リボツナ3 | ナノ



18.




「つかぬ事訊ねるけどね、リボーンくん?」

「何ですか?センセイ。」

「っ…!こ、これって手を出す内に入らないの?!」

必死で声を噛み殺していてもつい零れそうな嬌声に、つり革を掴んでいない鞄を持つ手で口元を隠す。何でこんな目にあっているのだろう。おかしい。
キッと後ろにいるリボーンを睨んでも、そ知らぬ顔でまだ触ってくる。尻の丸みを撫でさすっていた手が間に指を差し入れる。布越しのもどかしい刺激に、朝からすでに半泣き気味だった。

「見られたら…困る、から…やめてって…」

周りに聞こえないようにと切れ切れに呟くと、リボーンが耳元に口を寄せて囁いた。

「困るからダメなだけで、嫌じゃねぇんだな?」

耳元で囁く声にも、内容にも羞恥を覚えて体の底から熱くなってくる。
咄嗟に掴んでいたつり革を放して手でリボーンの身体を押し遣ると、バスがタイミング悪く斜めに傾いた。ふわっとした浮遊感の後、ドンと誰かにぶつかって慌てて飛び退いて謝ると以前の痴漢男の腕に転がりこんでしまっていた。

「…本当に君は可愛いな…」

気持ちの悪い視線で見詰めながらそう呟かれる。ぞわっと鳥肌が立った。
こいつ目も頭もおかしいんじゃないのか!?どこが可愛いんだ、どこが。24にもなって可愛い訳ないだろう!
すぐに痴漢男の腕から飛び退くと、じりじりと距離を置く。すると、後ろから腕が伸びてひょいっとリボーンの前まで引き摺られた。

「相手にすんな。」

「ん…って、だからどうしてココに収まんなきゃならないの!?」

発券機前のリボーンの立つスペースの前、そこに無理矢理連れて来られた。
人と人とがどうにか立っているスペースなのに、オレが倒れた先は痴漢の前だったから空いていたんだろうけど、こいつの前はそうでもない筈だ。なのに何故だ誰も怒ったりすることなく、リボーンの前へと収まっている。

「オレの前が一番安全だからだろ?」

「…安全……」

そう言いながら、またも手が何気なさを装って腰に周ってきた。
安全と言う言葉を、もう一度辞書引いてこい!



どうして今朝はこいつと一緒に通学しているのかと言えば、昨日の返事をすぐ寄越せとオレのうちまで付いてきたからだ。帰れといっても聞かず、結局は泊まっていった。ご両親が不在だらかいいけど…って、全然よくないよ!
朝起きたら目の前にリボーンの顔があって、頭は腕枕をされていた。寝相がよくないオレが一緒のベッドに入ったリボーンの方に転がっていったのだろう。でもな、わざわざ腕枕してくれなくてもいいんだって。

オレのうちにはベッドと小さい2人掛けのソファしかなくて、仕方ないから一緒のベッドに入れてやった。
だって絶対手は出さないって、守れなかったら諦めるまで言ったんだ。そこまで言われちゃダメとも言えなくて、仕方なくベッドを共にした…ってなんだかいかがわしい。違うよ、本当に何にもされてないって!


で、今は通学通勤途中というわけで、バスに揺られている最中なのだけれど…

「ツナ、返事は?」

「…」

「昨日は一緒に寝ても何もしなかっただろ?」

「…だからってこれからもしないとは限らない。」

またも耳元で呟くが、少し距離を置いて小さく言い返す。
確かに昨日は何もされなかった。
でもこいつの手の早さは折り紙付きで信用ならない。さっきまでのさんざんなぞっていた尻を行き来していた手と、今もオレの腰をしっかり掴んでいる手のどこを信用できるというのか。

触られては叩いて、また撫でられては叩き落すことを繰り返しながら学校へと到着した。
その間のオレたちの遣り取りをずっと見ていた視線に気付かずに…







昼食時、弁当屋から取った弁当を手に職員室を後にすると、後ろから声が掛かった。
振り返るとディーノ先生が立っていた。手には生徒からの差し入れと思われるサンドイッチが乗っていて、オレとは逆に職員室に入るところだった。

「よっ!今からリボーンとこか?」

「なっ…!な、なに言って…」

思わず声が裏返る。ヤバい。バレた??
ディーノ先生の顔を顔を引き攣らせながら見ていると、いつもの呑気な返事が返ってきた。

「お前らやっと仲直りしたんだろ?昨日またツナのことはオレが面倒見るから手を出すな!って電話きたぜ。よっぽどツナのこと気に入ったんだな。」

「や、あの…そうですか?」

否定しそうになって慌ててやめた。ただ仲がいいって言ってるだけなのに、そこで否定したら何かあるみたいじゃないか。…あるけど。
なんていうオレの内心の葛藤に、やっぱり気付かないディーノ先生はニパッと笑うと太鼓判を押してくれた。

「そうなんだよ。この前オレんちに訪ねてきたのも…っと、これは口止めされてたっけ。……わりぃ、何でもない!だから、その、リボーンはツナのことすっげぇ気にしてるんだぜ!」

余程がっちり口止めされているらしい。再び問おうとすることも許されないスピードで職員室の向こうへと消えていってしまった。
と、いうか…
改めて他人にそう言われると、照れる。傍で見てそう思うくらいオレのことを気にしてくれていたんだろうか。
しかもまた電話してきたって…あいつ、何ディーノ先生相手に牽制してるの。

急に顔を合わせるのが恥ずかしくなってきた。でもそれは嬉しい気持ちが強くて、いわゆる面映いというヤツだ。
顔を見られないようにと俯き加減で歩いていくと目的地の教科準備室へと着いた。
今日もやっぱりリボーンが扉の前で待ち構えている。
知らず顔が赤らむと、それを見たリボーンが何故か眉を寄せた。

「お前…何潤んだ目ぇしながら歩いてやがる。誰かに襲われたらどうすんだ。」

「バッ…!誰が襲うんだよ!そんな物好きお前しかいないよ!!」

変な妄想すんな!
大体お前以外ならやたらなヤツには負けないんだ。
プリプリと怒りながら扉に手を掛けるが、開かない。鍵は持ち歩いてるけど、どうしたんだろう…と思っていると後ろから声が掛かった。

「今日も他の先生方はここを使わねぇ日だぞ。一人は半日で帰るし、もう一人は愛妻弁当がない日は外に食べに行くからな。」

「よく知ってるね。」

使っているオレさえ気付かなかったのに。
手にしていた弁当を机に置いてお茶でも用意しようとやかんに手を掛けていると、オレの後から入ってきたリボーンが後ろ手に扉を閉めるとガチャンと鍵を掛けた。

「……どうして鍵を閉めるのかな?」

冷や汗だか脂汗だか知らないが、背中をつうっ…と流れた。
だって鍵掛けるってことは、外から入ってこれなくするためだ。密室になった室内が急に濃密な雰囲気になった。
引き攣っているだろうオレの顔を見て、ニヤリと黒く笑うと一歩一歩ゆっくりと近付いてくる。茶筒を横に置いて簡易コンロから慌てて横に逃げるがコンパスもリーチも違うリボーン相手では逃げられなかった。

「逃げんな。酷くしたくなるじゃねぇか…」

「ひひひ酷くって、おまえ手を出さないって言っただろ!?」

右腕を捕られて、それでも逃げようとしていると、パッと手を離されて身体が傾いだ。そこを見逃さず後ろから押されて床に手を付く。寝技に持ち込まれたら、体格と力の差があるオレとリボーンとでは話にならない。
またもいいように押し倒されていた。

「嘘吐き…っ!」

「嘘なんか吐いてねえだろ。手ぇ出さなきゃ付き合ってもいいって言ったのはツナだ。まだ、付き合ってねぇもんな。だからまだ、いい筈だ。」

「それって詭弁…ひゃあ?!」

それでも必死に逃れようと足掻いていると、ジャケットのボタンはいつの間にかすべて外され、シャツをたくし上げられて胸を舐められた。
ただでさえ落ちかけてるのに、それはキツイ。
涙目でキッと睨むが、胸の先に吸い付く顔は知らん顔だ。

「おら、とっととオレの物になれ。じゃねぇとこのままだぞ?」

「っ…!こんな格好で言ったら最後までするだろ!?」

何をいっても剥がれない顔に業を煮やして髪の毛を引っ張る。すると、すごくイイ顔で笑った。
どうしてそこでその笑顔?!

「安心しろ。最後まではシねぇぞ。ここと…こっちは触らねぇでいてやる。」

ここと言うと手がオレの中心をなぞり、こっちといって後ろに指が這った。
って、いうか。

「全然安心するとこ一個もな…ぅう…」

ハムッと口を塞がれて、文句も出せないように舌を絡め取られた。
そこから先は嬲られて、食まれて、吸い付かれて…と悪戯の限りをし尽くされても、下肢には一切触ってもらえずに、いいように喘がされた。

「オレと付き合うならシてやるぞ?」

「いい…!バカバカバカ!!」

触られてもいないのに、立ち上がったそこをどうしたかなんて言いたくない。


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