リボツナ2 | ナノ



29.




ゴーンと遠くから除夜の鐘が聞こえてくる。
広くない自宅の部屋ではオレとリボーンが微妙な距離を保っていた。
いや微妙だと感じているのはオレだけど、リボーンにとっては苛々する距離らしいのだが。

「…何でそんな隅にいるんだ?」

「なんとなく。」

「理由がねぇならこっちに来い。」

「……なんとなく嫌だ。」

大体、母さんも何でリボーンの布団をオレの部屋に敷くの。客間に寝かせればいいんだ、客間に。
それで父さんと一緒に寝てればいいんだよ。

滅多に帰って来ない父さんは、大抵帰って来ても呑んだくれて客間の布団で寝る羽目になっている。
オレと母さんじゃでっかい父さんを運べないからだ。
父さんが連れてくるお客さんはみんな父さんと同じく客間で寝ていって貰っている。
なのにわざわざオレの部屋に布団を運んでまでここで寝かさなくともいいんじゃないのかな。



あれからすごーく苦労して四方八方に経過報告をさせられに行ったり、そうしたらうっかり社長に就任させられそうになったりしながらも、どうにか大晦日を迎えることができた。
イタリアへ帰国していた筈の九代目が居たときにはどうしてくれようかと思ったよ。それもどうにか保留にして貰ってきた。
雲雀さんに報告したら大荒れして大変だったけど、オレとリボーンがキス未満だと知ると何故か大人しくなってくれた。ザンザスさんもスクアーロさんも、獄寺くんはまた涙を流して喜んでいたけど。…複雑だ。

最後に母さんへ報告したいというリボーンを招いて年越しを過ごそうということになったのだが、いつの間にか父さんとリボーンの飲み比べが始まり…今、父さんは酔い潰れている。
居間には一升瓶が5〜6本転がっていて、さすがのリボーンも少し酔ったのか12時を前に眠いと言い出したので布団を敷いたという訳だ。

眠いのも分かる。
お客さんだ、布団の上で寝て貰いたい。客間は父さんのイビキが煩いから一緒に寝られないのも分かる。
だけど。

これはどうなの、母さん!

バーンと2組の布団が並べて敷かれている状況に頭が痛くなってきた。
理解があるにも程があるだろ!?
つーか、息子が男の恋人を連れてきたっていうのに「きゃあ!母さん嬉しいわぁ…こんな格好いい息子が増えて。ツッ君やるわねー!」なんて言ってる時点でおかしいのだが。

中学生の頃から使っていたベッドは経年劣化でつい半年ほどまえに使えなくなってしまった。ベッド買わないとなーなんて思っていたら、こいつのマネージャーになることが決まって、色々あってベッドのことなど忘れていたのだ。
ああ、あの時すぐに買っていれば!

「さ、先に寝なよ。オレもうちょっと起きてるし。」

ちょっと上擦る声に内心の動揺がバレバレだけど、そこには突っ込まないで貰いたい。
とにかくやたらと目に付く布団から逃れたくて出窓に腰掛けて外を見ているふりをしているのだが、意識はもちろん部屋の中だ。
どうして煩悩を払う除夜の鐘を聞きながら、こんな目に合わなきゃならないのか。

またもゴーンという鐘の音が聞こえ、あと5分もしない内に新しい年になろうという時刻だ。
今年は色々あったなぁなんてぼんやりしていたら、真横に気配がして腕を引かれて出窓から降ろされた。

「な、何?」

「ツナがあんまりこねぇからこっちから来てやったぞ。」

「…いや、いいんだけど……この体勢は?」

オレは確かにお前より小さいよ?でも膝の上って…
色々と恥ずかしくて顔は赤らむけどもう慣れた。微妙な距離よりこっちの方が安心するってどうなのか。
すっかり毒された感はあるが、すでに馴染んだ腕の中でくるりとリボーンへと振り返る。

「もうちょっとしたら、近所の神社に初詣に行こうか?」

「ああ、いいな。」

日本酒で呑み比べをしたせいか、ほんのり香る酒精に眉をしかめているとリボーンがこちらを見て笑った。

「酒臭ぇか?」

「うん。オレその匂いキライ。この前もうっかり一口飲んじゃって、そのまま寝ちゃうとこだったし。」

「…いつ、どこでだ?」

いつになく真剣に聞いてくるので何だろうとはおもったけど、聞かれたことには答える。

「お前と会ってないときに、大学の友達に誘われて…居酒屋だよ。気が付いたらスクアーロさんの背中の上だったけど。」

「間の記憶は?」

「う〜ん…山本って友達なんだけど、そいつと一緒にいたような?オレお前と喧嘩してたから元気なかったみたいでさ。忘れさせてやろうかって、どこかに連れてってくれようとしたみたい。」

「ぜってぇ違う。…勘弁してくれ、外で飲むなよ。」

違うって何が?
すごく疲れたような声を上げるリボーンの頭を撫で撫でしてやる。すると身体をぎゅうと抱き締められた。
ちょっと今日は酒臭いけど、ちゃんとリボーンの匂いだ。
オレもリボーンの背中に手を回すと胸に鼻の頭を摺り寄せて抱き合う格好になる。

今度は一際大きな鐘の音が響き渡り、時計の針が12時を差して新年を迎えたことを知らせてくれた。

「あけましておめでとう、リボーン。今年もよろしくな。」

胸から顔を上げて挨拶をすると、リボーンもオレの肩から顔を上げて言う。

「ああ、今年こそ脱プラトニックだ。」

「お前…!もう一回除夜の鐘聞いてこい!!」




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