リボツナ2 | ナノ



3.




チャイムが鳴り、昼休みへと生徒も教師も気持ちがそぞろになっている時間。
授業を終え、気だるげに立ち上がると両サイドからいつものお誘いがかかる。

「マーモンくん…あの、よかったら一緒にお昼しない?」

「お弁当作ってきたの、一緒に食べようよ!」

「…悪いけど、行くとこあるから。」

えええっ!残念!と姦しい。
こちらはいつもの逃げ口上で切り上げる。
煩わしい教室を抜けたが、今度は廊下で捕まった。

もじもじとしている癖に、しっかりと制服を掴んでいる。

「何?」

「あ…あの!お弁当一緒に…!」

ふぅ…とため息を付くと、相手の子がびくり、と揺れる。
何度断っても何度でも声を掛けられるのは、家が両親不在で女手がないせいかと思う。

「悪いけど、ボクは…」

「あれ!マーモン。今日はおにぎりだぞー!」

「「……」」

遠くから担任のお気楽な声が響く。何てグッドタイミング。

「そーいうことだから。」

制服にしがみ付いていた手を外し、気持ちはスキップをしていても、見た目は普段通りにツナヨシに近付く。
すると横には忌々しいことに、一つ下の弟がちゃっかりと重箱を手にツナヨシにしきりと話し掛けている。
スカルの滅多に見られない、年頃らしい少し高揚した顔にムッときて手にしていたブリックパックを投げ付けた。

ベコン!

「っう!何するんですか。痛いです。」

どこが痛いんだと思うような顔で、しっかりとブリックパックを受け止めたスカルはマーモンへと投げ返す。
キャッチすると、ツナヨシの方を向いて謝る。

「遅くなってゴメンね。」

「遅くないよ。…でも本当によかったの?せっかく女の子がお昼に誘ってくれてるのに。」

スーツを着ているから生徒と間違われないだけで、ラフな格好をすると高校生に見えてしまうツナヨシの横をスカルと共に歩く。目的地は社会科準備室だ。

「別に…家が両親不在だからって何で恵んで貰わなきゃならないの。ボクはボクのしたいことをするだけだよ。」

少し下のツナヨシを見て告げる。

「う〜ん。それは違うと思うけど…でも、オレと一緒に食べたいならそれは嬉しいかな。」

ニコっと邪気なく笑う。また伝わらなかったか。
もう何度も一緒がいいと伝えているのに空振りだ。
この天然をリボーン兄さんはどうやって落としたのだろうか?

分析していると後ろから付いてきたスカルが忍び笑いしていた。
…足を思い切り踏んでやったけどね。

そうこうしている内に目的地に到着した。
鍵を開けて入るとツナヨシの机の上だけがぐちゃぐちゃだ。

「…ねぇ、片付けないの?」

「これじゃないとどこに何があるのか分からないの!」

「逆にこの状態で分かる方がおかしいです。」

失礼だな!と怒っているが、逆ギレっぽい。顔が赤くなっていて、自覚はあるようだ。

そこへは近寄らず、誰も使っていない机に重箱を広げる。
重箱なんてと思うかもしれないが、男3人の昼食を詰めるのにこれしか入る器がなかっただけらしい。
4人兄弟ということもあり、家のエンゲル係数は高い。

おにぎりに手を付けようとしたらハイ、と手渡される。

「こっちがマーモンの好きな鮭ね。あ、これはスカルが好きな切り昆布。」

「ありがとう。」

「ありがとうございます。」

律儀に礼を言う2人に笑顔を崩さないで言う。

「マーモンはこっちのほうれん草とにんじんのお浸しを、スカルは豚のから揚げを食べなさい。」

「「…」」

どうしても食べられない訳ではないのだが、好んでは食べない食材だ。それを分かって作っているらしい。
こう言われてしまえば食べない訳にはいかない。

しぶしぶ口に含むが、苦手な青臭さが感じない。ゴマの風味でほどよく消されている。
ムグムグと食べている姿をニコニコを微笑ましげに見詰めるツナヨシ。心境は母親だろうか。

母親はスカルを産んですぐに亡くなってしまったので、記憶にはない。それでもこんな風に暖かいものなのかと想像してみる。

「…いいんだけどね、この卵焼きちょっと甘いよ。」

「ご、ごめんね?リボーンがこれがいいっていつも言うもんだから、つい癖になっちゃって。」

「…いつも?いつもっていつから?」

聞いたことがない。いつから弁当を独り占めしてたんだ。

「ん〜…三者面談の後ぐらいからだったかな?」

「ブブっ!…ぐっ!何、そんな前からなの?!」

スカルもから揚げが喉に詰まったらしい。急いでお茶を飲んでいる。

「そうだよ。…あいつ何でああ強引なの。会った日にアドレス聞いてきて、その日の内に飲みに連れていかれて…あ、いや、うん。そんな感じかな?」

知らなかった。あれは一学期の話だよ。それじゃあ結構付き合って長いんだ。
ふ〜ん。

「兄さん、黒いのがダダ漏れしてます。綱吉が引いてますよ。」

いけない、いけない。殺るんならツナヨシの見てないところでなきゃね。
フードで隠された笑みの黒さにスカルと綱吉が引いていたが、長兄抹殺計画を練っているボクは気付かなかったようだ。

「ムッ、それじゃあ今度はボクのためにダシ巻きにしてくれる?」

「分かったよ。スカルは何かリクエストある?」

「オレはサンドイッチがいいです。」

「ん、分かった。」

さて、抜け駆けした長兄にどんなペナルティを与えようか。


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