リボツナ2 | ナノ



3.




寝てしまったリボーンを寝室に置いて居間で畳み位の大きさの液晶テレビをつけて見ていた。見ていたというのは語弊があるかもしれない。流れていた番組が何だったのか、まったく思い出せないのだから。

気が付けば先ほどの行為を思い出し、恥ずかしさにひとりで顔を赤くしていた。

「ううううっ…どうしよう。」

そう、どうしようだ。
母さん似の童顔ではあるが、れっきとした男なので今まで好意を持ったのは女の子だけだ。
男なんて同じ男だというのに嫌いで、近寄られると気持ち悪くなってくるほどだったのに。
親友の山本と父さんくらいしか近寄れなかったオレが、何故だかリボーンには最初から嫌悪感がなかった。

刑事だから?
違う、それなら交番のお巡りさんはダメだったのに、それの理由が説明できない。
…美形だから?
これは結構ポイントだとは思うのだが、それだけなら大学の先輩の2人もとても美形だ。
そもそもあの2人に近寄られると、嫌悪感より恐怖心の方が勝っているのだけれど。

「一目惚れ…なんてね、はははっ。」

ちょっと笑い声が上滑りした。それだけは勘弁して欲しい。
考えるのはもうやめよう。ドツボにはまりそうだ。

あれは悪ふざけだったんだし、もうされないさ。
きっと。

ふい〜…と額の汗を拭って、時計を見れば6時を過ぎていた。
外はかなり暗くなっていて、そんな時間までひとり芝居をしていたんだとちょっと悲しくなった。

時間も時間だし、夕飯を作ろうとキッチンへ向かう。
鍋は大きいものを買い足した。
冷蔵庫の中身を確認してきのこのシチューとチキンソテー、グリーンサラダとパンでいいやと支度を始めた。



1時間弱で作り終え、ひとりで食べようか起こして2人で食べようか迷う。
いや、だってあんなことがあった後だし。でも、昼も碌に食べずに寝ちゃってたんだよな。
ノックして、起きていたら一緒に食事にしよう。

確率的には半々だと当たりをつけてノックをすれば、ベッドから起きている人の気配がした。
こっそりと半分開けて覗けばやっぱり起きていた。

「あ…起きたんだ。今、夕飯作ったところだからどうかと思って。」

「そうだな…貰うか。」

恐る恐る覗き込み、リボーンの腹具合を聞けば意外に普通に返事が返ってきた。
目が覚めて少し経っているみたい?

恥ずかしさもさることながら、やっぱり食事は誰かと食べる方が美味しい。
最近は友達の家を渡り歩いていたので、余計にひとりで食べることを寂しく思うのかも。
思わず嬉しくて、いい返事になってしまった。

「早く起きてきてね。」

それにお世話になっているんだし、やっぱり少しくらいは返したいじゃないか。
へへへっと笑うと、どきどきする心臓に蓋をしてドアを閉めた。









2人分の食事の支度をしていれば、リボーンが少し寝癖のついた髪で起きてきた。
くすりと笑った視線で気付いたようで、オレしか見る人も居ないのに寝癖を直してから食事になった。
完璧主義?それともオレはお客さんだから、そういう部分を見せたくない?…それだったらちょっと悲しいや。


リボーンと向かい合って食事を取ると、ぴたりとフォークが止まった。何だろう、口に合わなかったのかな。

「うまいな。」

「ほ、本当?…よかった。」

いつの間にか用意してあったワインを片手にさらりと言われた。お世辞じゃないのが嬉しい。

「そう言えば、リボーンて日本人じゃないよね?」

「ああ、言ってなかったか?イタリア人だぞ。」

「そう…。」

察しの悪いオレでも分かる。ここに居るのはイタリアから事件で日本に滞在してるんじゃないのかなくらいは。
やっぱりここに居る人じゃないんだ、と胸がぎゅっと掴まれたような気がした。

「ツナのストーカー行為をしていると思われるヤツを3人ほど見つけたぞ。後で見てみるか?」

「う、うん。見る。」

本当は見るのも嫌だけど、それが解決への糸口になるならやらなきゃ。
ああ…でもストーカーが捕まれば何の繋がりもなくなっちゃうんだ。

「ツナ。」

「へ?」

呼ばれてリボーンへと視線を向ければ、パンを掴んでいた手を上から握られた。
ポトン…とパンが転がり落ちるがそれどころじゃない。

「なななっ…何!?」

声が裏返った。動揺がバレバレだろうに、笑いもせずにじっと見詰められた。
いっそ笑い事にして貰った方が気が楽だ。

「早く食べよう!冷めちゃうし!」

「そうだな。」

だと言うのに何で手を離してくれないの!?
オレから離すことも出来ず、かといって視線も逸らせずに脂汗をかいていれば、握られた手にワイングラスを持たされた。

「はへ?」

「飲んどけ。その方が嫌なもの見ても忘れて寝ちまえるだろ?」

「ああぁ!うん。そうするね。」

自意識過剰過ぎだったようだ。恥ずかしい。
照れも手伝って、あまり強くないアルコールをぐいっと一気に煽った。
ごくんと飲み込む。葡萄の強い香りと味がアルコールと共に喉を通っていく。
胃が焼けるような刺激に頬を赤らめさせていれば、ニヤリとリボーンが笑った。

「真っ赤だぞ。」

「あんまり強くないから。」

あんまりどころか全然強くないんだけどさ。
嫌いじゃないんだ、眠くなるから外で飲まないだけで。

飲み干したグラスにまたワインを注がれる。
今度は香りを確かめてから、小さく一口含むと口の中で味とアルコールが広がった。






まだ大丈夫だと思っていたのに、視界が少しぐらついてきた。
ふわふわしと回る世界に気持ちよくなって、目を瞑っていると近付く気配があってリボーンしかいないのでにへらっと笑いかける。
すると、呆れた顔で肩を竦めて抱きかかえられた。本日2度目だ。

眠気に襲われて目を開けられないでいると、ソファとおぼしき場所に下ろされる。

「寝ちまったのか?」

リボーンの声は聞こえるが、答えることが出来なくてそのまま目を閉じていた。
唇に柔らかいものがゆっくり触れて、その柔らかいものが唇から頬、瞼へと辿って行き耳たぶまで着くと、挟まれた。ちょっと硬いもので挟まれていると、その内ねっとりと何かが耳たぶから裏へと辿りだした。

気持ちいいけど、変な感じで…ぞくぞくと背中から這い上がる感覚に小さく声が漏れると、耳の後ろからくくくくっと笑い声が聞こえてきた。

「んん??」

瞼を開けようとすれば、手の平がそれを覆い視界を遮る。
アルコールで麻痺した意識は、遮られた視界を不審に思わずそのまままた閉じていった。

今度はぷちぷちと音がすると、胸元が少し寒くなった。それもすぐに暖かい手の平が脇腹から胸を撫で付けだせば、身体の中から熱くなる。
肌を撫でていた手が胸のある場所を何度も繰り返して行き来する。次第に膨らんできたそこに指を這わせると、捏ねたり摘んだりをして弄りだした。もう片方はネロリと形を確かめるように周りを舐め上げ、立ち上がったそこを吸い出した。


快楽もアルコールで鈍るのか、それとも快楽に従順になるせいか、気持ちよさに声が漏れる。素面で聞いていれば赤面ものの喘ぎも遮られることはなかった。


舐められていた場所から口を離されれば、濡れた感触が冷たくなってきた。
ぶるりと身体を震わせると、また今度は逆の方を口に含んで転がされる。


それより下からがちゃがちゃと音がして、緩められたと思うと下着ごと膝下まで下げられた。
さすがに頭が冷えて、慌てて起き上がろうとすると胸の突起を舐めていたリボーンと視線が絡んで、恥ずかしさにカッと顔が赤らんだ。


「なっ…やぁ…!」


恥ずかしさに顔を覆う。
すると覆っていた手を外され、外したリボーンの手が下腹部を辿ってツナ自身をゆっくり握り込んだ。
何もされていなかったにもかかわらず、少し立ち上がり始めていたそこを強めに上下に扱かれて恥ずかしさより気持ちよさに喘いだ。


身体を覆う熱さと、リボーンの身体の体温と匂いによって引きずり出され、強く弱くと何度も何度も扱かれた。
アルコールによって弱まった理性と、そこを弄られる気持ちよさにあっけなく果てた。


貧弱な身体いっぱいに荒い息を繰り返していると、上からリボーンが退いていった。
すぐにタオルで身体を拭かれ、そのまま風呂場まで抱え上げられた。


半分くらい溜まっていたお湯の中に漬けられて、汗で額に張り付いた髪を掻き上げて生え際に唇を落とされた。
ぼんやりとしていた感覚が、いっきにクリアになった。


「ちょっ!何?!」

「何ってな、情事のあとのじゃれあいだろう。」

「うぁ…恥ずかし!」


もっと近付いてきた顔を押し退ける。すると意外にもあっさり引いていった。
あっさり過ぎてちょっとあれだ、寂しいとか?いやいやいや!それはない。ないったらない!


確実に流されてると分かってるのに、嫌じゃないとか止められないとか、ぐるぐるしてきた。
でも一つだけ分かったことがある。


リボーンには逆らえない。
困ったことに、最初から。
どうしてなのか、考えたくないけど。



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