リボツナ2 | ナノ



7.




証拠隠滅ということで、ユニさんにはちょっと目を瞑ってもらって着替えを済ませると家路へと向かった。途中、何故かリボーンからメールがきて焦ったけど、無視することにした。だって普段なら寝ている時間だ。下手に返したらバレちゃいそうで怖い。

服は持ち帰りたくもないので処分して貰うことになり、いきなり倒れたこととホストクラブに連れて行ってくれたことにお礼をした。

「いいですわ、お気になさらず。でも、そうですわね…もし気になるようでしたら、今度付き合って下さる?」

「?いいですよ。メール下さい。」

どこに付き合うんだろうか。気軽にメアドを交換すると、丁度のタイミングで家に辿り着いた。

「それじゃ、ありがとうございました!」

「お休みなさい。」

「はい、お休みなさい!気を付けて下さいね。」

ガンマさんがバックミラー越しにニヤリと笑っていた。
悪人面で口は悪いけど、アニキって感じの大人の男だ。ああいう兄がよかった。
あんな訳わかんないヤツじゃなくて。

車が見えなくなるまで見送ってから、音を立てないように気を付けて鍵を開ける。母さんも義父さんも就寝中のようで、物音ひとつしない中を息さえ忍んで自室へ辿り着いた。

やっと帰ってこれた。
日付も変わり、今日も学校だというのに今日一日分の気力をすでに使い果たした気分だった。

服のままベッドの上に寝転がると、もう何もしたくなくなる。
ユニさんが悪乗りして化粧までしていたが、それはふき取ってくれたから顔を洗うのもいいや。風呂は入ろうと思ったけど、この時間にシャワーを使うのは両親が目を覚ましそうで申し訳ない。
朝にでも…とぼんやり思いながらも、まだ身体に残るアルコールのせいでそのまま寝入ってしまった。







カーテンも閉めていなかったせいで、翌朝は朝日を顔に浴びて目を覚ました。
眩しさに目を擦ると時計はまだ6時を少し回ったところで、シャワーを浴びるのに丁度いい時間だった。
夜中に寒かったのか、きちんと布団に包まって寝ていた自分に呆れる。
いつもより5割増しはぼさぼさな頭で洗面所に向かう。
よく考えれば下着を忘れたが、この家は母さん以外男だらけだ。母さんは見慣れてるだろうし、義父さんやリボーンに見られてもどうってことはない。
タオルでも捲いて上がればいいさと気楽に考えて、洗面所の扉を開けると浴室から出てきたリボーンと鉢合わせた。リボーンは勿論、素っ裸だ。

「…う、あ…その…」

すぐに閉めて逃げればいいのに、そんなことも分からなくなるほどパニックになって、バカみたいに扉を開けたままの姿勢で口をパクパクさせていた。するとリボーンはいち早く我に返ると、いつものニヤっと笑いを浮かべて言った。

「何だ、そんなにずっと見詰めて…裸が珍しいのか?」

「はっ?!ちちちちちがう!!全然そんなことないっ!」

やっと扉の外に逃げるという選択肢を思い出して、慌てて廊下に飛び出した。
それを追いかけるようにリボーンの声が後ろから掛かる。

「こんな時間に起きてくるなんて珍しいな?昨日もメールが返ってこなかったし…どこかに出掛けてたのか?」

「う、うん。ちょっと獄寺くんのところにね。」

「……そうか。」

ユニさん曰く、絶対に裏を取るタイプだからいい訳は考えておくこと。それとその相手にも先に連絡して口裏を合わせて貰うことといい含められていたので、どうにかどもることなく言えたと思う。獄寺くんへは車で送って貰う際にメールでお願いしておいた。詳しい話は学校でするつもりだ。

そうか、の前の沈黙が怖い。バレたんじゃないよなと、洗面所の横の廊下で冷や汗を掻きつつ返事をしていると、すぐに扉が開いてリボーンが出てきた。
こちらを見る目付きが何だか怪しんでいるような、怒っているような…とにかく鋭い目付きだった。

「何だ、ネンネみたいな顔して夜這いにでも行ったのか?」

「な…っ?!……ふ、ふざけんなぁあ!!」

一瞬何を言われたのか考えて、3秒後くらいでようやく脳に到達してからリボーンへと怒鳴る。するとそれも予測済みだったのか嬉しそうに笑うと、早く入れよと2階へと上がっていった。
残されたオレだけが沸騰していてバカみたいだ。
自分のことは隠して教えてくれないくせに、人のことは知りたがりやがって。
だからといって無闇やたらと人の秘密を知るもんじゃない。どうしてあんなところで働いているのか、知りたいけどオレには聞く権利はないのだろうし。

朝から重いため息をひとつ吐いてシャワーを浴びにバスルームへと足を踏み入れた。







いつもより少し早く家を出る。毎朝獄寺くんや山本がうちの門扉の前で待っていてくれるのだが、今日はまだどちらも来ていなかった。たまには待つさと門を開けて出ると、その横にリボーンが座って待っていた。
まさかそんなところに座っているとは思わず、身体が竦んだ。

オレが出てきたことを確認すると、埃を払い立ち上がる。
大きいとは思っていたけどゆうに20cmくらいは違う身長差でにじり寄られて、疚しいところのあるオレは後ずさった。
するとムッとした表情でオレの腕を掴み、目の前へと引き摺り寄せられる。

「な、何だよ…」

負けじと下から睨み返してやれば、リボーンが眉間の皺を増やしたまま問いかけてきた。

「てめぇ…昨日の晩、うちの店にお嬢と来店しただろ?」

「し、知らな」

「お嬢が薄い茶色の髪と同じ色のでっかい瞳の美少女を連れてきたって噂になってた。コップ半分も飲まないでアルコールに呑まれてガンマに抱き抱えられて店を出ていったってな。」

「ちが…オレはそんなとこ行ってないって!」

「ガンマがお嬢を放ったらかしにしたのもありえねぇが、お嬢が視察の途中で帰るのはもっと珍しい。というよりありえねぇ。身長160センチ強の美少女面って言われててめぇを思い出してな、メールしたのに返事はねぇし怪しいとは思っていたが…」

「ホントにオレは違うって!そんな危ないところ出歩いてないよ。」

堪らず言い返すと、顎を掴まれた。痛いほどの力で固定された顔に、リボーンの顔が近付いくる。
彫刻のようにすっと整った顔は、いつものオレを小馬鹿にしているときの顔じゃなく、かといってそれ以外のつまらなそうな顔でもない、血の通った人間らしい顔だった。

オレを見詰める漆黒に囚われて動けなかった。それでも徐々に近寄ってくる顔の輪郭がぼやけたところまでは見えた。
唇をくすぐる吐息を感じたそのすぐ後にムニュと何かが触れ、何だと思う間もなく口の中をぬめっと何かが蠢いた。逃げようとしても掴まれたままの顎はびくともしない。
口の中を確かめていった何かがリボーンの舌だと分かったのは、思う様弄られた後で息継ぎの仕方もろくに知らないオレが、呼吸困難に陥るほんの数秒前だった。

「な、な、な、な…!」

ちゅーされたことにも、それがもの凄くねっちょりしていたことにも、焦ってパニくってへなへなと腰が抜けた。門の前で座り込むオレに唇が濡れたことにより、色気の増したリボーンが笑い掛ける。

「やっぱりな…グラスの半分も飲めねぇくせに、オレに嘘吐こうなんざ10年早ぇ。まだアルコール臭が消えてないぞ。」

たかだかそんなことのために…。
オレの、オレの、大事な!

「おまえぇぇ!オレの大事に取っておいた初ちゅー返せ!!今年の夏に可愛い彼女とするんだ。とか考えてたのに!!」

「そりゃいいもん貰った…」

「何か言った?!!」

「いいや、何も。」

いくら裏を取りたいからって、男相手にここまでするなんてこいつおかしいよ!
そんでもって、このちゅーはノーカウントだ。母さんと小さい頃にしたのと同じく数には入れないったら、入れないんだ!

ごしごし唇を袖で擦っていると、頭の上からリボーンがくくくっと声まで出して笑い出した。
こいつ絶対苛めっ子だ。



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