リボツナ3 | ナノ



4.




あとわずかに動くだけで触れそうなほど近づいていた顔を覗き込む。
揺れる大きな瞳は怯えたように見開きながらオレの様子を窺っていた。

「どうして相手に事欠かないと知っている?」

「あ、だって格好いいから…」

他意はないと言いながらも視線を逸らすツナの分かりやすい態度にフンと鼻で笑いながら、強く噛んでいたせいで少し傷になってしまっていた唇に舌を這わせると怯えるように細い身体を震わせた。
唾液を刷り込むように薄皮から血が滲んでいる唇を舐め続けていると、オレの頬から手を離して視線から逃れるように顔を押し遣った。

「ごめん、騙すようなことして。オレごと忘れてくれよ。」

オレの身体の下から這い出したツナはそれだけ言うと、こちらを振り返ることもしないでヨロヨロと立ち上がる。オレに背中を向けたままズボンだけ元に戻すとはみ出たシャツの情けない姿でドアへと歩きだす。

「逃げんじゃねぇ。オレはお前から何も貰ってねぇぞ。」

ここを逃せば手に入らないことを知っている。焦ればすり抜け、手綱を緩めれば零れ落ちるような曖昧なそれを形に出来るチャンスが目の前に転がっていた。
オレの言葉を無視して扉の前まで逃げ出したツナがドアノブに手を掛けながら搾り出すような声で小さく呟いた。

「何でも持ってるお前に何をやればいいんだよ…!」

廊下へと逃げ出したツナを追って駆け出せば、普段の鈍臭さが嘘のような逃げ足で玄関まで逃げていたツナの腕を引っ張る。逃がすまいという思いに強く引っ張りすぎたのか段差に躓いてツナ共々廊下に転がり込んだ。
格好悪い自覚はあってもここを引く気にはなれない。
まだ逃げようとするツナを背中から抱き寄せると、やっと諦めたように身体の力を抜いて大人しくなった。

「オレ、何にもないよ。お前を喜ばせてやれること、なんにも出来ないんだ。」

結局友だちにも戻れなかったと俯くツナの顎に手を這わせると、怯えたように息を止めて身体を硬くする。そんなツナに構わず耳元に口を寄せた。

「だが、オレが欲しいものはツナしか持ってねぇんだぞ。」

「オレ…?」

驚いたように顔を上げたツナの横顔を覗き込みながら抱き締める手に力を込めた。

「どうしてディーノの口車に乗ったんだ?」

「だって、お前がオレに会いたがってるって…違う、そういうように見えたってだけだから!ディーノさんをいじめるなよ?!」

顔に出したつもりもなかったというのに、こいつと同じでディーノはボケの割によく人を見ている。面白くもないが存外嫌な気分でもないと思いながらも、ツナの言葉の続きを待った。

「全部嘘だったて訳じゃないんだって。ディーノさんがくれた薬で2時間だけは本当に記憶が飛んでた。2時間経ったら切れるからまた飲めって渡されてたけど、忘れてるんだから飲める訳ないよな。」

まごうことなくボケた二人だと内心で呆れる。だがそれ以上に気になることがあった。
ツナの顎を引き寄せると必死に視線を逸らそうとする仕草にこいつも自覚があったのだと語らずに伝えた。だが、追求の手を緩める気もない。

「どこから記憶が戻ってたんだ?」

「どこっ、て…」

見る間に赤くなっていく目元に先ほどの痴態のどれからだろうと反芻していると、そんなオレに気付いたのかツナが赤い顔で暴れだした。

「ちが、アレは薬の副作用だ!そういう気分にさせるために使ったりもするんだって!」

「ほお…そいつは薬の効力が切れても効いてんのか?」

唇を寄せ、耳朶に吹きかけるように訊ねながらもう片方の腕を下肢へと伸ばすとズボン越しに前を撫でた。息を詰らせたツナがオレの手を外そうと躍起になって手をかけるも力が入らないのか邪魔にすらならない。ツナの手を貼り付けたままグッと布越しに擦り上げればじんわりとソコが湿り気を帯びてくる。
ビクビクと跳ねる身体から抵抗の色が見えなくなったところで耳朶に噛み付いた。

「やぁ…」

痛みが快楽へとすり替わる瞬間を逃さずに布越しの愛撫を続けていると、諦めたようにオレの腕に頭を凭れ掛けさせてきた。ぐったりと床に顔を埋めながらも泣き声交じりの声を上げる。

「も、分かったよ…言うよ。言えばいいんだろ!」

ヤケクソで叫ぶ声に期待を膨らませてツナの言葉を待った。

「好き、だよ。お前に会えなくなって、やっと自覚して…迷惑なのは分かってたから忘れようと思ってたけどダメで。そんな時にディーノさんからお前に合わせてやるって持ちかけられたからそれに便乗した。気持ち悪いって思われても、やっぱり好きんんンっ!」

これ以上聞いていたら何をしでかすか自分でも分からない。期待以上の言葉を紡ぐ唇を横から重ねて塞ぐと逃げることなくツナは口許を緩ませた。差し入れた舌におずおずと差し出された舌を絡め取った。
片手でツナの顎を引き寄せたまま、もう片方でまた湿りはじめたツナのズボンの前を寛げて下着の奥へと手を忍び込ませる。ぬるぬるといやらしく膨らんだソコを扱けば、絡めていた舌がビクンと跳ねた。

「っ、ん!」

吐き出す息さえ奪いたくて唇をもっと深く重ね、手の中で硬くなっていくそれを確かめながら動かすとまばらな睫毛の先から滲んだ涙が零れ落ちたことに気付きゆっくりと口付けを解いた。

「どうした…?」

「なんでもない、気にするなって。」

無理矢理作ったと分かる笑顔を見せて、目を閉じると唇を寄せてくる。そんなツナの目元を舐め取ってから、無防備に突き出していたツナの尻の間に自分の下肢を押し付けると下着の奥から掴んでいたツナ自身を引きずり出した。

「ひ…っ!」

「誰でもよけりゃお前になんて手を出さねぇぞ。こんな風に、な。」

外気に晒されたツナのソコを少し乱暴に扱いてやると、羞恥と快楽とに震える唇が熱い吐息を吐き出したところでズボンに手をかける。躊躇うことなく下着ごと足から引き抜いた。

.







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -