リボツナ4 | ナノ



1.






春になると色々な人が色々な事情で引越しを余儀なくされることがあるらしい。
ウチはちゃらんぽらんな父親の代わりに、しっかり者の母親のお陰でそういう憂き目にはあっていない。
だけど、お隣に越してきた親子はまさに【色々】あったのかなと小学3年生のオレにですら想像させられるような雰囲気があった。

イタリアから来たお隣さんは親子揃って真っ黒尽くめで、最初に見た時にはその風貌に驚いた。

「…こんにち、は」

「チャオ!」

「チャオ!何だ少年、元気がねぇぞ」

「え…いや、えーと」

どうしてここに?と思ったとて仕方の無い話だ。何故ならここはオレの部屋で、しかも相手はハリウッドスター並の美形…だからだけではなくて…招き入れた訳でもないのに、知らないおじさんと子供が2人オレのベッドの上で足を組んで手を振っていたのだから。

思わず自分の部屋なのかと廊下に出てから扉のネームプレートを確認してもやはり自分の名前が掲げられている。
おかしいと小首を傾げながら部屋に戻れば、オレより少し小柄な子供が机の引き出しを勝手に開けて漁っていた。

「ちょ!なにしてんだよ!?」

「何、お前の近辺調査だぞ。フンフン…沢田、つなよし?典型的な名前負けタイプか」

「おまっ!」

いくら自分より小さい子供だとて、いきなり初対面の人間に失礼だろうと肩を掴むと突然ポンと視界が回った。
ドスンという音の後に湧き上がる痛みと噎せる咳、それから見慣れた天井に自分が床の上に叩き付けられたのだと知る。
状況が把握できずにパチパチと瞼を瞬かせていれば、そんなオレの顔を大人の方が覗き込んできた。

「すまねぇな。ウチのガキは人に触られんのが嫌いでな…それと一通りの護身術も叩き込んである。気軽に触るのはやめとけよ」

「そーいうことは先に言って下さい!」

「言っても懲りねぇ面だと思ってな」

確かに物覚えは悪い。だからきっと言われても繰り返すだろうと思ったが、他人に…しかも初対面の人にはっきり告げられるのはいささか悔しい。
強張った手足をどうにか動かして床の上に足を伸ばしていれば、人の答案用紙を手にした子供が肩を竦めてオレの前に座り込んできた。

「お前、バカだな」

「ぐっ…!」

「オイ、オヤジ。この答案の点数見たか?0、5、10しかねぇぞ」

「勝手に見るなよ!」

慌てて取り上げようと手を伸ばせば、またもゴロンと床に転がされた。
そんなオレをやっぱり懲りないなといった目で見ていた大人は、妙に長い足を組むとその上に肘をついてオレの答案に視線を落として呟いた。

「だからいいんだろ?嘘も隠し事も出来ない人間なんてそうはいねぇぞ。その点、こいつなら【しない】じゃなく【出来ない】んだぞ」

失礼にも程がある言い草だったのだが、その時のオレは誉められているらしいことだけを察して床の上から顔を上げた。

「オレ、嘘とか隠し事したことないよ」

「…そうか」

思えば、その時のリボーンとおじさんの顔はひどく微妙なものだった。
だけどそれを受け入れて貰えたと思ったオレは、大小の違いはあれどそっくりな親子に向かって満面の笑みを見せていた。

「隣に越してきたリボーンだ。オヤジも同じ名前だが、オレはリボーンでこっちは【おじさん】とでも呼んでやれ」

「オレ、綱吉だけどツナでいいよ!」

起き上がったオレに手を差し伸べてきた2つの手を取ったオレは、その後自分の言動に後悔する羽目になろうとは予想していなかった。

お題をhakuseiさまよりお借りしました



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