スク水とバカンスつるりとした素材の布地の少ないこれはスクール水着というヤツで間違いない。 自分はまだ学生であり、また段々と春から初夏へと移り変わるこの季節であるからして水着とは無縁ではない。 ではあるが。 「…先生、これは着れません。」 「バカ言うな。ツナのために用意したんだぞ。サイズはばっちりだ!」 「誰もサイズのことなんか言ってないって!違うだろ!そこじゃないだろ!」 着てみろと手渡されたそれを握り締めながらの突っ込みに、リボーン先生は意味が分からないと首を振った。 「オレは男です!男子なんです!それなのになんで女子のスクール水着を着なきゃならないんですかっ!!」 そう、そこである。 リボーン先生の目の前に押し付けると、分かってねぇなと大仰にため息を吐いて長い指で額を押さえながら水着を押し返された。 「何言ってんだ。そんなのバツに決まってんだろ。忘れたとは言わせねぇぞ。この前のテストの山を教えてやった時に、平均点以上取れなきゃそれ相応のお仕置きだぞ、と。」 言われて思い出した。 昨日返ってきたばかりの数学のテスト。平均点よりほんの5点下回ったそれは、本来なら満点でもおかしくない筈のデキレースだった。 不本意ながらオツキアイというものを、この偉そうで理不尽で冷血漢の担任であるリボーン先生とするようになったのはまだ春浅い、2月の出来事だった。 どの教科もダメだったが、特に数学は壊滅的でテストの度に赤点ばかりの日々を過ごしていた。 いよいよ進級が危ぶまれたその時に、放課後の補習で分かるまで(スパルタながら)教えてくれたのが、このリボーン先生だった。 当時はまだこんな性格だとは知らなかったので、見た目の格好よさだけに騙されてあれよあれよという間に進級試験まで面倒を見て貰い、ついでに気が付けば一線まで越えていた。 学年がひとつ上がった今は「担任と生徒」という他に「恋人同士」という名前まで付けられて。 あまりに思い切りよく流されたせいで、いまだにこれでよかったのかと自問自答を繰り返す日々だ。 だがしかし。 「…ムリです。」 最後の抵抗で精一杯下から睨みつけてみるも、そんなオレの顔を見ていた先生はそれはそれは楽しそうにニヤリと笑った。 「そんなにイイ顔するんじゃねぇ。別のことをしたくなっちまいだろう?」 「ひぃぃい!」 先生の別のことはとっても困る。 次の日に足腰が立たなくなるだけでなく、自分では確認出来ない場所に赤い痕を残されるのだ。 しかも性質の悪いことに、オレには分からないが体育の着替えの際にはばっちり分かる場所に、わざと。 学年でもあまり大きくはない身長と、それから軽すぎる体重のせいで、大人でも大きい方の先生の相手はひどく疲れる。それともああいうことは誰でもあんなに疲れるものなのだろうか。 すべてが初めてでオレにはよく分からないが、多分違うんじゃないのかと思う。 だって彼氏と初体験を済ませたという同級生の女子は普通の顔色で授業を受けていた。 彼氏と結ばれてとても痛かったと小声だか大声だか分からない声で喋っていたが、オレに比べればまだマシだろうと叫びそうになって慌てた記憶は新しい。 そんなオレは先生との初めて以来、どんな手を使ってでもしたことはない。 絶対に嫌だとぶんぶんを頭を振ると、手にしていたスク水を胸に抱えて隣の部屋に逃げ出した。 先生の自宅であるここは、リビングの隣にどでかい衣裳部屋がある。 そこには見たこともないような煌びやかな衣装から、これを誰が着るんだと問いたくなるような小道具系の衣装まで取り揃えられていた。 誰が着るかなんて聞きたくもない。 ガチャリと後ろ手に締めたドアに背中を凭れ掛からせて、それから長い長いため息を吐き出すしか出来なかった。 脱ぎ捨てた制服を足で隅に押し遣ると、床に置いたスクール水着を手に取った。 下着すら身に着けていないこの状態で、なにが悲しくて女物のスクール水着を着なければならないのか。 その水着独特の手触りを確かめながらも足を入れていく。 男子用のスクール水着にはアンダー付きのものもあるが、大抵はアンダーを装着してから水着を身につける。 しかし今はそれすらない。 先生にしか見られないとはいえ、その先生に問題がある場合にはどうしたらいいのだろう。 ぴったりと身体に沿うのに頼りない気分になるのは普段は晒されることがないそれを少ない生地の奥に押し込める心許なさのせいだろう。 さすがに入らないだろうと思っていたのに動かなければどうにか納まった自分の下肢を見て思わず無言になる。 動いたらアウトだ。だが動かなければギリギリはみ出ることもない。 肩までしっかりと水着を身につけたオレは、微妙な下肢以外は緩くもきつくもないスク水を眺めて何とも言えない気分になった。 そもそも、先生はどんな顔をしてこれを買ってきたのだろうか。 PTAのだれ某に見付かって逮捕されてしまえ!と呪詛を吐き出していると、一つしかない扉の向こうから声が掛かった。 「オイ、もう着たか?」 「っ…!」 返事も出来ずに固まっていると、オレの返事を待つことなくクローゼットルームの扉が開く。 手で水着の裾を引き下げて下肢だけは覆っていると、そんなオレの様子など気にせずに近付いてきた。 「丁度いいじゃねぇか。さすがオレだな。」 「さすがじゃないよ!色々おかしいだろ!少なくともアンダーは寄越せよ!」 「フン、これを履きたかったのか?」 とポケットから取り出したそれは腰は紐のようなゴムでできた薄い肌色の前だけ隠すのが精一杯の女子用アンダーだった。 「ぶぶっーー!」 先生が初めてということは、勿論女の子としたことがないということでもある。だからして女物の下着というものには免疫がないというのに、見るからに破廉恥この上ないアンダーを突きつけられて目の前がチカチカした。 女の子って水着の下にこんないかがわしいアンダーを履いているんだと驚いていると、それに意識が奪われている間に先生の手が水着で覆われた尻をもぞりと撫で始めた。 「ぎゃっ!」 「そんなに欲しけりゃくれてやるぞ。その代わりオレの前で履いてみせるんだぞ?」 そう言うと尻を撫でていた手で水着を捲り上げ、Tバックのように露わにさせられた。ぐいと捲くられたせいで水着が後ろに引っ張られ、ただでさえきつかった前からはみ出てしまいそうだ。 股間を手で押さえ、膝に力を入れて必死に堪えているというのに、そんなことお構いなしの先生は両手でオレの尻を撫で上げる。 円を描いたり、肌を確かめるようにゆっくりとなぞる手に声を上げないように唇を噛んだ。 ビクンとしなる背に手を這わせた先生は、そのまま肩にかかる水着の脇から忍び込んだ。 片手で尻を撫でられながら、もう片方で胸の先を指の関節で擦られて押えていた前が膨らんでいくのが自分でも分かる。 イヤイヤと首を振って顔を先生の肩に押し付けても、容赦なく尻の水着を引っ張られて悲鳴を上げた。 「いやぁ…!」 ぎゅうと後ろに引っ張られたせいで押えていたそこからはみ出した熱さに膝が笑いはじめる。 力の均衡が崩れた膝はガクガクと震えていた。 なにをされるのか知っているだけに怖さで浅い息を繰り返しながら、それでも先生に凭れるように身体を預けていると、尻の奥の一度だけ先生自身を受け止めたことのあるそこを指で弄られる。 割るように入り込む指に息を詰めて身体を強張らせていると、それに気付いた先生はそこから指を抜いてもっと前へと進んできた。 「ちょっ、ヤ…ッ!」 押えていたそこを腿の間を割って後ろから揉まれる。大事な柔らかいそこからまだ薄い下生えを縫って硬くなりはじめたそこを手で掴まれた。 先から滲み出た体液のせいでぬるつくそこを軽く擦られてビクンと背がしなる。 はみ出さないようにと押える手が無意味になったのは、後ろからの進入のせいだ。震える手で起立を擦る先生の手を押し退けようとするも、力はまったく入らずにただ縋るように先を弄る手に指を這わせた。 「う、はぁ…!」 下肢に意識が集中していた隙に、胸の先を突いていた指はぷっくりと膨らんだ先をぎゅっと指で摘みあげた。 突然の痛みとじんわりと広がる疼きに反らした胸へと先生の顔が近付いていく。 手近にあった背の低い衣装タンスの上に乞われるまま押し倒されて、不安定な体勢の恐怖に負けて先生の肩に腕を回した。 するとクツクツと先生が笑う。 「上も下もはしたない格好だぞ、ツナ。」 言われて下を覗くと、弄られた胸の先はわずかに水着に尖がりを2つ浮かび上がらせ、下は膨らんだ先から滲んだ先走りのせいで濡れそぼっている。そしてそこから見えてはいけないものが覘くに至ってやっと羞恥が戻ってきた。 「やめろってば!」 慌てて手で隠そうと伸ばすも、手首を握られて頭の上に縫いつけられるとおもむろに先生はスラックスのポケットから携帯電話を取り出した。 折りたたみ式のそれを片手で開くとなにやら電子音が聞こえてくる。 「ちょ、なにする気!?」 「何、可愛いツナの姿を携帯に収めるだけだぞ。」 「冗談じゃない!」 「あぁ、冗談なんかじゃねぇ。これでいつでもツナの可愛い姿が見られるってもんだ。」 とんでもない台詞に、こんな痴態を撮られて堪るかと暴れると、先生の膝をオレの半分くらい出ているそこにぐりっと押し当てられた。 ただでさえ後ろに引っ張られていることと、起ち上がってしまったことで痛いというのに、明らかな意図を持って押し付けられるそれに悲鳴が上がる。 「痛っ!やめて…!」 痛みと怖さで震えながら懇願すると、先生は膝を押し付けていた力を緩めてニヤリを笑った。 「あんまりさせねぇツナが悪いんだぞ。どうしても嫌なら自分で脱ぐか?」 脱いだらどうなるかなんて明白だ。 あくまでオレの意思を尊重しているような口ぶりの先生を半泣きのまま睨みつけようとして失敗した。 「…今はヤだ。先生とすると1週間くらいまともに動けないんだよ。学校が困るだろ。」 「慣れりゃ平気になるぞ。」 「慣れるまでする気かよ!?その前に死ぬって!」 「男のロマンだろ、腹上死なんて。」 「そんなロマンは持ち合わせちゃいないよ!」 あまりの身勝手な言い分に思わず大声で叫ぶと、仕方ないと頭を振って腕を掴まれてタンスの上から引き起こされた。 「なら長期の休みならどうだ?どうせプールに行く訳もないもやしっ子のお前なら夏休みでも平気だろう。……そうだな、オレも盆休みが久しぶりに取れるんだ。一緒に旅行にでも行くか。」 行くかという言葉が行くぞという命令形に聞こえたのは空耳だろうか。 ついでにこれにも慣れておけと手渡された先ほどのいかがわしいアンダーを手に、オレは自分のオツムの出来の悪さを恨めしく思うしかなかった。 おわり |