3.昨日のリボーン君の忠告を聞いて、今日はひとつ前のバスに乗ると何故か彼が手を上げて待っていた。 「おはよう。今日は早いんだね。」 「おはようございます。違いますよ、昨日が遅かっただけです。本当はこの時間にいつも乗っていたんです。」 「そうなんだ。そう言えばリボーン君はどこから乗ってるの?」 「駅からです。」 そんな会話を交わしながら並んで乗車口近くのつり革を掴む。 ガラスに映る姿を見るにつけ、どっちが生徒でどっちが先生だか分からないな…とちょっと落ち込んだ。 あんまり大きい方じゃないけど、リボーン君といると余計に小さく見える気がする。 だからといって近付かないでなんていえないしなぁ。 なんて思いながらもつり革にぶら下がっていると、尻をそっと撫でられた。 恐々後ろを振り返ってもリボーン君しかいないし…って。 「…何してるんだい?」 「先生の反応が楽しくてつい。…だって先生、おふざけならいいんですよね?」 「いや、それは…」 言いながらも手を止めず、尻から内股までするりと指で下っていく。 そんなところなど触られたこともないせいで妙な声が漏れた。 「ひゃ…っ!」 咄嗟に出そうになる手足を必死に止めているのに、尻を撫で上げる手は止まらない。 我慢しているのと、身体が妙な具合に熱くなっていくのとで、顔が赤くなってきた。 止めなきゃと思うのに、どうやって止めればいいんだか分からない。 口を開けば悲鳴みたいな声しか出なそうで、そんな声を出して受け持ちの生徒を警察のご厄介になんてさせたくない。 唇を噛んで、つり革を掴む腕に顔を埋めて声を堪えているとやっと学校前の停留所まで辿り着いた。 リボーン君は手を尻からゆっくり離すと、必死に堪えていたせいで酸欠寸前にまでなっていたオレの肩を掴んでふらつく身体を支えてくれながら降りた。 朝もまだ早いせいか、オレたちしか降りなかったバス停前でバスが過ぎ去っていったのを確認してからリボーン君へと向き直る。 「あれじゃ昨日の痴漢と同じだよ!もう止めなさい!」 精一杯怖い顔をして睨みつけても、余裕でかわされた。 「気持ちよかったでしょう?声を噛み殺す顔の色っぽいことったらなかったですよ。」 「なっ…!」 誰も居ないとはいえ、校門の前での会話だというのになんてことを。 言われている内容の恥ずかしさに顔を赤らめていると、ニヤリと鮮やかに笑われた。 「だって先生がおふざけならいいっていったんですよ。」 「そういう意味じゃない…!」 分かっているのに分からないフリをするリボーン君になんて言って止めさせればいんのだろうか。 深呼吸をひとつすると、動揺する気持ちを落ち着けて言った。 「誰かに見られたら君が困ることになる。もう止めなさいね。」 ひとつ気合を入れて睨むと、振り返らずに職員室へとゆっくり歩いていった。 「ツナー!」 遠くからディーノ先輩…じゃなかった先生の叫び声が聞こえてきた。 生徒もたくさんいるのに、気安く呼ぶからみんながこちらを見ている。 困った先輩だと廊下の端からかけてくるディーノ先生が追いつくまで足を止めてまっていた。 「どうかしましたか?」 声を掛けると余程急い駆けてきたせいでか、息も絶え絶えで訊ねてきた。 「今日、リボーン来てないのか?」 「へ?リボーン君?…朝会いましたけど…?」 朝のSHRにもきちんといた。思わずバスでの一件が脳裏を過ぎって慌てて頭を振るとそれを追いやった。 「オレの英語も、その前の科学も、現国も出てないみたいだぜ?」 「…本当ですか?」 「ああ、あいつ滅多にサボらないんだけど…何かあったか知らないか?」 何かって、まさかアレとか。 …いやいやいや。だってそんな訳ないよ。 でも気になるし、いくら臨時とはいえオレは担任だ。気を付けなければならない。 今日はもう授業はないので本当なら授業の進め方を考えたかったのだが、それよりも先にリボーン君だ。 「オレ探してきます。」 「おう!オレはまだ次も授業があるから、頼むな。」 「いえ、担任はオレですから。」 「何かったら相談しろよ?」 「…はい。」 またも髪をわしゃわしゃと掻き雑ぜられた。もう、ここは大学じゃないんですから! 最初に覗きにいった保健室にはやっぱり居なかった。次いで校舎の周りをぐるっと見て周り、屋上から使われていない準備室へと足を向けたが居なかった。 まさか帰ったんじゃないよな…と思いかけて、まてよひょっとして…と、生徒会の執務室へと向かう。 はたして、彼はいた。 優雅にコーヒーを飲んで。 「…リボーン君、授業は?」 傷つけてしまったのではとドキドキしながら探していただけに、見つかってホッとしたけど、全然気にすることもなかったのではないかというくらいの余裕ある態度にムッとした。 「自主休講です。」 ニコリと微笑まれたが、その笑顔には裏があることを知ってしまった。 頭のいい子は往々にして独自の世界観を持っている。 きっとリボーン君と仲が悪くて副担任が臨時担任にならなかったのだろう。 任されて2日目でもうこれじゃあ変わりなかったかな…と責任感がずくりと疼いた。 それでもできることはやりたいと、ソファで優雅にコーヒーを飲んでいる彼の前に座る。 「単刀直入に聞くよ。君は滅多にサボらないみたいだけど、今日はどうしたんだい?」 カチャリとコーヒーカップをテーブルに置くと、嘘臭い笑顔から一転して心底楽しそうな悪魔の微笑みを浮かべながらオレの座るソファに同じように腰掛ける。 「待っていたんです。あなたが来るのを。」 そんなことを言われるとは思ってもいなかったオレは、びっくりして横にあるリボーン君の顔をマジマジと見た。 てっきり嫌いだからあんなことをしたのだと、授業をサボタージュしたのだと思っていたのに。 目を見開いて顔を見ていると、段々と顔どころか身体まで近付いてきた。避けようと横にずれたがまた追ってこられて、気が付けばソファの上に押し倒されていた。 何だかこの体勢はよろしくないと、逃げ出そうとしているのにリボーン君の下から抜け出せない。 焦って手足をバタつかせていると手首を一纏めにして押さえつけられて、ネクタイを解かれるとあっという間に縛り上げられた。 「ちょっ…!何する気?!」 「勿論、いたずらです。…オレのこと生徒としてしか見てくれないんでしょう?センセイは。」 「…っ、そんなの当然だろ!」 「どこまでそれが持つか…」 そう言ってネクタイで縛られた腕を横に捻られ、痛さに呻いたところで口を塞がれた。 うまく体重を掛けてオレの自由を奪うそのやり口といい、腕を縛り上げた手管といいこいつも体術を習っているのだろう。でなければこんな簡単に身体を好き勝手にされる訳がない。 「余裕だな、センセイ?」 口を開けなかったために諦めたのかと思えば、もう片方の自由な手と口を使って器用にシャツのボタンを外すていく。胸元をすべて外されて、身動きが取れない悔しさと羞恥で下から睨み付けた。 だというのに、彼はちっとも気にした様子もない。 首筋から徐々に下がっていく唇に身体が跳ねる。 鎖骨の窪みからもっと下るとふくらみのない胸の先にある乳首へと辿り着いた。 唇で先をなぞられると身体が強張り、それを感じたリボーンが唇で挟む。 ムニムニと先を挟めば少しづつ形を変えていくのが自分でも分かる。 そこを舌でなぞられてひっ…と情けない声が漏れた。 . |