リボツナ2 | ナノ



Halloween 2




「マジでこれ着なきゃなんないの?」

「いいんだぞ、これがいやなら違う悪戯にしてやっても。」

「…ありがたく着させて貰います。」

ありがた過ぎて、涙が出そうだけど。










一体誰がハロウィンなんてものを日本で流行らせたんだか知らないが、そいつのせいでオレは今、まさに生き恥を晒そうとしている訳だ。でも、これ以上の悪戯をされるよりはマシだ。きっとマシな筈なんだ。

「何ぶつぶつ言ってやがる。さっさと着替えろ。」

「だったら、お前出て行けよ!」

「一人で着れるのか?やたらと後ろにボタンが多いぞ。」

げっ。ホントだ。
唯でさえ嫌々なのに、益々着るのが嫌になった。面倒だ。

それでも腕組みしているリボーンに睨まれ、渋々袖を通す。
オレの男としての矜持がぁ…。

「違和感ないな。サイズもぴったりだぞ。」

「うれしくないよ!」

後ろに回ったリボーンが、腰辺りから上まである小さなボタンを留めていく。
上まで留めると、項に吸い付かれた。

「ぎゃーっ!何しやがる!?」

咄嗟に手で吸い付かれたところを庇うと、振り返って睨む。
すると、振り返った姿を見て満足気な顔で頷いていた。

「魔女に噛み付くドラキュラ伯爵だぞ。」

「知るかっ!」

裾がひらひらしている。普通のワンピースじゃないみたいだ。中に何かフワフワした透けるスカートを履かされ、その上から黒の別珍ワンピースを着せられている。膝は隠れるくらいだが、歩けば見えるくらいの丈だ。
悔しいが、サイズはぴったりだった。つーか、これどうしたんだ。聞くのが怖い。怖いが聞かなければならないと勘が告げていた。


「…なぁ、お前これどこで借りてきた?」

「黒川が貸してくれたんだぞ。」

「どうして?!」

「オレのインタビューを学校新聞に載せるんだと。受ける代わりにこれを借りた。」

「ついでに聞くけど、何でお前までドラキュラのコスプレしてんの?」

「ハロウィンパーティがあるからだろ。」

「どこで?!」

「ここで。」

聞いてねぇ!!そう言えば、夕飯は2人分出ていたが、鍋やら皿やらにはから揚げだったりシチューだったりが大量に作られていた。誰が食べるんだろうと思っていたのだが…。

「母さんに許可は取れてるんだよね?」

「当たり前だ。」

「…オレには一言もなしか!?」

「気にするな、禿げるぞ。」

「禿げねーよ!」

じいちゃんも、父さんも禿げてないったら。
はっ、そうじゃない。

「他に誰か来るの?」

訊ねたタイミングで玄関から極限な声が聞こえた。…ああ、分かった。

「オレは着替える!」

「させるか。」

ぐいっと肩に担がれて、階下へと降りてゆく。背の高いリボーンの肩の上から見た階段ははっきりいって怖かった!涙目でぐしぐしいっていると、後ろから可愛い声が…

「こんばんは!今日は呼んでくれてありがとう!!」

「沢田!今日は妹共々邪魔しにきたぞ!」

肩から下ろされた先で、恐る恐る顔を上げれば。

「きょ、京子ちゃん?!了平さん!」

「うわー!ツナ君可愛い!!似合うね!」

ガーン!

憧れのあの子に、女装が似合うって言われちゃったよ!
ああ、オレって眼中にないってことなんだ。

だからといって、悲嘆にくれることもさせて貰えやしない。
次から次へと友人知人が集まる集まる。

「お!ツナ、可愛いのな。これオヤジから差し入れの寿司な。」

爽やかだけど視線がエロいよ。何で足ばっか見てるの、山本。

「さささ沢田さん、綺麗っす!可愛いっす!!」

獄寺くん、顔赤くしながらどもんないで。ついでに手も握るのやめてね。あ…リボーンに蹴り入れられたら沈んだ。まぁいいや。

「うわっ…あたしより似合うじゃん。」

諸悪の根源め!お前がリボーンにこんなもん貸さなきゃよかったのに!
黒川を恨めしげに眺めれば、リボーンは黒川に向かって親指を立てていた。グッジョブじゃねぇぇ!


これで揃ったかな。

思い思いの食べ物を持ち寄っての仮装パーティで、リボーンはドラキュラ、オレは魔女っ子、京子ちゃんは黒猫かな?了平さんはミイラ男…なんだろうけど、やたらと逞しい身体に巻き付いている包帯はモンスターには見えない。せいぜい怪我したの?くらいだ。黒川は丈の長いドレスをきた悪い魔女っぽい。山本はフランケンシュタインかな。獄寺くんは耳と尻尾が付いていて狼男なんだろうけど、何だが犬に見える。

「ツナ、食ってるか?」

「ん。」

もぐもぐさせて寿司を頬張っていると、山本が隣にきた。
黒川が汚すな!と煩いが、気にしない。大体オレに着せる方がおかしいんだからな。

「ここらへんはオレが握ったんだぜ!」

「へーすごいな。美味しいよ!」

にへらっと笑うと、山本の身体が傾いだ。咄嗟に支えてやると、ぎゅうと抱きつかれたのでびびる。
だが山本はスキンシップが激しいから仕方ない。

「マジ可愛いのな!」

「凹むから、本当にやめてね。」

抱きつかれたまま肩をポンポンと叩いてやれば、後ろからいや〜な寒気が。

「気安く触らせてるんじゃねぇ。」

ベリっと山本から剥がされると、今度は後ろからリボーンに抱きかかえられた。
被せられたカツラが揺れ、とんがり帽が落ちそうになった。慌てて帽子を掴まえて被り直す。

「あんたら違和感なさ過ぎよ。」

って言いながら写真を撮るな。
この時、黒川から殴られてもデータを取っておけばよかったと後々後悔することになるとは思ってもいなかった。







9時を過ぎ、そろそろお開きとなった。
しかし、コスプレしたまま帰って平気なんだろうか?

横を向けばリボーンが何食わぬ顔でいる。

「帰らないの?」

「奈々が帰ってきてねぇだろ。」

「別にいいよ。その内帰ってくるって。」

「…お前、それ脱げんのか?」

「あ…。」

着ることも出来なかったのに、脱げる訳がない。
家に入ってすぐカツラを取ると、リボーンに背中を向けた。

「脱がして。」

「大胆だな。」

「キモイ妄想すんな!早く脱がせてくれって!!」

肩越しに振り返れば、ニヤつく顔に出会う。
あ、またこいつ碌でもないこと思いついたな。

いや〜な予感に背筋を寒くしていれば、肩を抱き込まれた。


「Trick or treat」

「って、またかよ!」

「ないのか?悪戯するぞ?」

されてたまるか。
だがしかし、この服にはポケットがないのだ。必然的にお菓子は持ち歩けなかったのだが。

口の中に随分と小さくなってしまったが、飴があるにはある。
のだけれど。

「ねぇな。」

といいつつ、スカートの裾に手を突っ込みむリボーンの手を押し留めて、身体を向かい合わせると顔を掴んだ。
びっくりしているリボーンにままよと顔を近付ける。
そのままむちゅーっと。

「やっやったからな!悪戯すんなよ!」

世にも珍しいことに、呆然とするリボーンの顔が。
いつものニヤニヤ笑いもなりを潜め、切れ長の目が大きく見開いたままこちらを見詰めている。
あんまりじーっと見られて、なんだか照れる…じゃない、怖いじゃないか。

「お前、他のヤツにもこんなことすんのか?」

「するか!誰にもするわけないだろ?!」

笑い事にして貰えなきゃ困るのに、なんで真剣になるんだ。
赤くなってきた頬を見られたくなくて、ぷぃっと横を向く。すると顎を掴まれて視線を無理矢理合わせられた。
ドキドキと心臓が煩い。

「ツナ…。」

真剣な顔で人の名前を呼ぶな。心臓が破けたらどうしてくれるんだ。
スローモーションのようにリボーンの顔が近付いてきたと思ったら…。

「あら、お邪魔だったかしら?」

「母さん?!」

「奈々。」

うふふ、こめんなさいね。なんてにこやかにしゃべる。
全然気にしてないよね、オレたち男同士なんだけど。

「お邪魔ついでに、パンプキンパイを買ってきたの。お茶にしない?」

母さんのお陰で毒気を抜かれたらしいリボーンは、それから迫ってくることはなかったんだけど。
…あれは何だったんだろう。

いやいや、気にしたら負けだ。





その後、黒川のインタビューした記事に何故か載ったリボーンとオレの女装姿の写真は、オレとバレることはなかったのだけれど、どこの女子だと野郎どもに人気になり、かなり必死に探していたと聞いた時にはどうしてくれようかと思った。


「お前のせいで!」

「責任は取ってやるそ。最後まで。」

「いらねーよ!」



ああ、神様。居るのか居ないのか知りませんがあれがオレだとバレませんように!



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