リボツナ3 | ナノ



下駄箱からロマンスははじまらない





下駄箱の上履きの上に白い封筒がのっている。

なんとまぁ…ケータイ、パソコンとデジタルなアイテムが目白押しになったこの世の中で、今更こんな手紙を出してくるなんて。
物珍しさに下駄箱からひょい…と取り出すと、後ろを見て固まった。

沢田綱吉

…どう見ても男の名前だ。
他の女生徒と間違えたのかと表を確認するがしっかりと『リボーン様』と書いてある。

「果たし状…には見えない。何の寒いギャグだ。」

中も確認せずに速攻でゴミ箱行きとなった。勿論、誰かに見られるのはプライドが許さないので細かくちぎってから。




リボーンは様々な意味で派手な存在だった。
見た目も去ることながら、女性関係も。
まだ高校生、しかも1年だということは彼には瑣末事。
これで頭が悪いなり、運動神経が悪いなりがあれば可愛げもあっただろうが、そんな弱みはまったくない。
神に愛され過ぎて万人受けはするものの、本人はまだ苦労をしたことがなかった。





いつもの如く、まじめの正反対な態度で授業を受けている。誰も咎めたりはしない。
教師ですら、その頭脳には勝てずまして今の時間は数学。教えることはあれど、教わるべきことはない。
この時間はつまらなかったのだが、つい先日から面白いものを見つけた。

校庭に視線をやると3年が体育をしている。
それが楽しみで、今日もまた校庭に居る一人を見てニヤリと笑う。その顔をたまたま見てしまった横の男子生徒はきっかり5秒固まると速攻で見なかったことにした。
教師も然り。


そんなことなどどうでもいいリボーンは、今日も見事なドジっぷりを披露しているミルクチョコレート色をしたツンツン頭に意識を戻す。
先週は野球で、飛んできたボールを取ろうとしてズッコケてその頭の上にボールが落ちた。
先々週は幅跳びの歩調が合わず、砂場に顔を埋めていた。
見れば見るほど可笑しい。
珍生物発見だと最近ではこの時間が楽しみでしょうがない。

それにしてもあの3年の名前は何と言うのだろう。
あそこまでドジならばきっと有名に違いないと思うのだが、スカル…じゃないパシリは知らないと目を泳がせている。あからさまに怪しい。腐れ縁の筋肉馬鹿はニヤついているので知っているのだろう。聞く気はねぇが。

見れば今日も野球をしている。グラブが手に合っていないのか余計に細く見える手首が、懸命にボールに手を伸ばす。
…勿論捕れない。

だからといって、仲間から罵倒されている気配もない。
いつもここから見えるのはツンツンした頭と、細い身体だけ。顔までは見えないので余計に本人特定に至らない。
今日こそはパシリを締めて吐かせるか、と物騒なことを考えていると、件の3年生が鼻を押えて一人その場から立ち去る。交代しただけではなく、授業から外れるその姿にピンときてすかさず自分も授業から抜ける。
頭が痛いので。これでいい。

鼻歌交じりで頭痛があるのか、とは誰も問わなかった。



保健室の前に着けば、中から楽しげな声が聞こえる。
一人は万年発情期なさえない校医シャマルの声。もう一人は聞いたことのない声。男子高校生にしては高めの、けれど女のように高過ぎない聞き取りやすい声。

「襲われないように俺が見ててやるから、寝とけ。」

「シャマルが居る方が安心できないよ。」

「何だと。俺はカワイ娘ちゃんしか襲わねぇぞ。」

「…オレを見て母さんそっくりで可愛いって言わなかった?」

「可愛いことはいいことだぜ!」

「おかしいから!答えになってないから!」

シャマルのアホさ加減に呆れたが、益々興味を惹かれた。声を掛けて保健室に入る。
するとシャマルがおや…とこちらを見て肩を竦めた。

「お、リボーンか。またサボりにきたのか?」

「まぁな…そいつは」

誰だと、問おうとしたら下からいきなり手を取られた。

「リボーンくん!」

かなり低い位置にある顔が、こちらを見上げる。
…可愛い。可愛いじゃねぇか!

「お前名前は?」

「あ、そっか…知らないよね。オレは3年の沢田綱吉です。はじめまして!」

なんと、あの手紙のヤツだったとは。
手を握り返すと、びくっと肩が揺れて手を離そうとする。それでも離さず握る。

「あ、あの…。」

「手紙。」

「あ、うん。手紙出したのオレだよ。読んでくれた?」

「悪い読んでねぇ。」

破り捨てたとは言えない。

「読んでないが付き合ってやる。」

「え…いいの?」

それを聞いていた校医がリボーンと同じ誤解をして、それを広めて校内公認になったとか。
実は綱吉とリボーンの付き合うの意味が違っていたとかはその後知れたりしたのだが、その日の放課後にはすっかりカップル扱いされて今更どうにもならなくなっていたらしい。

「違うって!なぁ、聞けよ!!オレはお前を主人公にして映画を撮りたいだけなんだってば!」

「…聞いてやってもいいが、オレは高いぞ。」

「何、いくら取る気?」

「ツナは特別だからな、お前に付き合った時間だけオレに付き合うなら、おまえの映画に出てやってもいいぞ。」

「ホント?!」

ラッキー!なんて朗らかに笑っているが、色々と、そう色々と危なくなっていることに綱吉だけは気付いていなかった。

映画と綱吉の運命や如何に?!


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