リボツナ4 | ナノ



7.




「おかえりなさい、つっ君。」

と奈々にいつもの優しい声を掛けられてツナはやっと自分の置かれている状況を把握した。
両親の前でどこの誰だか知らない神に抱きかかえられ、あまつさえその神の首に腕を巻きつけてキスまでしていた。
箱入りのツナには考えられない所業だった。

奈々の少しも動揺していない表情に、逆に羞恥を思い出したツナは慌ててリボーンの首から腕を外すと逃げ出そうともがきはじめた。
だが、そんなツナの抵抗などリボーンにとっては子猫が少し暴れている程度でしかない。逃げる手足を逆手に取ってツナの足に腕を巻きつけ、剥き出しの腿に手を這わせると情けない悲鳴が上がった。

「ひぇぇえ…!」

「色気もクソもねぇな。まあいい。追々仕込んでやるぞ。」

先ほどとは逆の構図になったことなど気付かないツナは、いやらしく這い回る手に逃げる気力も奪われてぐったりとリボーンの肩に頭を預けた。
それを見ていた奈々は頬に手を当てると少しだけ難しい顔をした。そんな奈々にイエミツは慌てて言い募る。

「奈々!こんないかがわしいヤツと知り合いなのか?!」

必死の形相での問いに奈々は大きな瞳をパチパチを瞬かせ、それからツナそっくりの顔でふふっと柔らかく笑い出した。

「いやぁね、イエミツさんたら!こんな若い子にヤキモチを妬くなんて…!」

「しかしだな、」

「しかもリボーン君はつっ君のお婿さんなんでしょう?素敵なパートナーが見付かってよかったわね、つっ君。」

と祝福までされてツナとイエミツはムンクの叫びもかくやというような表情で叫び声を上げた。

「うおぉぉおお!冗談じゃない!ウチの可愛いつっ君をこんなどこの馬の骨だか知れないヤツに任せられるかーっ!」

「っていうか、オレ男!しかも連れてこなきゃならなかったのは人間だってば!!」

喧々囂々と煩い親子に、困ったわねぇとため息を吐くと奈々は似ていない親子の頭の上にポコンとひとつずつゲンコツを落とした。
びっくりして奈々を振り返る親子に少し怒った表情でメッ!と叱り付ける。

「いい?リボーン君はきちんとした神様よ?愛を確かめるために現れた存在なの。言葉だけじゃ理解できない人間のために創造主が与えた愛を伝える神様なのよ。だから、恥ずかしがらなくてもいいのよ?リボーン君も男の子だけれど幸い神も悪魔も性別は関係ないからつっ君が幸せになるなら母さんは賛成するわ。」

「奈々ぁ〜!」

さすが天使長まで登りつめた座をいとも容易く捨て去って、イエミツとの愛に生きるために魔界までやってきただけはあると言うべきか。
それに比べて情けない様を露呈させている魔将軍は、またも男泣きをはじめてしまった。

「イヤイヤイヤ!!なんかおかしなことになってきてるけど、オレ一言もこいつと添い遂げるなんて言ってないよ!」

こいつ、と指差した先には薄っすらと笑みを浮かべているようにも見える顔があった。
口角をくぃと押し上げた唇に、眇めた切れ長の瞳が一瞬鈍い光を放つと腿を撫でていた手がするっとショートパンツの中に滑り込んできた。

「っ!?」

突然の行為に驚きで声も出せないツナを余所に、リボーンはその手でなだらかなカーブを描く二つの丸みを揉み始めた。
勿論箱入りのツナには初めてで、どんな意図を持ってこんなことをされているのかすら分からない。
それでも身体は正直に反応を返して、上がっていく身体の熱をハァと息で吐き出すと、それを見ていたリボーンがクククッと押し殺した笑い声を漏らした。

「どうした?嫌なんじゃねぇのか?」

「へ…?」

言われて自分の腕がまたもしっかりリボーンの首にしがみついていることに気が付いた。だが快楽に弱いツナはトロンとした表情を浮かべるだけでそのままクテッと身体の力を抜くとリボーンに凭れ掛かった。

大事な一人息子を目の前で天界一のエロ神に攫われたイエミツと、密かに想っていた主の淫らな表情を見せつけられたゴクデラの血の滲むような歯軋りを聞いた奈々は、仕方ない人たちねえとため息を一つ吐いてリボーンとツナに声を掛けた。

「リボーン君はそういう神様だから仕方ないけど、つっ君はもう少し我慢させなきゃダメよ。じゃないとみんなの前でされちゃうわよ。」

「だっ、…!」

反論しようと口を開きかけたところをTシャツの上から胸に齧りつかれて、ツナの身体がビクッと跳ねた。
リボーンの首にしがみついたままブルブルと震えるツナと、まったく気にした様子もないリボーンを見て、頭をひとつ振った奈々は奇妙な呪文を詠唱しはじめた。

魔界では耳にしたこともない綺麗な言葉はふわりとリボーンを包んであっという間に光に包まれた。
天使時代の母をまったく知らないツナは、天使長だけが使えた呪文であることなど知るよしもない。

一際強く光った瞬間、ツナを拘束していた腕が消え去りドスンとツナは地面に叩きつけられた。
驚いたツナが慌てて周囲を見回すとツナの横には見覚えのある赤ん坊が不貞腐れた表情でちんまりと座っていた。

「リボーン!」

その表情からは自らの意思でこの姿になった訳ではないことが如実に伺えた。
何か魔界に連れてきたことで異常でもあったのかとリボーンを抱きかかえて観察をはじめる。それに違ぇぞとだけ呟くとリボーンはそのまん丸お目々で奈々へと睨みを利かせた。

「うふふ…久しぶりに使ったから上手くいくか分からなかったけど、どうにかなったかしら?」

「あぁ、奈々の力が健在なのはよく分かったぞ。」

「?」

謎の会話をする2人に疑問符を浮かべながら視線を行き来させていると、リボーンがぶすくれた表情のままコテンとツナの胸元に凭れ掛かってきた。

「どうしたの?大丈夫!?」

「…オレがまだ小さい頃に奈々は天使長を降りて堕天使へと変貌した。そしてツナも奈々のこの力を見たのは初めてなんだろ?」

「う、うん…」

分からないながらもそう返事をすると、小さい口から深いため息が零れた。

「しかもこれを解く鍵を奈々は教える気はねぇな。」

というリボーンの言葉に、リボーンを小さくしたのが母だとやっとツナは気付いた。
笑みを崩さない母の顔と、ふくふくほっぺを歪ませているリボーンを交互に見詰めてから突然素っ頓狂な声を上げる。

「ええぇぇええ!!!それじゃ、リボーンって神様なのに堕天使である母さんにまんまとしてやられたってことぉ!!?」

「煩ぇ!」

分かっているからこそ腹立たしいというのに、ツナに傷を抉られてカチンときたリボーンは、小さな拳をブンと上に振り上げた。
まともにアッパーを貰ったツナが目の前に星を瞬かせていると、それすら微笑ましげに見詰めていた奈々がツナとリボーンの前までしゃがみ込んだ。

「ひとつだけヒントをあげるわね。」

「…あぁ…」

癪に障るがこの姿だとツナを可愛がることすら出来ない。
赤ん坊姿だと確かに愛されていると自覚が持てるが、それだけでは足りないし何よりツナが余所見をしないとも限らない。
事実、人間界にはツナの初恋だという女がいる。

むぅとした表情で真剣に奈々の顔を見上げるリボーンに、天使長のときと変わらぬ優しい笑みを浮かべたままでそっと2人の頭を撫でながら言った。

「ツナの愛情、よ。リボーン君のことを本当に愛しているならすぐに解けるわ。でも、まだ育んでいる最中なら時間が掛かるでしょうね。」

「どういう…?」

意味だと問い返そうとした矢先にまたも新しい人物がゆっくりと霧の中から現れた。

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