リボツナ3 | ナノ






赤ん坊姿のリボーンの世話はすべてビアンキがしていたせいで、オムツを手にしたことなどないに等しかったオレはどうすれば開くことが出来るのかすら分からなかった。
ピンセットで纏めているようにも見えるそこを両手で摘み上げたて考える。つまりはここが肝心な部分なのだろう。
興味が先走っている状態のまま手を伸ばせば、いとも容易くピンセットは外れてハラリとオムツが解け中からリボーンの肌がわずかに現れる。
生半な女性よりも白い肌はけれど透けるようなそれとは違ってどこか危うい色気があって、その肌色を視界に入れて思わずドキリとした自分に驚いて気付いた。
どうにも雰囲気が妙な方向に向かっているのではないのかと。
内心の冷や汗を表に出さないように気をつけながらチラリとリボーンの顔を盗み見れば、オレにそんなところを晒されているとは思えないような表情を浮かべていた。
お手並み拝見とでもいうように、無言でオレの手付きを眺めているリボーンを前に思わず手が布地から滑りそうになって慌ててオムツの裾を握り締める。

「どうした?離したらオレがお前の下着を脱がすことになるんだぞ」

「なん?ええぇぇえ!?」

いつの間にそんな話になっていたというのか。
リボーンの言葉に驚いたオレは手放しそうになった布地に気付いて慌てて思い切り引き上げた。
すると中心を擦ったのか息を詰める声が聞こえてくる。低い息遣いが耳朶に響いてカァと頬が熱を持った。

「耳まで赤いな」

「うるさいっ!」

早く覗いてしまおうとムリにオムツを上に引けば、今のような声が出るということか。
いまだ耳に残っているような、腰のあたりがムズムズする感覚に当惑しながらも握ったままの布地に目をやって途方に暮れた。
このままではダメだ。もしオムツが抜けたとしてもまかり間違って大きくなっているリボーンのそれごと下着を見る羽目になる。
シルクの光沢と吸い付くような肌触りを思い出し、つまりは刺激がダイレクトに伝わるのだと知って焦りを覚えた。

「手が止まってんぞ」

「ううっ…」

二進も三進もいかないこんな状況のことを進退が窮まったというのだろう。蛇に睨まれたカエルの如く脂汗を流しながら、寝不足と焦りで余計に回らない頭を働かせてみてもちっともいい案は浮かばない。
大体、どうしてオレがこんなに慌てなくてはならないのか。普通なら股間を大きくされることを恥ずかしいと思う筈だ。なのにリボーンときたら平気な顔で隠そうともしない。
羞恥と言う言葉を母親の胎内に忘れてきたのだろう相手に、オレが気を使う必要はあるのだろうか。

「もう、いいや…」

オレが恥ずかしがれば、リボーンが喜ぶだけだとやっと気付いた。気付いたからといって対策が立てられる訳でもないが、開き直ることは出来そうだ。
長いため息を吐き出してから、しっかりとオムツの裾を掴んだままリボーンへと顔を上げた。

「…あのさ、このままだと外れないからスラックス下げてもいい?」

ヤケクソついでにそう言えば、驚いたように眇めていた目を少し見開いてそれから無言で腰を上げてくれた。
片手でオムツを掴みながら、もう片手でスラックスを引き下げるとずるりとオムツの後ろまで下がった。黒かと思っていたのに、意外やビビッドな黄色でひょっとしておしゃぶりに合わせたのかと訊ねそうになって口を閉じた。何か訊ねたら負けのような気がしたのだ。
チラリと横から見えた下着が紐ではないことにかなりホッとしながらも、どうにか膝までスラックスを下げてまた件のオムツへと向き直る。
こちらを見詰めるリボーンの視線があからさまなほどニヤついていることに気付いてどうしても手がいうことを利かない。
焦れば焦るほど強く引っ張りそうになってその度にリボーンが声を漏らすものだから慌てて手を緩めては様子を窺って、また少しずつ引き上げることを繰り返していた。けれどそれではらちが明かない。
わざとオムツを間に挟んで脱がし難いようにしているリボーンを睨むと悪びれることなく、肩をそびやかせている。
もういい。
窮鼠猫を噛むのことわざ通り、追い詰められたオレはぐいっと上に勢いよく引き上げた。もう少しで外せるというところでそれを目の当たりにしたオレは投げ付けるように布を股間に戻すと飛び退いた。

「お前に羞恥って言葉はないのかよっ?!」

形的にはとても普通だった。問題はそこじゃない。
そう問題は肝心な部分を隠しきれていないということにあった。だからといって布が足りていない訳でもないのだ。
思い出すことも恥ずかしくて顔に手を当てたまま蹲っていると、腕を取られてソファの上に引き摺り上げられた。
スラックスは脱げた状態でオムツも自分で引き抜いたのかそれがそのまま晒されている。

「もういいだろ?オレは充分だよ。しまえよ…しまって下さい!」

存分に見ろというように間近に押し付けられたそこを見返すことが出来なくて、最後には泣き声交じりに声を上げるとクツクツと笑い出した。酷すぎる。

「安心しろ、ツナ。こんなもんじねぇぞ。もっと大きくなるからな」

「いらないよっ…どこに安心すればいいんだ!」

よく見ろとでもいうように手を引かれて慌てて顔を上げる。黄色い布地で尻から腰まで覆われているそれは、しかし何故だか前だけは網目の荒いシースルー素材だった。
いっそそのままの方がまだマシだったと思うほど卑猥な下着から浮かび上がる股間をまざまざ見てしまい、必死で手を振り切るとソファの上から逃げ出した。そんなオレをリボーンの手が追ってくる。
這い蹲って床に手をついたオレの後ろから伸びた手がするりとスラックスのポケットに忍び込むと股関節の柔らかい肌を撫でられてビクンと揺れた。

「ひ…っ、」

ポケットの布地越しにトランクスの裾を横から捲られて撫でていく指が竦みあがっていたふぐりに触れた。柔柔と指先でつつかれたそこをおもむろに片手で握られて身体の力が抜けていく。
気持ちいいとかよりも男にとって大事なそこを握られてしまえば、逃げ出す気力もなくなってクッタリと床に突っ伏す羽目になる。そんなオレを前に丁度いいといわんばかりに手を緩めることなくポケット越しに強弱をつけてそれを揉まれた。

「ふ…ぅ、っ!」

「だから言っただろう?スラックスにポケットなんざ不要だぞ、と」

大きな手が少し動き辛そうにしながらも下生えごと横からそれを揉むと、いつの間にか反応していた起立が下着の前を濡らしながらスラックスを押し上げていた。
それに気付いて顔を赤くするオレに構うことなく、もう片方の手が前に伸びてカチャカチャと音を立てながら寛げ始めた。

「やっ、ちょ…っ!」

止めようと伸ばした手が意味をなさずに脱がされていく。簡単に下げられたスラックスが膝でわだかまって思うように動けずに身体を強張らせていれば、ポケットから抜けた手が下着ごと起立を掴んだ。

「いつまでもガキ臭ぇ下着だな?」

からかうように息を項に吹きかけられながらぎゅうと根元から握ってくる。せっかくのシルクが台無しだと思うことも出来ずに息を吐き出せば、布の上をさらりと滑る指が上下に動き出した。
もどかしい刺激に堪えようと背中を丸めるオレに気にすることなく手は器用に起立を擦り上げる。何度も何度も扱かれて、飲み込みきれなかった息とともに喘ぎを零せばじわりと布地にしみが広がる。
濡れたせいで滑りが悪くなった下着が絡むように起立に纏わり付いて、それごと強引に握り込まれて先がブルブル震えた。
恥ずかしいと思うよりイきたい衝動が強くて頭が回らない。
もっと直接的な刺激が欲しくて、だけどそれはどうしたら手に入るのか分からないオレは身悶えた。

「ん、ぁあ!」

「どうした、ツナ…?」

「い、きたいっ」

切なげな吐息とともに吐き出せば背中越しにクスリと笑われる。そんなわずかな気配さえもどかしさを募らせる材料にしかならなかった。
涙が滲むほど堪えるオレの肩を後ろから掴むと、背中をリボーンに預ける格好で膝の上に乗せられる。
突然起立から手放されたせいで物足りなくなったオレは、されるがままで嫌がることも出来ない。
互いにスラックスは床の上で、ジャケットにシャツだけのみっともない格好で、凭れかかるように頭をリボーンの肩に押し付けて何気なく下に視線を向けるとシャツの裾から先ほどの下着が嫌でも目に入る。シースルーを押し上げる膨らみが増していることに気付きながらも目が離せなくなったオレにリボーンが耳朶に呟いた。

「お前がこれを脱がせるなら、オレもそれを脱がせてやるぞ」

脱がせる恥ずかしさよりその先にある刺激に喉を鳴らすと、リボーンの肩に手をついて膝の上からヨロヨロと降りた。
黄色い下着に手を掛けて下へとずらそうとすると間近に迫っていた顔が距離を詰めて重なる。入り込んできた舌が自分のそれに絡まると少し腰が浮いたところでリボーンの下着をずりさげた。
拙い手つきに合わせるようにゆっくりと絡んでは吸われて口端から唾液がつうと伝い零れる。喉元からシャツの襟を汚すそれが気持ち悪いと思うより、早く熱を持った下肢をどうにかしたくてもたつく指で下着を膝まで下げきるとリボーンの顔が離れていった。

「本当にいいんだな?」

「うん、」

熱に浮かされたまま頷くとまた軽く唇を合わせてから手が伸びてきた。
サラッと絹擦れの乾いた音がして下肢が心許なくなる。幾度も合わせるだけの口付けを繰り返しながらも、リボーンの手が前ではなく後ろへと伸びていくことに眉を寄せていると膝でわだかまっていたトランクスを足から抜かれて驚いた。

「なんだよ…」

リボーンが持ち上げたままのしみ付きのそれを見て視線を泳がせると、そんなオレに肩を竦めてポイとゴミ箱に投げ入れた。

「おま、それ貰い物なんだからな!」

「分かってるから捨てたんだぞ。大体、てめぇは危機感ってもんがなさ過ぎる。他の男から下着を貰って喜ぶヤツがどこにいるんだ」

獄寺くんから貰って何が悪かったのかと首を傾げていれば、そんなオレを放置したままソファの上に背中を押し付けられた。

「そいつがオレの本当の下着だと思うか?」

手にしたままだった黄色のそれを見ながら言われてぼんやりする頭で考えるも、どこがおかしいのか分からない。何だろうかと手元の下着を見詰めていれば気付いて頭を上げた。

「シルクじゃない?ってことは、いつものじゃないってこと!?」

上に伸し掛かるように迫るリボーンの顔に手をやって突っ撥ねると、その手を掴まれて頭の上に押し付けられた。
体重を掛けられていせいで思うように身動きが取れない。よくない予感に身体を捩ってもビクともしなかった。
今までで一番怖いと思うイイ笑顔を見せたリボーンは、履いていた下着を同じように投げ捨てると膝でオレの起立をグリグリと弄る。

「っ!」

「オレの下着が見たけりゃ最後まで付き合うんだぞ。下着もプレイの一環だからな」

「ひっ!」

オレに拒否権はやっぱりないのだった。
その後、オレがトランクスから何に変わったのかを知る者はいない。勿論リボーンが何を履いているのかは黙秘権を行使して沈黙を守り通すことを誓う。

「お揃いだぞ」

「…」

今日も座り心地の悪いオレは、食い込む下着を直そうと手を伸ばしてはまた慌てて引っ込めるという行為を繰り返す。
そしてきちんと履いているかを確認するためにリボーンが夜な夜な現れることをみんなは知らない。


終わり



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