リボツナ2 | ナノ



4.




12月にもなると、5時過ぎには辺りが暗くなってしまう。明日は雨なのか薄ぼんやりと明るい月は満月に近いようだが滲んだラインは曖昧だった。

自室のカーテンを閉めてから、居間の雨戸も閉めて着替えを持って脱衣所へ入る。
ポイポイと学生服を脱ぎ捨てていくと、首に掛かった指輪が残った。

あれからすぐにやってきた母さんによって危うきは脱したが、状況になんら変わりはなかった。というより、はっきりした分余計困ったことになった。

首から指輪を外しパジャマの上に乗せる。
扉を開けてかけ湯をしてから、母さんが好きだという乳白色の花の香りのする入浴剤が入った湯船に浸かった。
息を吸い込むと甘い香りが胸いっぱいに広がって、妙に息苦しい。
足を伸ばしてみても、膝を抱えてみても、気持ちは晴れなかった。
今夜の天気と同じだ。

縁に頭を乗せて白い湯を手で掬う。両手で掬って顔の前まで持ってきたが、甘い匂いに手が止まった。
そのまま指の間と手首に零れる白い湯をぼんやり眺める。

青天の霹靂だった。中学の頃からあこがれていた京子ちゃんがまさかオレみたいなのを…と今でも信じられない。勿論嬉しいのだが、何と言うか他人事のような気持ちだ。そしてそちらを考えると必然的にその後のことも思い出してしまう。

いつの間にかお湯がすべて零れた手で熱くなってきた顔を覆ってごしごし擦る。
あのイタリアンめ。顔中ちゅっちゅと!
思い出すだけで恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
男同士だからムリ、とういのはあいつ相手では意味をなさないだろうし。かといって好きかと言われると…困る。嫌じゃないから困る。

うっかり風邪の時のアレを思い出しそうになって、慌てて湯船から出ると頭からシャワーを浴びた。
どうにかなるさと今だけ目を瞑ってしまおうと思って。







翌朝、目が覚めれば登校時間の15分前だった。
昨晩は考えることをやめようとしたのにダメで、そのままうだうだとして気がつけば夜明け近くまで起きていた。そこからやっと寝付いたようで今に至る。
とにかく制服を身に着けて、顔を洗い、歯を磨いて、弁当は忘れずに飛び出したのは7分前。
玄関を一歩出て、すぐに逃げ出したくなった。
どうしてここに2人共いるの。

「おはよう、ツナ君。」

「…早く乗れ、遅刻するぞ。」

もう声も出ない。
目の前には自転車に乗ったリボーンと京子ちゃんが、昨日と同じ雰囲気でそこに居た。
だからどうして。

玄関先で足に根が生えていると、無理矢理腕を掴まれてリボーンの自転車に乗せられてしまう。
乗ったと同時に漕ぎ出した自転車はかなりのスピードだ。
これ何キロ出てるの?!
怖くてリボーンの腰にしがみ付いていると、その後ろを京子ちゃんが付いてきていた。
…京子ちゃん、意外と負けず嫌いなんだ。

そんなこんなで始業のベルの1分前に滑り込みセーフ。
今日に限って校門にいた雲雀さんに2ケツを咎められると思いきや、ボサボサの頭とよれよれのネクタイに鉄拳が下った。トンファーでないだけマシだけど。
ううううっ…何で、リボーンも京子ちゃんもあのスピードで自転車漕いできたのにヨレてないの??美形は風圧まで操れるのか?!
しっかり生徒手帳を没収され、放課後取りに来るように言い渡された。オレを殴ったからかご機嫌の雲雀さんに見送られて3人揃って教室に入るとざわめきが聞こえた。

「?」

「いいから座るぞ。」

「うん。」

リボーンに肩を掴まれて席に着くと、オレの前の席のヤツがやっぱりリボーンだよな!と小声でその隣のヤツと話している。すると、その横のヤツはいいや、笹川も居るし。と反論していた。
…何の話だ。
キョロキョロと見渡せば同じような会話をしている。
ああ、これってひょっとして。

「てめーら、沢田さんを賭けの対象にするんじゃねー!」

「ハハハハッ!バッドの錆になりたいヤツは誰だ?」

獄寺くん、君のお陰で疑惑が確信になっちゃったよ。山本、最近バッドが赤黒いのは気のせいだよね?
親友2人が脅すが、みんな知らん顔している。そういう時だけ仲がいいってどういうことだよ。
見ればリボーンも京子ちゃんも気にした風ではない。
オレだけがオタオタしているのも馬鹿らしくて席に着くと前の席のヤツが声を掛けてきた。

「沢田、お前が気になるのって…」

ガツン!

最後まで言うことなく、オレの隣のリボーンによって黙らされた。
後ろを振り返っているところを、横から蹴り上げられて床に転がされていた。

「……。」

無言でまた席に着くリボーン。
さすがにリボーンが怖いのかそれ以降は誰からも訊ねられることはなかった。





昼休みは寒いけど屋上へ逃げた。
クラスで食べると鵜の目鷹の目でオレとリボーンと京子ちゃんの一挙手一投足に注目が集まって食事どころじゃなかったからだ。
寒さに震えていると、当然のようについてきたリボーンが自分の膝の上を指差す。

「…オレにそこ乗れってこと?」

「寒ぃんだろ。」

寒いけど!
遠慮して横に座ると、獄寺くんはオレの前に、山本はリボーンと反対側の横に座った。
肌寒い風が通るが、日当たりはいい屋上で男4人で食べるってのも寒いものがある。
ちょっとやだなと思ってご飯を口に入れていると、獄寺くんが聞きにくそうに訊ねてきた。

「沢田さん…あの、リボーンさんとは仲直りしたんですか?」

「ぶっ!」

咀嚼し損ねたご飯粒を飛ばすと、すかさず山本がタオルを貸してくれた。
遠慮なく使うと大事そうに懐に入れていた。

「すんません!昨日まではリボーンさんが横に来るだけで赤く…いえ、顔色が変わっていらっしゃったのに今日はいつも通りだったんで。」

「…んー。戻ったというか、分かったというか。」

しろどもどろになっていると、隣のリボーンがニヤついていた。
何だかムカつく。

「何だよ。」

「いや、本当に分かったのかと思ってな。」

「分かってるって!」

あからさまに怪しげな顔しやがって。失礼だな!

その後、昨日も碌に寝られなかったオレは横のリボーンの肩を借りて午後の授業が始まるまで昼寝を決め込んだ。寝入る寸前に聞こえたリボーンの「こいつ、本当に分かってやってると思うか?」と言う声と、山本の「分かってやってるんならすげーけどな。」という声だけは聞こえた。そこからは深く眠ってしまい分からなかったけれど。



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