リボツナ3 | ナノ



はじめの一歩は体育館で 前




3月と言えば卒業シーズン。大好きな友達や、憧れの先輩との別れの季節だ。
勿論、誰にだってあるようにリボーンにだってある。
初めて自分から口説いたのは彼が最初だ。そして最後だと信じている。そんな彼こと綱吉が卒業してしまうのが3月だ。年が明けてからこっちめっきり学校に登校してくる機会の減った綱吉に、メールやら電話やらは掛けているのだが、それでも顔を合わせる回数は段違いに減った。
これからはもっと減るのだろうか。

考えるだけで気が滅入ってくる4月を目前に控えた今日、卒業式が始まろうとしていた。
春曇りの薄い雲に覆われた空は自分の気分と同じく、すっきりしない。
太陽が現れないせいかまだ肌寒い空の下、晴れやかな卒業生とその父兄が式場である体育館へと吸い込まれていく。
その様子を校舎から眺めていたリボーンは、校門のところでそっくりな母と似ていない父とに挟まれて登校してきた綱吉を目敏く見付けた。これが最後の登校になるのだと思うと、なんとも言い難い苦々しさが口に広がる。

「先輩!そこで暇してるんなら手伝ってくださいよ!」

すると体育館横で忙しなく働くスカルが、2階の窓からぼんやりと覗いているリボーンに声を掛けた。

「うるせーぞ。んなことすると思ってんのか。」

悪態は忘れないのに、声に張りがない。余程弱っているらしいリボーンに、内心ざまぁみろ!と思っていたスカルは、それを察知したリボーンの投げた飴を頭で受ける羽目となった。

「痛っ!!何するんですか?!」

「そろそろツナが来る、それでも渡しとけ。」

言うだけ言うと、踵を返して校舎の奥へと消えてしまった。
2つ投げられた飴は綱吉の大好物の苺味のそれだ。こういう気遣いだけはマメだよな…と感心しているとリボーンの言う通り向こうから綱吉親子がやってきた。
瓜二つなほどよく似ている母親と、全然似ていなくてよかったですねと思わず口に付いて出てしまうほど大柄な父親とに挟まれた綱吉は、キョロキョロと辺りを見回していた。言うまでもなく誰かを…リボーンを探しているのだろう。
そう言えば最初から綱吉はリボーンのことばかり気にしていた。スカルと知り合いだと知る前から、耳にタコが出来るくらいに聞いていたその人物がリボーンと知って尚、嫉妬したものだ。だからこそ、余計に知られたくなくて手紙作戦に出たというのに、それが見事に裏目に出て今ではスカルを介さないで会う機会も増えていると聞いた筈だ。
だというのに。

「…誰か探しているんですか?」

「あ、う…うん。リボーン知らない?」

スカルを振り向きもしないで、首を回して探す綱吉にそろそろ諦めを悟った。

「先輩なら、校舎に入ってっちゃいました。まだ式までありますから探してきては?」

「…そうする!」

ありがと!と一言いうと、あっという間に遠くになった綱吉が母親と父親を置いて校舎へと駆けて行った。


残されたのはスカルの伝えられなかった想いだけ、ポツンと置き去りにして。






「リボー!リボー!!」

卒業式があるだけの今日は、それを行う生徒と教師以外はいない筈だ。
リボーンは生徒会役員であるスカルと違うので、本来ならば居ない。だがスカルは居ると言っていた。他の下級生たちと同じく式が終わるまで待って綱吉を見送ってくれるつもりだったのだろうか。

綱吉がリボーンと会ったのは1ヶ月も前の話だ。
やっと行ける大学が決まり、近場の大学なので自宅から通えるんだと話しているとらしくもなく、ぼんやりとこちらを見詰めていた。

「…卒業しちまうんだな。」

「そうだよ!何…寂しいのか?」

なんて軽口を叩いてやったのに、それにも反応しないでぎゅっと眉を寄せて余所を向いてしまった。
それからすぐに教師に呼び出されて、またなと言ったっきり会っていなかった。

どう思っているのだろう。
今、この校舎にいるということは見送りに来てくれたということなのだろうか。

下駄箱から始まったリボーンとの関係は、ある意味まだ始まってすらいない。
放ったからしにしたのではなく、始まりが掴めなかったのだ。
だから今日ならと思っていたのに。
ポケットから携帯電話を出して時間を確認する。そろそろ戻らなければ式に出られなくなる。
探しまわっても出てこないリボーンに、最後の手段だと携帯電話からメッセージを打つ。本当は顔を見て言いたかったのに。
ピッと送信ボタンを押すと、式の最中に鳴ったりしないようにと電源を落として体育館へと足を向けた。






粛々と卒業式は流れ、女の子たちのすすり泣く声をバックに先生方のエールを貰って一人また一人と体育館から退場していく。
桜が咲くにはまだ早い空には、やっと太陽が顔を見せ始めていた。
友人と写真を撮ったり、卒業の記念にとメールの交換をしたりと賑わう校門前から、綱吉はそっと抜け出すとまた体育館へと足を向けた。
片付け終わった体育館はものの見事にガランとしていて、唯一壇上に飾られている花々の豪華さだけがここで卒業式があったことを覚えているようだ。

生徒会や職員などが居ないことを確認してから、体育館の中に足を踏み入れる。
先ほどのメールに打った言葉の通り、リボーンが来るまで待とうと思う。
何時間でもいい。
多分、今日を逃したら始まれない。

胸にあった花飾りを外すと、壇上に上がる階段の3段目に腰掛けてぼんやりと体育館を見渡した。
朝礼の度に眠たさに負けては、隣の山本の肩に凭れ掛かって居眠りをしていたことなんで幾度もあった。
その席から斜め前に座るリボーンを覗いていたことも。

この学校に来たからリボーンと出会えた。ファンの子たちに追いかけ回されたのも今ではいい思い出だ。
楽しかったんだなと感慨に耽っていると、オイと後ろから声が掛かった。
まさか人が居たなんて思ってもいなかった綱吉はポロリと零れた涙を止めるほど驚いて、飛び上がった。

「…自分から呼び出しておいて、一人で驚いてんなよ。」

リボーンだった。


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