リボツナ3 | ナノ



全部、夏のせい




暑い。
とにかく暑い。

梅雨らしい梅雨もなく気が付けば梅雨明け宣言されていたなんてこれからが恐ろしい気温が続いている。
だから夕涼みを兼ねて肝試しをやろうなんて話になったとしても、それは理解できるというものだ。

勉強ダメ、運動ダメ、色々な運に恵まれない自分にやってきた最大のチャンスというヤツを前に、ゴクンと唾を飲み込んで先を急いだ。

土曜の今日は勿論中学校は休日で、真夏の暑さにさすがの運動部員たちももう校舎に残ってなどいない。
そこを利用して、今は使われていない旧校舎の3階の音楽室に忍び込んで御札を男女2人のペアになって取ってくるというレクレーションをクラスで敢行中だ。
見つかったら教師に雷を落とされるだけでなく、怖い風紀委員長に噛み殺されかねないので誰もが事を粛々と進めてきた。
ある意味、それが一番涼しくなるのかもしれない。
中学生なんてそういうバカがしたくなる年頃といえるだろう。

そんな訳で、途中でお化けに扮したクラスメイトがあれやこれやで脅かしてくるのはお約束だ。

「ツナ君、大丈夫?」

「へ、平気だよ!」

先ほどは京子ちゃんの親友だというお化け役の黒川に、嫌というほど冷えピ○を押し付けられて悲鳴を上げたばかりだけど。
それでもどうにかそこを抜けて、あと少しで御札のある音楽室に辿り着けるというところだった。

クラスのほとんどの男子の羨望と嫉妬に包まれながら、どうにか京子ちゃんの隣を歩いている。
ただ姿を見るだけで幸せだったというのに、今は息遣いさえ聞こえてきそうな空間で2人きりだなんて現実味がない。
シーンと静まり返った廊下は、明かりひとつ灯ってはいなくて余計にこれは夢なんじゃないのかとさえ感じる。
どこにお化け役のクラスメイトが潜んでいるのか知らないが、今のオレにはそれが現実だと知らせてくれる唯一の刺激だった。

「ちょっとびっくりするけど、楽しいね!」

「そ、そうだね」

ドキドキバクバクと壊れそうなほど心臓が跳ねている。
このまま死んでも悪くないなあなんて思っていたら、突然後ろの階段からパーン!とひとつ大きな音が聞こえてきた。

思わず飛び跳ねたオレの腕に手が伸びてきて、ぎゅっと握り締められる。
京子ちゃんが怖がっているのだろうと思うと鼻の下が伸びて、だけど慌てて首を振ってから声を掛けた。

「大丈夫だよ!もう少しだから頑張ろう!」

コクンと頷いた気配がして、それにホッとするとまたそろそろと歩き出した。
隣の気配を横目で伺おうとして、廊下の先からギィと誰かが動いた音がする。
自分と京子ちゃん以外の存在を感じて、こんな時間はあと少しで終わるのだと知った。
そういえば明日は並盛の花火大会だとふと思い出したら、どうしても誘ってみたくなった。
ダメツナがと笑わば笑え。

「あ、あのさ…明日の花火大会、ひっ暇なら一緒に行かない?」

最後のいが裏返った自覚はあったが、それでも言えた自分に胸を撫で下ろす。
すると、もう少し手前の音楽室のドアがガラリと開いて京子ちゃんの声が聞こえてきた。

「取ったよ!ツナ君、ほら!」

「へ?え??」

御札のある場所から漏れる光の向こうから手を振る京子ちゃんに呆然としていると、隣でクツクツという笑い声が聞こえてきた。

「残念だったな、京子。ペアの沢田が捕まっちまったからアウトだぞ」

「って、ひぇぇええ!!」

なんと、京子ちゃんだと思っていたのはクラスメイトのリボーンで、しかもオレの腕を握り締めながらあろうことか腰にまで手を回してきた。
自分より背の高い相手を、どうして自分と同じ身長の京子ちゃんと勘違いしたのかといえが、リボーンがわざわざオレの目線に顔を下げていたからに他ならない。

驚きと、それから聞かれてしまった羞恥で顔を赤くしていると、やっと顔を元の位置に戻したリボーンが上から覗き込んで呟く。

「首輪つけて連れ回すがそれでいいか?」

「…はい?」

「そうか、いいのか。なら決定だぞ」

「イヤイヤイヤイヤイヤ!!」

口の悪いリボーンだから、勿論ただのからかいだろうと思っていたオレは、翌日に自分の予想が外されたことに涙する羽目になった。

やっぱり、夏は嫌いだ!


おわり



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