リボツナ3 | ナノ



5.




泥のような眠りから覚めてみれば、そこは社長室横の仮眠室だった。
頭はぼんやりとしていて、起き上がろうとすると尻から腰にかけて激痛が走る。それでも今の状況を知りたくて力の入らない足腰に活を入れてどうにかベッドに腰掛けた。

ぐるりと見回してもいつもの場所に時計は置いてない。
掛けられていた上掛けから覗く身体には何も身に着けていなくて、慌てて上掛けを手繰り寄せた。
薄暗い室内の電灯を点けようとリモコンを探すと枕元に置いてあり、ボタンで灯した。

明かりに晒された自分の身体にぎくりとする。
手首には何かで縛られて擦れた跡があり、上掛けから出ている腕の内側や胸元に残る赤い跡に昨晩の行為が夢でなかったことを知った。

「どうしよう…」

正直、お見合いが成功するとは思っていなかった。けれどこんな状況になるとも思ってはいなかったのだ。
オレが傍に居れば諦めないというのならば、他の女性を宛がうという手酷い振り方で怒らせて、会社を辞めてしまおうという腹積もりだったのに。

気だるい身体と奥に走る鈍痛に思い出したくもない昨晩の痴態が過ぎり、恥ずかしさと居た堪れなさとにぎゅっと身体を抱き締めた。
するとそのタイミングで社長室に繋がる扉がガチャリと開く。

「もう起きれんのか?……意外と丈夫だな。」

入ってきたのはリボーンで、手にはスーツを抱えて肩を竦めた。

「っ…!」

暗に何を言いたいのかを察して上掛けを頭から被る。
今は何時か分からないが、まだ日が高い頃だろうか。ブラインドから漏れる日差しを受けた花瓶の陰は短い。
社長室の窓から朝日が覗いていたことまでは覚えている。

互いに幾度も達して白濁でべとつく身体のままで貪られた。最後にはもう何も出ないのに弄られて喘がされて逃げたいのに逃げられずに奥に居座る起立に煽られてイった。
そこからの記憶はない。

ありありと思い浮かぶ自身の痴態にベッドの上の身体を縮めていると、おもむろに足を引っ張られて上掛けを取り払われた。
間近に迫るリボーンの顔を手で押しても、初めての行為と寝ずに付き合わされたことで力の入らない身体では押し負けてまたもベッドに転がされた。

「…大人しくしとけよ…?今日は体調不良で休み扱いになってる秘書がこんな格好でこんなところに居るなんて知られたくないだろう?」

言って上掛けを捲ると下肢に指を伸ばしてくる。
いつの間にか綺麗にされていたそこは残滓のあとさえない。
軟膏らしいものを手にしたリボーンは、それを指にたっぷり乗せると奥の裂けて痛むそこへとゆっくり捻じ込んできた。

「いっ…!」

入れられる異物感よりも、裂けた傷口に薬が染みた。わざとなのかグリグリと指で奥まで擦り付けられてそこでイくことを教え込まされた身体が勝手に指の動きを追っていく。
上掛けを握り絞め蠢く指の行方に荒い息を吐き出していると、やっと指が引き抜かれた。

「あン…んっ!」

出ていく感触にぞくりと粟立って思わず声が漏れる。声の甘さに顔を赤らめていると横に座って弄っていたリボーンがクツクツと笑い出した。

「あんまり煽るなよ…さすがに今からヤラれたくねぇだろ?」

「バッ…信じられない!ケダモノ!絶倫!」

「何だそりゃ、誉めてんのか?」

「んな訳あるか!同意もなくヤリやがって…強姦だぞ?!オレの気持ちはどうでもいいってことかよ!」

まんまと貪られた悔しさに上掛けから顔を出して睨むと、ニヤつく顔と対面した。
どうしてそこでニヤケていられるんだ?

太腿の上を辿る手とベッドに押し付けられた肩とに阻まれて起き上がれない顔にリボーンが近付いてきた。
逃げなきゃ…と頭では分かっているのに逃げ出せないままで上から落ちてくる唇を受け入れた。
薄く開いた唇から差し込まれた舌が口腔を舐め取っていく。

上掛けを握っていた手がリボーンのジャケットを辿る。パリッとした生地の感触は昨晩のものとは違っていて、思わずドキリとした。
それでも舌を吸われ、伸し掛かられる重みが心地いい。わずかに香るオードトワレはよく知るもので、それに包まれることに抵抗はなかった。

…ダメだ。

最後に舌を一舐めされてから離れていく顔を見て、自分の失態を知った。
舌打ちしたい気分で顔を横に向けるも、ニヤニヤと性質の悪い笑みを浮かべるリボーンは何も言わずに上からこちらを眺めている。

「…着る物もあるんで、もう結構です。早く仕事に戻って下さい。」

口調を戻してベッドから追い立てると、立ち上がった先で懐からケータイを取り出してボタンを押し始めた。
どこに掛けているのだろう?
しばらくコール音が漏れ聞こえていたケータイからイタリア語が零れてきてハッとした。

「ちょっ…!!」

慌ててリボーンからケータイを奪おうとしても、上手く動かない身体ではリボーンの流れるような身のこなしに付いていくこともできやしない。

オレを背中に貼り付けたまま、想像通りの人物と想像通りに話をしてオレの退路を絶ってくれた。
最後までオレを無視して進められた会話に、リボーンの背中を打ち付けることで異議を唱える。

「どうした?オレがこうすることぐらいお見通しだったんじゃねぇのか?」

「そうだよ!だから先に父親経由で本社の社長に辞表を出してあったのに…それを会長に話をつけさせるなんて……」

本社社長までは計算済みだった。まさかその上まで使って引きとめられるとは…
いや、やるかもしれないとは脳裏を過ぎったが、本当にやるとは思わなかったというべきか。
呆然と目の前の顔を見ていると今まで見せたことない悪い笑みを浮かべて抱き寄せられた。

「さあどうする?」

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