お前に任せたぜ(全部丸投げ?!)今、オレは女装させられてミスコンに無理矢理出場させられている。 どうしてこうなったのかといえば、オレの入学した並盛高校には代々悪乗りしてしまうようなバカが存在したということだろう。そんなバカな校風だからオレが入学できたのかもしれないが。 でそのツケが毎年新入生に回されていて、今年は運悪くオレにお鉢が回ってきたという訳だ。 可哀想だろう? しかも、だ。 そこに何故か何様オレ様リボーン様の傲岸不遜な幼馴染が他校生のくせに乱入してきた。 でも珍しくオレに協力的だったからこいつもいいとこあるかも?なんて好感度はウナギ登りだったのだ。 そう、だった。 だけど話はそれだけでは終わらない。誰だよ、そこがオレのオレたる所以だなんていうヤツだ。 イヤイヤながらの女装中にまさかの侵入者が現れた! 女の子なら悲鳴を上げて出て行けと言えるよね。だけど相手が彼だからそれもムリかもしれない。 並高の…というより、並盛町の風紀を(気ままに)守る恐怖の番人こと雲雀恭弥だったからだ。 ただでさえ毎朝の遅刻で目をつけられているのだから逆らえようもない。 必死でお引き取り願おうと大人しくしていたオレを、事もあろうか雲雀さんは気にいってしまったようなのだ。 オレの下着姿はバッチリ見た筈だから男だって分かってるだろうに意味が分からない。 そして、それを知ったリボーンが雲雀さん相手に喧嘩を売るに等しい態度を取っている。 お前には関係ないと言えれば楽だが、この場でその台詞を口にすれば、必然的に雲雀さんにお持ち帰りされそうで怖い。 だけど、どうしてリボーンは副会長にオレのこと監視させてたんだ? オレに協力的なのは優勝目録の食事券だろうが、それだけで雲雀さんと対峙する訳がない。 相変わらずこいつの目的は不明だ。 ああ、鵜の目鷹の目でこちらを覗き込んでいるだけのステージ下のヤツらと入れ替わりたい! なんていう逃避も出来ない状況を打開するべくない頭で考える。 処理能力の低い脳みそが蒸発寸前だ。 フル回転させても答えを導き出せそうにもなくて、また碌でもない予感がするから正直知りたくもない。 こういう癇だけは昔から冴えているから困る。 チラリと横にいる雲雀さんを覗けば、おいでと言わばんばかりにまだ手を広げてこちらを見ていた。 怖くて振り返ることも出来ないが、多分リボーンもオレのリアクションを待っているのだろう。 これって何を言えば正解なんだろう。 さすがにこの体勢はないかと気付いて、オレを左右から挟む壁のような胸板を押し返す。 するとどうにか2人の腕から逃れることに成功した。 床に降りて下を見ると捻った足は黒いストッキングの上からでも分かるほど腫れていて靴を脱がなければならない。 けど足先を締めつていた靴を脱げて楽になってホッと息を吐く。 靴がないせいでいつも通りの身長に戻り、スラリと縦にでかい2人の前に立つと埋もれそうだ。 どうせオレはあんまり育たなかったよ! やさぐれそうになりながらも、どうにか顔を上げると前を向いた。 真っ直ぐ立てば足が痛んで崩れ落ちそうになるから、またリボーンの手が支えてくれる。 その手を雲雀さんの手が払って、今度はその手が回された。 意地でも目録を手放さないオレもオレだが、この2人の応酬は誰かが止めねば永遠に続きそうだ。 誰かって、オレしかないよね…。 「ちょっと待って、下さい…!」 リボーンと雲雀さんの手を掴んだ。よく掴めたというより、なんで2人揃ってオレの腰に腕を回すんだよ。 勢い余ってスカートに突っ込みそうだった2つの手をオレが見える位置まで持ってくる。 よし、これで悪さは出来ない。 「あのさ、リボーンは何が目的なんだよ」 そこがオレには分からない。 オレたちは友だちじゃないない。そう、こいつが自ら言ったんだ。 桜咲く中学の卒業式で、後輩の女の子を泣かせながら。 だからオレは距離を取った。 キリよく高校も別だし、共通の友だちも居ない。家は近所というより目の前だけど、目の前だからこそ相手の挙動が逐一見て取れるから楽勝だった。 夏休みなど、こいつが出掛けたことを確認してから家を出るようにしていたぐらいだ。 お陰でプチ軟禁状態だったが、さほど家を出る用事もなかったから困らなかったのは幸いだった。…幸いだよな? 思わず自分の寂しい夏休みを振り返りそうになり、慌てて諸悪の根源たるリボーンの顔を睨む。 ともかくオレとお前は友だちじゃない。顔見知りに毛が生えた程度の幼馴染だ。 何とか言えとリボーンに目で訴え掛けると、それに応えるように薄い唇が開いていく。 冗談だとか、からかっただけだろといつものように嗤われるんじゃないかと身構えていれば、リボーンは猫耳のついたヘアバンドをオレの頭から取り上げてその上に額を乗せてきた。 「分かんねぇのか?お前と2人っきりの食事がしたかったんだぞ。誰にも邪魔されずに、な」 分からない。分かる訳がない。 オレとの身長の違いを見せつけるように頭上にある顔は今どんな表情を浮かべているんだろう。 ぐっと我慢するように唇を噛む。 言いたいことはある。だけど小さい子どもじゃあるまいし、お前が言ったんじゃないかなんて口に出せない。 だから別のことを口にした。 「別に、そんなことしなくたって近所なんだし普通に会えるだろ」 夏休みに逃げ回っていたことを棚上げし素知らぬ顔で言えば、リボーンは嘘吐けとボヤく。 「オレから逃げてた癖によく言うな。あの日も玄関で待ち伏せしてなきゃ掴まえられなかったよな?」 「…」 否定出来ないが肯定もしたくない。それだけこいつを意識しているという証拠でもあるからだ。 黙り込んだオレから頭を上げたリボーンは、オレの両の頬を掴むとぐいっと引っ張り上げた。 「ここまで言っても分からねぇのか、この鈍チンが。つまりだ、お前の友だちじゃなく彼氏になりたいってこった」 「えぇ?!」 いきなり彼氏と言われても困る。っていうか、オレも男だからこの場合は何になるんだ? 突然のことにパニックを起こしたけていたオレの肩に、リボーンの手とは別の手が置かれた。 「…君たち、何してるの?ここは公衆の面前だよ」 雲雀さんの抑えた声にハッと視線だけ横にやれば、ステージ上もその下もすべての顔がこちらに向いていた。 告白もどきをみんなの前でされたということに今更気付く。 逃げようとしても顔はリボーンに掴まえられているし、雲雀さんの手は肩から離れそうにない。 どうするのか正解なのかと必死で考えるオレに、2人は無情にも声を揃えて言った。 「「で?どっちを選ぶんだ(い)」」 これってオレの意思を尊重してくれてるんじゃないだろ。 しかもどっちを選んでも死亡コース決定ってことなんじゃ…? 2012.09.21 |