと考えていると、綱吉がオレの服の裾を掴んでぽつんと訊ねた。

「スカルさんはお兄ちゃんが好きなの?」

「そんな馬鹿な!オレが好きなのは綱吉だっ!……あ、」

とつい本音を漏らしてしまえば、今度は違う方向から悲鳴が上がった。

「君、綱吉くんが好きなんだ?だからリボーンくんに負けたくなくて着いてきたのね?」

「可愛いっ!おばさん、君のこと応援しちゃう!」

「は、はぁ?ありがとうございます…」

ショタコンを自ら暴露してしまい綱吉に迷惑が掛かると焦ったのも束の間、何故かオレと綱吉をくっ付ける会なるものが幾人かのお母さんで結成されてしまった。

よかったと思うべきなのか、変わっている父兄が揃っていることを嘆くべきなのか。
どう反応すればいいのか迷っていると、後ろから暗雲を背負った先輩がにじり寄ってきた。

「てめぇ、何ツナに告ってんだ!このショタコンが!」

「あんたにだけは言われたくない!」

本当に先輩にだけは言われたくはない。ツナを間に先輩と睨み合っていると、オレの服の裾を摘んでいた綱吉がぎゅっと握り締めてオレを見上げてきた。

「あの、ありがとう。でもぼくスカルさんへの好きとお兄ちゃんへの好きの違いが分からないから…」

一生懸命言葉を考えている綱吉が可愛くて、その頭を撫でていると先輩の手刀が脇腹に決まった。
あまりの痛さに息も出来ず蹲ると、すかさず先輩がツナの手を取って握り締めた。

「ツナ、こんな変態なんかとオレが一緒なものか。よく考えるんだ。」

「えっと…」

よく考えたからこそ分からなくなったのだろうに、自分が一番だと言って貰いたい先輩は綱吉の手を指を絡ませて握ると顔がくっ付かんばかりに近寄っていく。
それをみたオレは痛みを堪えて立ち上がると、急いで先輩と綱吉の間に立ち塞がった。

「やっぱりあんたが一番変態だ!オレは綱吉の成長を守ってやりたいと思っているが、あんたはこのままの綱吉がいいと思っているだろう!?」

いくら寛容な父兄ばかりが揃っているとはいえ、こんな公衆の面前で頬擦りやキスなんてされたら綱吉の今後が心配だと割り込むと、その言葉に驚いた顔を見せた先輩がぼんやりと呟いた。

「なに言ってやがる。ツナはツナのままでいいに決まてるだろ。育とうが育つまいがツナはツナだぞ。」

と真顔で言い切った先輩にツナが嬉しそうな顔を見せたところで、またも回りに群がっていたお母さんたちが金切り声をあげた。

「いやーん!リボーンくん男前ね!リボツナね!リボツナをプッシュするわ!」

「なに言ってるのよ。この子は兄弟でもないのに、追いかけてまでツナ君のことが好きなのよ?君名前は?」

「はぁ、スカルです。」

「それじゃスカツナね!スカツナよ!」

「なんですって!」

「「「…」」」

オレたち3人を無視した紛争に苦い顔をした先輩と、困った表情の綱吉、それに呆れてものも言えないオレはそっとその場を立ち去ることにした。


おわり







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