リボツナ2 | ナノ



4.




風呂から上がって、適当にタオルで拭く。
着る物を持ってきていなかったので、腰にタオルを巻いた状態でそろりと洗面所から出た。
何でそろりとなのかと言えば、なんとなくだ。

貧弱な身体を見られたくないのも理由だし、顔を合わせるのも恥ずかしいというか…照れるというか。
居間を覗けばリボーンは丁度居なかったので、ほっとして通り過ぎようと足を運んだ。
すると、ソファの前のテーブルに3枚の写真が無造作に置いてある。

何だろうと興味を惹かれ、思わず覗き込むと3枚とも見知った顔が映っていた。
先ほどのリボーンの話によれば、3人の容疑者に絞ったとか言っていた。
と、いうことはこの3人が疑わしいってことか。

「うわっ…骸先輩まで。」

その内一枚に映っている骸先輩は、確かにストーカーまがいのことをしている。しかし、彼はオープンなストーカーであるので、あんな陰湿な行為はしないと思うのだ。

会う度に可愛いだの愛してるだの、聞いているこっちがむず痒くなることばかり喋る先輩ではある。
挨拶代わりに肩を抱いたり、尻を撫でられたりはしているのだが、あくまでオレに構って貰いたいという感じの人なのでストーカーなどというまどろっこしいことはしないと思う。


「骸先輩はともかく、こっちの2人はそんな感じしなかったんだけど。」

「何で六道はともかくなんだ?」

「え、だって…骸先輩は直接触ったり言ってきたりしてるけど、こっちの2人はそんなに親しくないし…って、リボーン?」

「何だ?骸ってヤツはそんなにツナにしつこくしてるのか?」

いつの間に後ろに立っていたんだ。

危うい格好をしているので、ちょっとづつ距離をあけてその場から逃げようとした。
オレの逃げ足より、リボーンの手の方が早くて、肩ごと掴まれてソファの上で後ろから抱き込まれる。
肩に顎を乗せて、オレの肩越しに写真を3枚広げると説明しろと言ってきた。

「あのさ…風呂上りだから何か着ないと寒いんだけど。」

「これでも着ておけ。」

ソファの横に置いてあったバスローブを肩に掛けられた。…でかい。
それでも寒いよりはマシなので紐で巻きつけて、人心地ついた。

すると、リボーンが腰に巻いていたタオルでオレの頭をごしごし拭き始める。
相変わらず後ろから抱き込む体勢で。

「この体勢は決定なの?」

「何か不満でもあるか?」

あるだろう。あるのだが、言えない。

「………も、好きにして。」

「お、積極的だな。ツナ。」

「どこが?!」

ええぃ、手をバスローブの中に入れるな!

ベシリと入ってきた手を叩いて離させると、またも顎が肩の上に乗る。
触られるよりマシなのでもう言わない。絶対言わない。


「骸先輩はストーカーだけど、分かりやすいストーカーだよ。会えば必ず手を握られたり頬擦りされたりするけど。ああいう陰湿なことはしないと思う。」

「…会ったら殺す。」

肩眉だけ器用に動かして、静かに怒っている。何にだ。

「……まぁいいか。あの人なら殺されても平気そうだし。…で、こっちの2人はどうしてストーカーの容疑者になってるんだか分からないよ。一人は山本の知り合いで、もう一人は講座が同じだけだよ。」

骸先輩に対しては結構酷いかもしれないが、たまには痛い目にあって貰いたいので放っておこうと決めた。
それでも尻を触られていることだけは秘密だ。それを知られると何だかオレまで危なそうだから。

「この3人がお前狙いだと学内で噂になっていて、且つこの前の電話の時間帯の際に裏が取れなかったヤツだからだ。」

早い仕事にびっくりだ。
目をパチパチさせて横を見れば、肩越しに覗き込んでいる顔が意外にも真剣だったことに気付いた。
ドキン、ドキンと心臓が煩い。

「最近はツナがこっちに逃げ込んでいるから、中々尻尾を掴ませなくてな…もう少しなんだが。」

「それじゃあ、オレがあの家に戻ればいい?」

「バカ言うな。あの後の留守電に入っている声はあぶねぇ感じだったぞ。今あいつに会えば何されるか分からねぇ…処女喪失のピンチだぞ。」

「って、オレ男!」

「そうか、童貞か。」

「うわーん!大きなお世話だ!ほっとけよ!!」

知らずバラしてしまったことに気付いたものの、後の祭りだ。
ぶわっと顔から身体から熱を持って、恥ずかしさにリボーンの腕から抜け出そうとしたら腕を引かれてソファの上に転がされた。

「ちょっと…!今日3度目だけど?!」

オレの顔に向かって落ちてくる顔を押し返す。が、伸し掛かってきているのでうまく押し返せない。
ちょっとかっこいいと思えばすぐこれだ。

押し返していた手を一掴みにして頭の上に押し付けられた。

「お前のはじめてはオレが貰ってやるからな?」

「いやいやいや!?誰も頼んでないよ!!?んんっ。」

文句を言っていれば、口を塞がれた。口で。
それでも口を開けないようにしていたら、今度はもう片方の手がバスローブを割って入ってきた。
冷えてきていた膝を手で包み込み、暖かさにほっとしていれば太腿の内側を撫でだした。
くすぐったさに笑うと口が開く。

開いた口に舌を入れられて、しまったと思うのだけれど遅かった。
おもう様貪られるが、如何せん経験値の差でうまく押し返すこともできない。それに嫌ではない。

上手に息継ぎが出来ず、段々ぼーっとしてくる。
よく考えたら下着も着けてない状態だ。
抵抗しないと踏んだのか手は外され、胸元から開かれたバスローブが肩に少し乗っているだけ。

絶体絶命!
と思っていれば。

プルルル…プルルル…
リボーンのケータイが鳴り出した。小さく舌打ちするとオレの上から退いて、かかっていたジャケットからケータイを取り出して話し出した。イタリア語らしいので内容はさっぱりだ。

すぐに話し終わると寝室へと向かい、着替えて戻ってきた。

「仕事?」

「ああ、明日には戻る。」

口にむちゅっと吸い付かれて、慌てて押し遣ると笑われた。

「戸締りはちゃんとするんだぞ。それとケータイには出るなよ。窓際に半裸でうろうろもするな。分かったか?」

「…年頃の娘を持つ父親じゃないんだから。」

ため息しか出てこない。
しかし、半裸でうろうろはアパートに居たときにはよくしていた。…ひょっとしてそれって悪かったのかな?
これからは気を付けよう。

リボーンも居るんだし、と思ったがよく考えればこの事件が終われば帰っちゃうんだ。
気付いたらダメだ。
何をなんて考えない。

顔を強張らせて俯いていると、頭をぐしゃぐしゃにしてもう一度戸締りをしろと言ってリボーンは出掛けていった。

後に残ったのは、これ以上はダメだという思いと、オレだってやらなきゃという気持ちだった。
それが間違いだったとは思わずに。


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