リボツナ2 | ナノ



2.




どうにか収集をつけると、長兄の隣の部屋に連れていかれた。
オレたちも粘ったのだが、ガンとして譲らない兄に綱吉が折れた形になった。

「やたらとタラシ込みやがって…そんなんだからおちおち目も離せねぇんだぞ。」

「お前ね、寒いこと言うなよ。オレは…だけでいいよ。」

よく聞こえなかったが、何かいいことを言われたらしい。またもレアな笑みを浮かべた長兄が、綱吉に覆いかぶさる。

「んぎゃ!重い、重いっつーの!」

可愛い見た目に似合わず、騒がしい綱吉だが愛玩動物というものはそんなもんだ。何をしても可愛い。
長兄に肩を抱かれたまま部屋に荷物を置きにいってしまった。

「…ねぇ、どう見る?」

「何がだコラ。」

「コロネロ兄さんには聞いてません。あんた鈍いから。」

「何だと!」

激昂する次兄を他所に、高校生2人は顔を突き合わせる。

「あの雰囲気…嫁というのも強ち間違いじゃなさそうだな。」

「許せないよ!ツナヨシはボクが先に目をつけたんだ。こんなことなら三者面談に連れて行かなければよかった…。」

本気で後悔するマーモンには同情するが、オレは今更ひく気もない。それは次兄も三男も同じようだ。

「どうでもいい、オレはオレのやりたいようにやるぜコラ。」

「ボクも同じだよ。でもツナヨシを泣かせたら…タダじゃおかないけどね。」

「右に同じだ。」

これからが勝負という訳だ。











翌日。
いつものように6時に目を覚ますと、何やらキッチンからコーヒーのいい香りが流れてきた。
そういえば綱吉が居るのだと気が付き、そこに居るのかと探す。

何気なく覗いたキッチンで長兄と綱吉は激しいキスの最中だった。
苦しいのか胸を押し返しているが、そんなことお構いなしに貪られている。
足に力が入らないようで腰を抱えられ、その腰も妙に細くて目が離せない。

スカルの視線に気付いているリボーンは、それをまったく気にせずに口付けを深くしていく。
綱吉は苦しさに顔を横に振った拍子にこちらが目に入ったらしい。
瞬間、真っ赤に染まる顔とおもいきりどつかれてよろけるリボーンを見た。

「やっ…あの…。」

顔から湯気が出るくらいの赤さだ。まぁ分からなくもない。
少しムカッとしたが、それくらいは想像の範疇だった。
この調子だと最後まではいってはいまい。

「おはようございます。コーヒー頂けますか?」

顔色も変えずに言ってやると、あからさまにほっとした。
まだまだ入り込む余地はあると見た。

「おはよ。トーストとハムエッグくらいだけど、食べてく?」

「頂きます。」

ニコっと笑う顔に内心ドキドキだ。
可愛い、何でこんな人があんな悪魔と付き合ってるんだ?脅されてるんじゃないのか?

かなり失礼なことを思っていると、長兄がそれに気付いたのか綱吉に見えないように蹴りを入れてきた。背中に入れられた蹴りに息を吸えなくなった。地味に痛い。

そんな兄弟の攻防にまったく気付かない綱吉が、2枚のプレートをスカルとリボーンに差し出す。
次いでコーヒーも。
綺麗に盛り付けられた朝食を口に入れる。

「美味しいです。」

「あ、よかった〜!コーヒーは、コイツが煩いからそこそこだと思うんだけど、食事は口に合う合わないがあるから心配してたんだ。」

コーヒーにも口を付けるが、香りといい味といい文句ない。

「それにしても、よくその年でブラックが飲めるね。オレまだ飲めないんだよね。」

見た目に似合った味覚のようだ。コーヒーではない液体になっている茶色のソレは瞳の色と同じミルクを溶かした茶色だ。

両手で抱えてフーフーしている口許に思わず目が吸い寄せられた。

あれがさっき長兄と…と思い出して、最中の意外な艶っぽさに今更ドキドキする。
柔らかそうな唇に触れるカップにまで嫉妬しそうだ。

「どうかした?」

不躾に眺めていたためだろう、綱吉が小首を傾げてこちらを見る。
やばい、朝からなに盛ってるんだ。リボーン兄さんじゃあるまいし。

「な、何でもありません。」

「そう?…そう言えばさ、スカル君てマーモンより一つ下だったよね。担任は誰?」

「獄寺先生です。」

「あぁ、獄寺くんか。ならいいかな。」

「何がならいいんだ?」

リボーン兄さんが横槍を入れる。スカルとだけ会話していることに妬いたのだろう。
余程好きなのだ。この人が。

「あぁ、うん。ほら、この家に居候しちゃってるから担任の先生に一言あった方がいいかと思って。でも獄寺くんなら嫌味も言われないし、大ごとにもされないだろうからさ…正直よかったと思って。」

「「…獄寺『くん』?」」

くん付けの呼び方に長兄と四男が同時に突っ込む。
互いに知らなかったのか、と複雑な表情をした。

スカルは昨日が初対面だ。学年は違うし、あの様子だとマーモンが態と合わせなかった可能性が高い。
リボーンは深い仲にはなっているが、学校の対人関係の把握はできていないらしい。

奇妙にハモった2人にぱちぱちと瞬きして驚きの表情を見せる。

「あー…獄寺先生とは中高大と同じ学校でさ。ずっと友達だったんだ。」

それが職場まで同じなんて珍しいよね?
なんて鈍いにも程がある。
そんな偶然があるか。いやない。

気付いていない綱吉に態々知らせる訳がない。
長兄が目配せしてきた。獄寺には綱吉の所在を知らせる必要はない、見張っていろ。
もとよりそのつもりのスカルだったのでこくりと頷き、何事もなかったように綱吉に話しかける。

「オレから話しておきます。でも、あまり知られたくないので、人に言わないで貰えますか?」

「あ…ゴメン。オレ気が付かなくて。」

「違いますよ。沢田先生は人気があるんでファンが煩いんです。」

「うえぇぇ?!そんなの居ないよ。…でもマーモンにもファンがいるんだし、スカル君にもいそうだなぁ…うん、かっこいいもんね!」

ニコニコと普通の事を言ったつもりだろうが、言われたスカルは真っ赤になった。
確かに煩い自称ファンなる者たちはいる。しかし、そんなどうでもいい者たちではなく、綱吉に言われたことが嬉しい。本気でそう思ってくれているのが分かるから。

「オイ、亭主の前で他の男を誉めるヤツがいるか。」

「誰が亭主だ!妄想が酷いな!ったく、お前はみんなに誉めて貰ってるからいいだろ。」

ふいっと横を向いた頬が少し赤い。
長兄とじゃれ合う綱吉は無自覚でリボーンを喜ばせていた。
みんなが誉めるほどかっこいいと思っている、と。

「素直になれよ?」

「っつ!馬鹿!」

益々赤くなっていく綱吉。ニヤつく長兄はとてもご機嫌だ。
ムカついたスカルはひとついい案を思いついた。

「沢田先生、お昼を一緒に食べませんか?」

「うん?いいよ。それならオレは社会科準備室にいるからおいで。」

お昼楽しみだねー。と気付かない綱吉を尻目に、スカルとリボーンの机の下の攻防は続いていたのだった。


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