リボツナ3 | ナノ



6.




結局辞めることはできなくて、翌日から何事もなかったかのようにまた日々は始まったのだけれど。

出社して一番最初にスケジュールの確認をしに秘書課へと足を向ける。
一仕事終える頃に社長が出社してくるので、それに合わせて段取りをつけて社長室で社長を待つこと既に5分。

早く出社することもなければ、遅れることもまずない社長なのに珍しいな…と心配していると突然後ろから抱きすくめられた。

「うわぁ!!…フグぅ!」

口を塞がれてその手を手で剥がそうとして気が付いた。後ろにピッタリと張り付く身体の大きさとオードトワレの香り。
首だけ後ろを振り返るとやはり…

「社長!足音を忍ばせるのは止めて下さい!」

リボーンの指の合間からがなっているのに、ちっとも気にした風もなく顎を固定されて口付けられた。朝だというのに濃厚なキスをするリボーンにいいように嬲られて身体の力が抜けていく。

開いていた口から差し込まれた舌に絡め取られ、知らず息が上がる。熱い舌が逃げても追ってきて気が付けばねっとりと重ね合わさっていた。
最後に下唇を吸われて膝から落ちそうになったところを掬いあげられる。

「…いい朝だな。どうだ、隣にしけこむか?」

キスに蕩けた身体を支える腕がそろりと腰を撫で付けて余計に腰が砕けそうだ。
耳朶を打つ艶っぽい声に身体の底からぞくりと粟立つ。
寄せられた顔を向こうに押し退けて腕から逃れ、勢い余って床に転がった。

「何だ…床がいいのか?」

「いいわけないだろ?!朝っぱらから発情すんな!」

尻餅をついた床から慌てて立ち上がると、くつくつとリボーンが笑っていた。
昨日から随分ご機嫌だ。

「ようやく自覚が出たんだな…」

言われて恥ずかしさで死にたくなる。
リボーンのそういう対象に自分が入っているのだと自覚せずにはいられなくて、その恥ずかしさと居た堪れなさに顔から火が出そうだ。

それでも仕事だと頭を切り替えて社長を書類へ向かわせた。






何気なさを装っていても、どうしても気になって落ち着かない。
社長室で仕事をしていればいやでも目に入るその机を必死で視界に入れないようにと心掛けるも、この部屋にいるだけで思い起こされるあれやこれに、理由をつけては逃げ出すこと朝から5回目だった。

そわそわと落ち着かないオレの心情などお見通しだろうリボーンは、席を立つ度にわざと声を掛けてそちらを振り向かせようとしてくる。
やっぱりサドだ。

今は休憩を取りましょうと半ば強引に席を立って社長室の奥にある簡易キッチンへと逃げ出していた。
コーヒーに煩いイタリアンな社長は、自分専用のエスプレッソメーカーが置いてあった。
苦いものが苦手なオレは好きではないのだが、リボーンに教え込まされて必然的に淹れることが出来るようになっていた。

「もームリかも…」

昨日はあれからもう一眠りさせられて、結局リボーンの運転する車に乗せて貰ってどうにか帰ることができた。そうでなければ歩いて帰ることもできないくらいだった。
それでも酷く重い身体をシャワーで洗い流しても、あらぬ場所の鈍痛とまだ奥に居座られているような異物感とに苛まれてじわりと熱くなる感覚に泣きたくなった。

今朝の寝覚めも最悪で、高校生でもあるまいにべとつく下着の不愉快さに目を覚ましたのだ。
どんな夢を見ていたかなんて言いたくもない。

エスプレッソメーカーに恨みはないが、つい八つ当たりしたくなってポコと叩くと少しすっきりした。
これで不味いエスプレッソでも淹れてやろうか。
コーヒー豆の入っている缶に爪先立ちで手を伸ばしていると、その手の上から手が伸びてきて缶をひょいと手渡してくれた。

「…台いるか?」

「うぐっ…!けっこうです!っていうか、淹れて持ってきますから座ってて下さい。」

振り返らずとも分かっていたが、余計な一言でカッカッきてしまう。
後ろを振り向いて手で邪険に扱うとその手を取られて手首を舐め取られた。

「跡残っちまったな。」

「っ!」

両手を取られ、跡の残る手首に舌を這わせていくリボーンから逃げたいのに足が凍り付いたように動かない。
赤い舌が肌を舐め取る度にゾクゾクと身の裡から熱が湧いてくる。
手首から離れた顔がこちらに迫ってきても、その熱を孕んだ瞳に射抜かれて目が離せない。

近付き過ぎてぼやける顔が上から覆い被さってきてもただ目を瞑って受け止めることしかできなかった。






簡易キッチンの流しに手を付いてやり過ごそうとしても、晒された下肢をいじる指とはだけたシャツから忍び込む手とに翻弄されて堪えようと噛んだ唇から喘ぎが零れていく。
胸の先を指で摘まれて硬く尖ったそれを親指で押さえつけられると、いじられている中心がビクリと震えた。

ジャケットは取り払われ、スラックスは足元に落とされたシャツ一枚だけの状態で流しに縋り付いていた。
誰かに見られたらオレもリボーンもお終いなのに、昂ぶりを押さえきれない。

項に鼻を寄せてチロチロと舌でくすぐられる。伸し掛かる身体の熱さに引き摺られ、腰を突き出した格好で待つと双丘の奥に起立が進入してきた。
引き裂かれる痛みとは別に、満たされるような充足感がある。

一昨日より熱い塊が中を乱暴に掻き回して、引き攣れる痛みと擦られる快楽とが広がっていく。
腰を掴む手の暖かさに冷えた身体を思い知る。

互いの息遣いが響くキッチンで、激しく中を抜き差しされて身体が震えた。
蛇口を掴む指が白くなるほど力を込めても、奥を抉られるよさに白濁が飛び散った。

それでもまだ続く挿抽に頭の中が真っ白になっていく。
崩れ落ちそうになる腰を抱え上げられて、イイところばかりを擦る起立に泣きが入る。

「もっ…ヤぁ!」

「もうちっと、付き合え…」

ぞくりとするような艶のある声に身体の奥まで犯されて、もっと深くなっていく抜き差しにそれでも身体はついていく。
ぐぐっと数度押し込められた熱塊が腹の底へと飛沫を飛ばしたことを確かめて、そのまま意識が途切れていった。

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