リボツナ3 | ナノ



17.




眠い目を擦り擦り、生徒の行き交う廊下をトボトボと歩いていく。行く先はいつもの教科準備室だ。
昨晩は合コンと称した飲み会に連れ出され、M女学院だかなんだか知らないが、そこの女性教師たちにいいように弄られた。可愛いとかムラムラするとか普通男に言うか?!結局はいいおもちゃにされただけだったようだ。誰だ平日にセッティングしたのは…と違う方向に憤る。
するとポケットに収まっているケータイがブブブッと振動し、着信があったことを告げた。
またか…なんて思いながら、ポケットから掴みだすと昨日の飲み会でメアドを交換した(させられたとも言う)女性教諭からの他愛の無いメールだった。
さすがケータイ世代というか、先ほどから休み時間の度に送られてくるメールにいささかならず辟易してきていた。

返すのも面倒だが、返さないのもこの手の輩には面倒だ。
学生時代にやたらとオレの後を付いてきては舎弟にして下さいだの犬になりますだの言っていた知り合いもこのタイプで、返信をすぐに返してやらないと大量のメールが送られてきたことがあった。はっきりいって迷惑なのだが、本人にそんなつもりはなく、ただ心配だったのだとケロリと言われたことがる。
そういった経緯もあり、昨晩からメールに付き合っているのだがいい加減ネタも尽きた。生来の面倒臭がりが顔を覗かせつつある。
返信もうんとかそうだね程度になっている。なのにまた返ってきた。

やれやれと首を振ってケータイから顔を上げると、準備室の出入り口にリボーンが仁王立ちしていた。
色々と気まずい。けれどその部屋に用事があるのは確かで視線を下に落としながら扉に手を掛ける。すると、手からケータイを抜き取られた。

「ちょっ…!」

「朝からケータイばっかりしてやがって…誰とメールしてやが…」

人のケータイを無断で読むなんて思ってもいなかったので、フォルダには例の女性教諭からの絵文字やらデコなんたらやらを多用したメールがばっちり残っていた。
それを見たのだろうリボーンの表情が段々険しくなっていく。

「…ちょっとこっちに来い。」

「いやいやいやっ!ここはオレたち教師の部屋であってお前の部屋じゃないって!!」

「うるせぇ。とっとと入らねぇとここでお仕置きだぞ。」

と準備室前の人通りのある廊下で言われた。目はしっかり据わっていてヤるといったらやりそうだ。
慌てて腕を掴むと中に引き摺り込んだ。
折よく他の先生方はいない。
ほっと息を吐いて握っていた腕を解く。すると逆に掴み寄せられた。

「言っとくが、他の教師は昼まで来ないぞ。そういう時間を知っててきたんだからな…」

「そ、そう…」

タラリと冷や汗を掻いて視線を横へやると、それが気に喰わなかったのか顎を掴まれて顔を前に寄せられた。
痛い上に迫力があって怖い。
でも言われる筋合いはない筈なんだと不貞腐れた顔でリボーンを見る。すると…

「どうしたらオレのモノになる…?」

「…どうしたらって…だから身体は好きにすればいいって…」

「そっちじゃねぇ、いや、そっちも勿論欲しい…男なら当然だろ。好きなヤツは自分の物にしたくなるだろ?」

「………す、き?」

その言葉が出た途端、身体がカチンと固まり、次いで心臓も鼓動を止めたような気がした。時が止まってしまったかのように目を見開いて目の前のリボーンを凝視していると、それに気付いたリボーンが不審に思ってか顔を近付けてきた。
ぶわっと顔に血が集まって、止まっていた時も心臓も動き始める。ドクン、ドクンと煩い鼓動と真っ赤に染まった顔とを気付かれたくなくて手で顔を隠して床にしゃがみ込んだ。

「って…まさか、気付かなかった訳じゃねぇよな?」

「気付く訳ないだろ…!とんでもなマセガキだとは思っても、お前モテるし、ただの遊びかと…」

床に向かってぶつぶつ言っていると、同じようにしゃがみ込んできて手を外すと、額に額を押し付けて目を覗き込まれて言われた。

「第一印象は可愛い顔して気が強ぇな、だ。男を助ける気はなかったが、あんまり可愛い顔で真っ赤になって堪えてたから思わず手が出た。そうしたら同じバス停で降りるわ、ディーノに抱きつくは…とにかく気になって調べようとした矢先に担任だと言って現れて…」

可愛い可愛いと連呼されて益々顔が赤くなる。
どうしてくれようかと思っていると、もっと顔が近付いてきた。慌てて手で顔を押え、距離を取る。
そんなことなどお構いなしにリボーンが目の前で笑った。

「口説かれてる時には大人しくしとくもんだぞ?」

手の平の中で呟くと、ちゅうっと左手の真ん中に吸い付いてきた。手を外そうにも左手だけは捉えられていて逃げられない。するとそのまま唇が手の平から指まで辿ると指の先をペロリと舐めた。
痺れるような感覚に酔ってしまいそうで、手を無理矢理自分の方に引き寄せる。それを追って唇が唇へと重なった。ただ合わせるだけの口付けはくすぐったくて、ひどく甘い。
ぎゅうと押し込めていた気持ちが解けていくようで、それはまだダメだと必死に言い聞かせて顔を横に振った。

「こら、逃げんな。お前のことが好きだっつってる男のことをきちんと感じろ。」

「ひっ…」

どこが高校生だって?!と言いたくなるほどの色気のある声が耳元で囁く。身体の奥からゾクゾクッと這い上がる欲望の種火に蓋をしたくて、耳を手で押えて横目でリボーンを見る。
視線の端に映った顔がドアップになっていた。手で止める間もなくまたも唇に吸い付かれ、両手で顔を固定されて逃げられない。今度は合わせるだけじゃないそれについていくのがやっとだ。舌を舌を絡ませあって、ただ目の前の存在だけ感じていると、またも無粋なケータイの着信音が手の平で響く。
どうしようかと意識がそちらに向くと、口付けたままでケータイを取られ電源を落とされて床の上に投げ捨てられた。

ガン…という音もどこか遠くて、それに重なるように響く始業のチャイムはどこか御伽噺のなかのベルのようだ。手を恐る恐る背中にまわすと、手を後頭部と背中とに巻きつけてピタリと身体を押し付けられた。
膝立ちの姿勢で唇を重ねていると、腰に立ち上がってきている中心を押し付けられた。その熱さに身体が竦む。口を離して逃げようとするが、背中に周っていた手がするりとツナの中心を揉みほぐしていった。零れる吐息が熱を帯びる。
布越しだというのに巧みな指使いで高められたそこは、しっかりと立ち上がってきてしまった。ツナの腰に感じるそれもはっきりと形が分かるほどに高ぶっている。やめなきゃ…と思っていても一度知った快楽の味を身体は覚えていて思うように止められない。

キスに夢中になっていると、ベルトを寛げようとリボーンの手が動き出す。はっと正気に返って背中にまわした手で胸を押し遣るが、何故かツナが後ろに転がる羽目になった。どうやら腰が抜けたらしい。
ふにゃんと、尻餅をついてそれでもこれ以上はさせまいとずりずりと壁まで後ずさる。

「何でそこで逃げるんだ?思いが通じ合った恋人同士がすることはひとつだぞ。」

「違うって!」

頭を振ってキッと睨むのに、楽しそうな顔で笑われた。

「何が違う?オレはツナのことが好きだ。ツナはオレにおもちゃ扱いされて泣いた。身体だけの関係は嫌だって。…ツナのことをおもちゃにした覚えはねぇし、欲しいのは身体も心もひっくるめて全部だ。」

口説かれ、言い包められて落ちそうだ。だけどここで落ちる訳にはいかない。
確かにリボーンの言う通り、オレあいつのことを好きだし、リボーンは…言葉を信じるならオレのことを好きでいてくれるようだ。だけどそれだけで拒んでいた訳じゃない。

「…お前がオレのことをすきでいてくれるのは分かった…」

「なら…」

「でも!オレは大人で教師だ。お前はまだ未成年で生徒。…分かる?こういうことしてるのが見付かるとお互いヤバいんだよ。だから、ダメ。」

もう二度と流されまいと距離を取って睨み付けると、やれやれと肩を竦めて苦笑いしていた。

「それで?」

「それでって…」

「こういうことしなけりゃ、オレの物になるのか?」

「いっ?!…ううううっ…」

新たな切り口で畳み掛けられて返答に困る。だって、こいつ…

「絶対しない…?」

「……」

「そこで真剣に考えるなぁ!」

「考えるとこだぞ。普通の男なら恋人と2人っきりの状態で手が出ないなんてありえねぇ。あったらそいつはインポだ。」

「ぐわっ!そういうことは言っちゃダメだろ!!」

なんてふざけたことを言うのだ。保留だ、保留!


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