リボツナ4 | ナノ



1.





「…ショタコンは病気か?」

という言葉と、その気弱ともとれる声音を聞いてスカルは我が耳を疑った。
それからその声を発した人物をもう一度確かめる。

今日も一分の隙もなく制服を着こなしている黒髪、黒い瞳の先輩は、やはりらしくもなくはぁ…とため息を漏らした。

ため息!ため息だと?!
この傍若無人を絵に描いて、それから傲慢と人でなしという服を着せたらこうなったという見本のような男がである。

先輩と呼ばされてはいるが、実は同学年のこの目の前の人物は気弱や弱腰とは無縁である筈である。
なのに、何故オレに訊ねた?それともこれは罠なのか?!そうです変態ですよと正直に答えるといつものように容赦ない蹴りをお見舞いされるというフラグなのか。
危ない、危ない。危うく罠に嵌るところだった。

そう気が付いたオレは先輩から一歩後ろにずれて無言を貫いた。
するともう一人の金髪碧眼の先輩がはぁ?!と素っ頓狂な声をあげた。

「なんだ?なんでショタコンだ、コラ!」

驚いたことにショタコンの意味は知っていたらしい金髪のコロネロ先輩は、黒い悪魔…いやリボーン先輩にそう訊ねた。

そういえばなんで突然ショタコンなどと言い出したのだろう。
オレも気になって先輩2人を見詰めていると、リボーン先輩はガシリとコロネロ先輩の肩を掴んで真剣な顔で答えた。

「オレは昨日、天使に遭った。」

「「天使…」」

あ、これは精神が病んでいるのだとオレとコロネロ先輩は確信した。
天才となんとかは紙一重とよく言うが、まさにリボーン先輩は紙一重系の天才だった。
もう一人紙一重どころか突き抜けているマッドな知り合いもいるが、ともかく先輩はギリギリ派だった。

とうとうイってしまったかと、コロネロ先輩と2人でリボーン先輩の恍惚とした表情を眺めていると突然ガッと切れ長の目を見開いて遠くを睨み始めた。

「…来た。オレの天使が向こうから来るぞ!」

「いや、見えねーぞコラ。オレの視力は6.0だがそれでも誰もいないぜ。」

あんたそんなに視力がいいんですか。どこのアフリカの住人なんですかと内心で突っ込みを入れていると、そんなコロネロ先輩の言葉を無視して大声を張り上げはじめた。

「ツナー!」

リボーン先輩の声を掛ける方向を凝視してもやはり見えない。
これは困ったことになったとコロネロ先輩と顔を見合わせていると、やっと向こうから人影らしき点が見え始めた。

「…見えますか?」

「おう、やっと子供らしき小さな身体がな。」

手を振り大声を張り上げるリボーン先輩の言葉が確かならば男の子が現れる筈である。
だとしてもこのテンションの高い先輩に迫られては哀れだろう。
いたいけな少年を先輩の魔の手から救うしかないと、やはりコロネロ先輩と頷き合ったところでやっと顔が確認できるほどになった。

ふわふわと纏まりのない髪の毛はたんぽぽの綿毛のようにも見える。この距離からでもはっきり分かるほど大きな瞳にまだあどけなさの残る頬はピンク色をしていた。

成る程見た目は天使というに相応しい。
だが中身はどうだと少し冷めた目で見ていると、リボーン先輩を確認した瞳がキラキラと輝き出した。

「おにいちゃん!」

「「おにいちゃん、だと!??」」

リボーン先輩に弟はいない。
なのにおにいちゃんと言って先輩に抱きついていく少年を見て身体が固まってしまった。

「紹介するぞ。今度父親が再婚することになってな、その連れ子の綱吉だ。」

どうだ可愛いだろうとデレデレと脂下がった顔を見せるリボーン先輩を前にやっと動くことができた。
知らないということは強みなのか、それとも危ういのか。
ニコニコと笑顔を浮かべる綱吉少年を見て、思わず逃げろと叫びそうになった。

先ほどの問いに今なら答えられる。
ショタコンは罪だ。病気ですらない。
早めに出頭して下さいと言葉に出し掛けてそれを飲み込んだのはどうしてなのか。

まだ低学年と思われる綱吉少年は穢れを知らない瞳でオレとコロネロ先輩を見上げている。

「キレー…おにいちゃんのお友達の髪の毛、綺麗だね。触らせてくれる?」

オレもコロネロ先輩も子供は大が付くほど苦手だ。なのに乞われるままにしゃがみ込むと小さなもみじの手がそっとオレと先輩の髪に触れた。

「サラサラで天使みたい!金髪のお友達、天使みたいだね!」

お前が天使だぁぁあ!と心の中で絶叫を上げていると、突然鞄が顔面に直撃した。

「ムカッとしたからやった。謝罪はしねぇぞ。」

というリボーン先輩の据わった目を見てゾッとした。
それに気付かないコロネロ先輩は顔を赤くして綱吉少年の好きなようにさせていた。

「せ、せんぱいっ!」

「うっせーぞ、コラ!オレは綱吉と話をしてるんだ。」

「ほーお…コロネロはそんなにツナを気に入ったのか?」

この声はヤバいと知っているオレはコロネロ先輩に声を掛けようとするも、綱吉少年に心奪われてしまったらしい先輩は聞いてはいない。

「…害虫駆除だぞ。」

ガチャンと鞄から取り出したエアガンをコロネロ先輩目掛けて発砲するとコロネロ先輩は綱吉少年を抱えて土手を転がり落ちた。

「ツナ!?」

慌てたリボーン先輩の顔を初めてみた。
本気でショタコンに堕ちてしまった先輩を笑えない時点でオレも同じ穴の狢だろうか。

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